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2005年04月20日(水)
「ブラザー軒」






「 東一番丁 ブラザー軒
  硝子簾がキラキラ波うち、
  あたりいちめん氷を噛む音

  死んだおやじが入って来る
  死んだ妹をつれて
  氷水喰べに、ぼくのわきへ

  色あせたメリンスの着物
  おできいっぱいつけた妹
  ミルクセーキの音に、びっくりしながら

  細い脛だして、細い脛だして
  椅子にずり上る、椅子にずり上る

  外は濃藍色のたなばたの夜
  肥ったおやじは小さい妹をながめ
  満足気に氷を噛みひげを拭く

  妹は匙ですくう 白い氷のかけら
  ぼくも噛む 白い氷のかけら

  ふたりには声がない
  ふたりにはぼくが見えない
  おやじはひげを拭く 妹は氷をこぼす

  簾はキラキラ 風鈴の音
  あたりいちめん氷を噛む音
 
  死者ふたり、つれだって帰る、
  ぼくの前を小さい妹がさきに立ち、
  おやじはゆったりと

  ふたりには声がない、ふたりには声がない
  ふたりにはぼくが見えない、ぼくが見えない

  東一番丁 ブラザー軒
  たなばたの夜 キラキラ波うつ
  硝子廉の向うの闇に 」


              高田渡 「ブラザー軒」
              アルバム「best live」 から




憧れの目を向けられるひと達の多くが
憧れてるほうよりも先に逝ってしまうことだろう

なぜなら憧れてるほうが先に死ぬなんて
なんだか損をした気がするからだ

けれど、
けれども
高田渡が逝ってしまったらしい

うまく言葉なんて見つからないけれども
そんなニュースは夢の中のもののようだ

実際に見たこともない人だから
まだ生きてるってことにしてもいいのだけど

今日は珍しくお酒など飲んで
未来にもちびりと口をつけつつ

「ブラザー軒」など
歌ってみるのだ