妄言読書日記
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※ネタバレしています
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| 2008年11月07日(金) |
『医学のたまご』(小) |
【海堂尊 理論社ミステリーYA!】
最近、ヤングアダルト向け小説がひそかに流行なんでしょうか。 ヤングアダルトとライトノベルの境界がいまいちわからなかったのですが、本書を読んでそうかと納得するものがありました。 それについては後述します。
中学生の薫くんがうっかり潜在能力テストで全国1位の成績を取ってしまったために、ご存知東城大学医学部で研究することになってしまう話しです。 全編横書きなのがなかなかに辛かったのですが・・・。
私は海堂作品を刊行順にここまで読んできているので、その流れから見た感想になります。 前作ブラック・ペアンで現在(田口&白鳥シリーズを一応現在とすると)よりも20年前の東城大学附属病院が舞台になりましたが、今回は現在よりも10年ほど先の大学が舞台。 この30年という時の流れを端々に感じて感慨深い作品です。 何よりあのナイチンゲールで幼かったアツシがこんなに立派になったかと思うと、そのいちいちに目頭が熱くなる。 終盤でアツシが薫に「逃げ出すなよ」と言う時、きっと脳裏には瑞人のことがあるんだろうなぁと思うと、ナイチンゲールも無駄ではなかった、と思うのでナイチンゲールでがっかりした人はこちらも試しに読んでみたらどうでしょうか。印象が変わる・・・かも?
学長になった高階先生が薫に「偉いね、君は」と言った時、30年前から今まであったであろう色々なことがぶわっときて、海堂先生の作品では一番本書が感動的でした。
ブラック・ペアンの時に、海堂作品には悪人がいない、と書いたのだけれど、今回の藤田教授と言うのはどうしようもなくずるい人。 全てを中学生の薫のせいにしようなんて酷いよーと思いながら読んでいたのだけれど、アツシや薫のパパは藤田教授ばかりが悪いのだろうか、と提示する。 ただ諾々と流されていた薫にも非はあるんじゃないかと、突然見知らぬ世界に放り込まれた中学生にとってはなかなか厳しいことを求めるな、と思うのだけれど、「無知は罪である」という海堂先生の考えは子どもでも大人でも変わりはないという姿勢の表れなんだろうなぁ。 この辺が、ライトノベルとヤングアダルトの違いかな、と。 大人が自覚的に10代を意識して書いているかいないか。 自覚的に書いたとき、それは逆に10代だけではなく大人でも読める作品になるのではないかなと、本書で感じました。
薫くんは、これからも東城大学でがんばるようなので、アクの強い面々と渡り合っていってもらいたい。
端々にここ10年での変化がさらりと書かれていてそれが凄く驚く。 まずは万年講師の田口先生が教授になってた。 まだ愚痴外来やってるのだろうか。 そして、救急が無くなっていた・・・速水・・・。 それだけに留まらず、実は病院自体一度つぶれているというのだから、一体この先どんな事件が起こるのか、不安するやら期待するやらです。 紆余曲折ありながらも、田口先生や、高階先生や、三島事務長(は変わらず)や、垣谷先生が残っているのがしぶといな〜とは思いますが。
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