キリン杯最終戦、日本代表はコロンビア(世界26位)と戦った。この試合の前半、海外組の中村(俊)、稲本、中田、高原が先発したが、高原以外は貢献しなかった。前半押されっぱなしだった日本を救ったのは、後半、開始とともに投入された羽生だった。相手選手にかけるプレッシャー、前への飛び出し、スペースを探して動き回る動きが、日本に活気を与えた。
“名より実”とはまさにこのことだ。名前では、海外組の稲本、中田浩だが、チームが勝つためには羽生のような豊富な運動量が必要だ。全員が「羽生」というわけにはいかないけれど、羽生のように、与えられた役割を全うすること、運動量で相手を上回ること――ができる選手がオシムジャパンの基盤となることが、コロンビア戦でわかりやすく立証された。羽生は、ジーコジャパンでは、絶対に代表に選出されることのない選手の一人だろう。
日本代表に相応しいのはだれか――良識的かつ常識的意見として、Jリーグで成績のいいクラブから選手を選ぶという考え方がある。が、しかし、Jリーグの順位は優秀な外国人の有無に規定される。以前書いたとおり、現在1位のG大阪の攻撃力は、ブラジル代表経験をもつFWマグノアウベスの存在を無視できない。浦和の2位も、ブラジル代表経験のあるFWワシントンに負っている。3位の川崎は、欧州クラブから声がかかるジュニ−ニョが、昇格して4位を維持する好調の柏もフランサが引っ張っている。5位清水は韓国代表のチョ・ジェジン、フェルナンジ−ニョが、6位の名古屋にはワントップで頑張るヨンセン(元ノルウェー代表)がいるし、7位広島にはJの得点王ウエズレーがいる。
その一方、力がありながら低迷しているクラブの代表が、現在9位の鹿島だ。昨年まで確実に得点を上げてきたFWアレックスミネイロが退団し、清水から移籍してきたFWマルキーニョスが本調子ではない。中盤では、クラブ世界一に輝いたサンパウロのレギュラーMFのダニーロがJリーグに馴染めず、先シーズン限りで退団したフェルナンドの穴を埋めていない。そのため、才能のある若手をチームとしてまとめられず、柳沢の故障も相まって、勝てなくなってしまった。
9位以下となると、最下位横浜FCにはこれといった外国籍の有力選手はいないし、大宮も新しく獲得した外国人がことごとく戦力になっていない。16位と、降格圏内まで落下した千葉は、キリン杯で日本代表を5人送り出しているにもかかわらず、退団したFWハ−スの抜けた穴が空いたままだし、リベロのストヤノフがケガ、さらに、新戦力のジョルシェビッチがケガで出場できない。14位の甲府はバレーがG大阪に移籍して得点力不足に泣いているし、13位のFC東京は、鳴り物入りで獲得したW杯出場の実績を持つワンチョベのコンディションが上がらず下位に沈み、12位の横浜Mもケガで外国人3人が揃わない。
Jリーグの順位を眺めてみると、Jリーグで順位を上げる方法は難しくないように見える。Jで勝つには、有力な助っ人を揃えることだが、しかし、これはリーグの世界的傾向なのであって、欧州CLを制したミランやプレミアのマンチェスター、リバプール、チェルシー、スペインのバルサ、マドリードしかりであり、Jに限ったことではない。
Jリーグの上位から代表を選ぶという考え方は、良識的かつ常識的だけれど、危険である。代表選手の選出条件がJリーグで活躍すること、すなわち、チームの勝利に貢献し、チームの順位を上げることであることはまちがいのないところなのだが、サッカーが団体競技であるため、クラブの順位と選手の実力が相関しないことがある。
代表の最大の課題の1つが、得点力不足であり、FWの人選が極めて難しい。先述のとおり、Jリーグでは、G大阪、浦和をはじめ上位リームのFWは外国人が占めているから、代表FW選出に当たっては、Jリーグの上位チームから選ぶという基準を満たすことができない。Jリーグでここ数年安定した力を発揮しているFWの選手で、代表チームのコンセプトに合致する者が代表になるのは必然である。その結果、下位の千葉から巻が選ばれることになる。
06〜07年シーズン、スコットランドリーグで大活躍した中村(俊)は、代表で機能したのだろうか。コロンビア戦に限れば、十分、力を発揮したとはいえないし、チームに貢献したともいえない。W杯南アフリカ大会出場に向けた日本代表が、彼のチームであるはずもない。中村(俊)は、数あるMFの代表候補の一人に過ぎないのである。海外組を崇拝するマスコミ、一部代表サポーターはコロンビア戦で少しは目を覚ましただろうか。
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