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2010年05月31日(月) いまのイングランドなら韓国のほうが強い

日本とイングランドの親善(強化)試合は、1−2でイングランドの勝ち。日本は前半早々にCKから先制点を奪ったものの、後半、イングランドの圧力に後退し、2つのOG(オーンゴール)で逆転負けした。

勝ったイングランドだが、極めて出来が悪かった。「優勝候補」とは思えない。選手間に有機的連動がみられないし、攻撃も組織的ではなかった。個々の選手がそれなりの力量でゴール前に迫る迫力は感じるものの、連動でゴールを奪うような形はうかがえなかった。優勝候補といわれるイングランドだが、仕上がりは遅い。このままのチームコンディションならば、予選突破も難しかろう。この試合のイングランドなら、韓国だったら勝っていただろう。

この試合について、日本のマスメディアの岡田ジャパンに対する評価は、先日の韓国戦より「良くなった」というものとなろう。「日本復調」だとか「強豪を苦しめた」であるとか、「ベスト4に現実性」だとか・・・。

しかし筆者には、「相変わらず」の日本代表に見える。2002年の日韓W杯以降、日本代表が行った世界レベルの試合において、日本代表は「善戦」「惜敗」「内容は良かった」という評価を常に受け続けて今日に至っているものの、そのことは、▽精神力を含めた90分間もたない「フィジカルの弱さ」、▽リードした試合をコントロールできない「稚拙な試合運び」、▽2点目を取れない脆弱な攻撃力――といった、日本代表サッカーの課題が克服できずに手付かずであること意味している。イングランド戦を中継したNHKTVのアナウンサー氏が、イングランドに追いつかれた直後、「4年前のドイツ大会のオーストラリア戦を思い出しますね」といった言葉が、日本代表の現状を、すなわち、ドイツ大会からまったく進歩していない日本代表の姿を、端的に表している。

「日韓戦より良かった」という評価は、表面的過ぎる。この試合の前半、イングランドは日本に対してプレスをかけてこなかった。その理由は明らかではないが、イングランドの選手たちが日本を甘く見ていたからだろうと推測できる。自分たちのほうが格上だと確信しつつ、横綱相撲をとろうとしたのかもしれない。

当コラムで何度も書いてきたことだけれど、岡田ジャパンは、相手の当たりが弱く、積極的守備をしない局面では、良い面が出せる。このことは岡田ジャパンに限らないのだけれど、とにかく、相手がプレスをかけてこない局面では、上手いパス回しで、攻撃的な形をつくりだせる。だが、それも90分間は続かない。日本選手が相手ボールを積極的に追いかけ、相手に攻撃の形をつくらせず、その一方で、相手が自由にボールを持たせてくれる時間帯は、岡田ジャパンは華麗で速いサッカーをする。

一方、前日の韓国のように日本をよく知っていて、岡田ジャパンの「良さ」を最初から封じ込めようと意図する相手に対しては、試合開始からうまくいかない。韓国選手は日本の選手に対して、厳しい当たりで苦しめ、パスの出所のキープレイヤー(あの試合では、中村俊輔に対して)にきついマークをしてきた。そうなると、岡田ジャパンは脆さを見せ始め、リズムを失い、戦う意欲すら削がれたまま、90分間を終える。結果は惨敗である。

イングランドも岡田ジャパンの弱点を知っていたかもしれないが、とにかく前半は、日本にサッカーをやらせてくれた。ところが、後半に入ると、日本の弱点を容赦なくついてきた。親善試合とはいえ、厳しいタックルを仕掛け、日本ボールの局面では、積極的守備でボールを奪いにきた。後半20分を過ぎたころから、日本に疲れが出てきて、守備が弱まってきたところで日本DFは破綻をきたした。日本を代表するCB2人がそろって、OGを献上するという惨めな記録だけが残った。

日本のスポーツジャーナリズムは、OGを献上したCB=闘莉王、中澤について、同情的評価をくだすことだろう、「不運」「仕方がない」「判断狂わす悪コンディション」・・・スポーツマスコミが、ミスをした2人がしたい弁解を代わりにしてくれることだろう。だが、このOGの2失点は、日本DF陣の致命的弱さ、90分間守りきれない、フィジカルの弱さの象徴以外の何ものでもない。この弱さは、4年前のドイツ大会のオーストラリア戦とまったく変わっていない。

弱さが克服されない理由は、何度も書いているように、Jリーグの弱さに起因する。日本のサッカーの最高峰Jリーグが、弱さを内包したままの風土を温存し続けているからである。日本代表に選ばれるDF陣は、海外経験をもたない者ばかり。日本のディフェンダーは世界に通用しないから、海外クラブからオファーがこない。Jリーグで最高のDFプレーヤーであっても、世界レベルから程遠い。そんな「代表」が4年間、よくて現状維持をしていても、進歩する世界のサッカーからは水をあけられるばかりなのである。

試合後のインタビューでは、「(自分たちが)思った以上に戦えた」「手ごたえをつかんだ」とも思える受け答えをしていた選手もいたようだが、間違っても、イングランド戦で岡田ジャパンに「光が見えた」なんて思ってはいけない。本番では、もっとファイトしなければ、グループリーグ敗退は目に見えている。よくて0−0が1試合、0−3が1試合、0−1が1試合で、日本に勝ちはないだろう。


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