一度だけの人生に
ひろ



 parody

焼け死ぬる思い。苦しくとも、苦しと一言、半句、叫び得ぬ、古来、未曾有、人の世はじまって以来、前例も無き、底知れぬ地獄の気配を、ごまかしなさんな。

思想? ウソだ。倫理? ウソだ。理想? ウソだ。秩序? ウソだ。誠実? 信頼? 純粋? みなウソだ。

アレモ人ノ子。生キテイル。

論理は、所詮、論理への愛である。生きている人間への愛では無い。

金と女。論理は、はにかみ、そそくさと歩み去る。

歴史、哲学、倫理、教育、宗教、法律、政治、経済、社会、そんな学問なんかより、ひとりの処女の微笑が尊い。

学問とは、虚栄の別名である。人間が人間でなくなろうとする努力である。

僕は友人の心からたのしそうな笑顔を見たいばかりに、一つの思い出、わざと自分を卑しめて、おろかな風に話して、頭かきかきはにかむ。ああ、その時の、友人のうれしそうな顔ったら!
 能力いたらず、人いたらぬ風情、おもちゃのラッパを吹いてお聞かせ申し、ここに日本一の馬鹿がいます、あなたはまだいいほうですよ、健在なれ! と願う愛情は、これはいったい何でしょう。
 友人、したり顔にて、あれがあいつの悪い癖、惜しいものだ、と御述懐。愛されている事を、ご存じ無い。
 不良でない人間があるだろうか。

デカダン? しかし、こうでもしなけりゃ生きておれないんだよ。そんな事を言って、僕を非難する人よりは、死ね! と言ってくれる人のほうがありがたい。さっぱりする。けれども人は、めったに、死ね! とは言わないものだ。ケチくさく、用心深い偽善者どもよ。正義? 所謂階級闘争の本質は、そんなところにありはせぬ。倫理? 冗談じゃない。僕は知っているよ。自分たちの幸福のために、相手を倒す事だ。殺す事だ。死ね! という宣告でなかったら、何だ。ごまかしちゃいけねえ。

人から尊敬されようと思わぬ人たちと遊びたい。
 けれども、そんないい人たちは、僕と遊んでくれやしない。 (そして僕も人から尊敬されようと、思わずにいられない)

僕が早熟を装って見せたら、人々は僕を、早熟だと噂した。僕が、なまけものの振りをして見せたら、人々は僕を、なまけものだと噂した。僕が知識のない振りをしたら、人々は僕を、無知だと噂した。僕が嘘つきの振りをしたら、人々は僕を、嘘つきだと噂した。僕が金持ちの振りをしたら、人々は僕を、金持ちだと噂した。僕が冷淡を装って見せたら、人々は僕を、冷淡なやつだと噂した。けれども、僕が本当に苦しくて、思わず呻いた時、人々は僕を、苦しい振りを装っていると噂した。
 どうも、くいちがう。

プライドとは何だ、プライドとは。
 人間は、いや、男は、(おれはすぐれている)(おれにはいいところがあるんだ)などと思わずに、生きて行く事が出来ぬものか。

人をきらい、人にきらわれる。
 ちえくらべ。

とにかくね、生きているのだからね、インチキをやっているに違いないのさ。

結局、自殺するよりほか仕様がないのじゃないか。
 このように苦しんでも、ただ、自殺で終るだけなのだ、と思ったら、声を放って泣いてしまった。


2002年02月10日(日)
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