狼森、笊森と盗森

2008年05月21日(水) いつかのことば…の日

シリーズ物の最大の利点といえば、やっぱり、過去に出たキャラが
改めてでてくるだけで嬉しい。というところでしょうか。

そんな、とある魔術の11巻。

登場人物全員がきっちりと自分の思想をもっていて、それをきっちり
書ききって下さっているんで、敵が憎めなくて…というよりも、そこには
”読者視点(主人公)と違う自分の正義をもった人がいるだけ”
というこのシリーズ。本当の意味での悪役なんて数え切れるほどで、
そのキャラにしたって、自分では「もうこれしかない」という確固たる
意志の元で動いているわけで、だからある意味、悪役なんていないこの
シリーズ。

1巻は、大切な少女のために悪と思われても構わない二人がいました
2巻は、同じく一人の少女のために学問を究めようとした人がいました
3巻は、それが多くの人の幸せになると信じた人たちだけがいました
4巻は、ただ自分の子供の幸福を願った親がいました
5巻は、いろんな人が、いろんな思いをかかえている話でした
6巻は、大事な友達の為になにかをしようと決意した人がいました
7巻は、自分の信じる道の為に、他者を踏みつけても前へ進む人がいました
8巻は、不安にたえきれなくなって周りにあたってしまった人がいました
9巻と10巻は、それが幸福になると信じている人がいました

彼(あるいは彼女)たちの行動や想いは、間違っているとかいないとか、
正しいか正しくないかとか、悪か正義か…なんて問題ではなく、単純に
「自分の知っている人たちが傷つくのが嫌」という、世界で一番不幸な
一人の少年の信念と真っ向からぶつかって、押し負けただけ。
本当の意味で悪役なんていなくて、ただ、ほんの少し、少年の我侭が
強かった。それだけの、このシリーズ。

そして11巻。
かつて、自分の信じるモノのために戦った人が、再登場です
その時の戦いでは、残念ながらその幻想は打ち砕かれました
うち砕いた少年は、その時も彼が”正義”というわけではありませんでした
ただ「自分の知っている人が傷つくのが嫌」という思いで
「助けて」と自分にいってきた人の為に、右の拳を握り締めただけです

少年は、戦った彼女や、彼女の信じるモノを悪と決め付けたわけでもなく
「信じるモノのために他者を踏みつけることは間違っている」と
いつもそうするように、右拳を握り締めただけ
他者を犠牲に、自分の信じるモノを護ろうとした少女は
自分を犠牲に、他者を護ろうとした少年の我侭に押し負けた
…そんな話が、いつだったか、ありました。

そして11巻。

そこには自分が信じてきたモノに裏切られた少女がいて
それでも自分を信じて立ち続けようとする少女がいるから

少年は再び戦場に、彼女の前にたちます

かつて彼女にぶつけた右の拳を、今度は、彼女を傷つけるモノに向けて

だって、世界一不幸な少年は「自分の知っている人が傷つくのが嫌」だから

少年は今までその心ひとつで戦って
そして今からだってその言葉ひとつで戦い続ける

「多分、今度アニェーゼが助けてって言ったら俺は助けに行くぞ」

いつかのことば、そのとおりに


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