妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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| 2008年05月07日(水) |
『死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う。』(他) |
【森達也 朝日出版社】
たぶん、10代の頃から罪とそれに見合う罰について漠然とそんなものはあるのかなぁというようなことを考えていた。 あるときは非道な犯罪に対して絞首刑なんてあっさりしすぎてるんじゃないかと思ったり、あるときは人殺しだろうがなんだろうが殺してもいいものなのかと思ってみたり。 ただ最近は、死刑が執行されたという短い記事を目にするたびに、嫌だなと感じる。 殺人や事故のニュースを目にしたときと同じように、嫌だなと感じる。 そう思っても、被害者遺族がこれでよかったと言うのなら、私に言えることは何一つないな、と思う。
そんなふうに、著者の森達也も死刑についてさまざまな取材を重ねる中で逡巡している。 とても重い足取りで、行ったり来たりする文章が、その逡巡を物語り、論理では納得しきれない死刑の存置、廃止という二極をさまよっている。 最近、死刑が確定した光市母子殺害事件の被害者遺族である夫の本村洋は、犯人の死刑を強く訴えている印象が強いけれど、その本村洋にしても死刑制度そのものにはひじょうに逡巡している様が述べられている。
つい最近、死刑の瞬間の音声が放送されたようだけれど、本書でこれほど死刑の実施が不可視なものなのかと驚く。 それと同じく、被害者遺族への保障のなさには愕然とする。
著者は一つの結論に達するけれど、それは死刑制度への答えではない。 読んで終わりという一冊ではないなと思う。
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