職業婦人通信
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2004年06月18日(金) 伝説の上司

この日記で何度かご説明してきたとおり、
私の上司は毛深い。とにかく毛深い。

腕から手首、手の甲までびっしりと密生した
毛の間は漆黒の闇と見まごうほどで、

『ある夏のこと、彼の血を吸おうとした蚊が
 その腕毛に絡めとられて出口を失い、死に至った』
という伝説が言い伝えられる男である。

そんな彼を、私たち女子社員は敬意をこめて
「大帝」(ジャングルだから)と呼んできたのだが
(役員には昔「ケガニ」って呼ばれていた。ひどい)

最近、上司としてムカつくことが多くなったため
敬意が薄れ、新たに千代子が命名したあだ名のが
「ケブー」。

「“毛深いケモノ”っぽい感じが出てていいよぉ」
と、同僚の女のコに誉められたあだ名である。

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前置きが長くなったが、ケブーはとにかく
天然というかバカというか、
信じられないような素っ頓狂な奇行をしでかすことがあって、
その毛深さ以外にも驚かされることが多い。

たとえば、私がケブーの部下となってまだ数か月の頃の話。

千代子が来客応対中のケブーにお茶を入れようと
応接室のドアをあけてみると、
ケブーはあるビデオをお客様に見せようとしていた。

が、見せたい部分の頭出しができていなかったようで
巻き戻しと早送りをガチャガチャ繰り返している模様。

それでもなかなか、お客様に見せたい部分を再生できないケブー。
焦っているのが傍目にもよくわかる。

「んなもん、客が来る前に頭出ししときゃいいのに・・・」
と、上司のマヌケぶりに心の中で舌打ちした千代子であったが、

その次の瞬間、千代子はかつてないほどの
激しい驚愕に襲われることとなった。

焦ったケブーはついにビデオテープを取りだし、

B面に入ってんのかな?」

と、ビデオテープの裏をチラリと眺め、

そしてそのテープを

裏返しに、
・・・いいですか奥さん、裏返しにしてですよ!

ビデオデッキに再度、突っ込んだのである。

当然「向きがちげーよ」とばかりに異音を立て、
挿入を拒否するビデオデッキと、
「なんだよ、入らねぇな」とばかりにテープを
無理やり押しこもうとするケブーとの戦いが数秒続いたのであった。

音楽用のテープじゃあるまいし、
ビデオテープにA面もB面もあるかい!

私は茶を取り落としそうになり、
客は驚愕のあまりソファの上で固まっていたのだが、

客はその後、ツボに入ってしまったらしく
肩をふるわせて笑いをこらえはじめた。

それにも気付かぬケブーは
「いやー、ビデオの調子が悪いみたいですいません」
と、汗をふきふき、何事もなかったかのように
ふるまったのであるが、

ツボに入った客の肩は
小刻みに震えつづけたのであった・・・。

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その後もケブーは常識はずれのことを
いろいろやらかしてくれるので
部下としては恥ずかしい思いをすることもあり、
腹の立つこともあるのだが、

「ビデオテープにB面がある」と、
おそらくは今も信じている上司が
少しかわいくも思える今日この頃である。トシかしら・・・。


千代子 |MAIL
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