何かを忘れるということは、 思考する人間に与えられた すばらしい能力であると思うけれど、 あるいは、 思考の至らなかった何かしらの 摂理のようなものかもしれないけれど、 とてもおそろしいのは 何を忘れるか 何を覚えておくかを 人間は選べないってことだ。 そして忘れてしまっていることのうち 何を思い出すのか いつ思い出すのかということも わたしたちが思い通りにできる範疇にない。 それでも忘れてしまうし それでも忘れられないし それでも思い出してしまう。 何十年も忘れていられたことを なぜか今日思い出してしまう。 なぜか。
わたしがわすれたわたしを 覚えている人たちに なぜだか無性にあやまりくなる。 そして、その人はほんとうに わたしだったのかということを どんなふうに飲み込めばいいのだろう。
わたしはそれを いつ思い出すのだろう。
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