池ポエム
ハンス



 こわい話

今日は怖い映画でも見よう。
そんな提案がまかり通ったり、通らなかったり。と、いうか二人は乗り気で二人はいやがってるんだけどね。もちろん、いやがってるのは青二の二人。
・・・そう、冷静に語り手やってるこの私も含む。
だってしょうがないじゃん。怖いの苦手なんだから。て言ったらるみちゃんとゆかちんになんかニヤニヤされた。くっ・・・これが屈辱ってやつなのか? と、厨二的なプライドが発動した私はうっかり、そううっかり乗せられて。
みかしー勢を裏切って大久保・大坪勢に寝返りました。
「ちょっとぉー、津田ちゃんは私の味方じゃなかったのぉー!」
「ごめん、みかしー」
「これ、私知ってるもん。すっごい怖いって、友達に聞いた!」
「そぉんなことないって。見かけだけ見かけだけ。全然怖くないから」
「そうそう、そんなに血も出ないよ」
「血の量の問題?」
「和風のホラーはダメなんだってばぁ・・・絶対後悔するよ」

みかしー、貞子系にいい思い出がないんだな。私もそうだけど。

「今日夜寝られなくなったらどうするの」
「あ、それならあたし添い寝するよ」
「・・・じゃあいっか」
「いいの!?」
「あ、でも・・・髪洗う時後ろに誰かいそうで怖い」
「じゃあ一緒にお風呂入ろうよ」
「見張っててくれる?」
「うん、見てる。超見てるよ」
「ねぇ、ゆかちん。それってどっちを?」
「やだなー、津田ちゃん。幽霊に決まってるじゃん。うん、決まってる」
「ほんとかよ・・・」
「ね、みかしー見てる間あたしの手ぇ握ってていいからさ」
「ほんとにー!?る、るみちゃん、女に二言は無しだよ」

おい、怖がってるみかしーどこいった。
いきなり豹変して違うことに興奮してるよ、この人。しかもすでにるみちゃんの手を握っている。まさに、文字通り手が早い。恐怖<るみちゃんの手。みかしーという人がよくわかった気がする。
ていうか、ホラー映画見ることになっちゃったじゃん。部屋の電気も消して、みかしー部屋のテレビの前に全員陣取って。全員の仕事柄、立派なDVDは必須だ。

「ゆかちんさぁ」
「ん?津田ちゃんも怖いなら手つなごっか?」
「いや、それは」
「ほれほれ、遠慮しなくっていいよ。あたしと津田ちゃんの仲じゃない」
「どんな仲だよ」
「それはーもちろん、パンダとトマト的な?」
「・・・て、手湿ってるけどいい?」
「全然いいよ」

緊張してひとりで堅く握ってたから、うっすら湿ってて申し訳ない。ゆかちんはさり気なく優しい。年下に甘えるなんてなんかかっこ悪いけど、なぜかゆかちんにならあんまり抵抗がない。
こうしてると、ほんとに京子と結衣みたいだ。

「てかさ、なんで急に怖い映画?」
「あー。最近暑いから、あたしとるみちゃんなんか寝れなくって」
「そうだったんだ」
「思いっきり涼しくなりたいねーって話しててさ。気分的に」
「あーそれでかー」
「ちょうどあたしTSUTAYAに行ったから、これだーって思って」
「じゃあこれゆかちんチョイス?」
「そう。学校でみんな見たって言ってるやつ」
「へ〜」
「あ、なんか窓から手が千本ぐらい出てきた」
「!!」

反射的に目を閉じる。これが怖い映画見るはめになってしまった時の必殺技『怖いシーンで目をつぶる』だ!
でも今はゆかちんと手をつないでたせいで、目を閉じた拍子に手にも力が入っちゃったみたいで。ゆかちんにはバレバレだった。

「もーいーよ」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。もう怖くないシーンになったよ」

そーっと薄目を開けたら、確かに怖いものは映っていなかった。
そういえばみかしーは大丈夫かな?

「津田ちゃん」
「ん?」

ゆかちんに小声で呼ばれる。

「みかしー、超涙目」
「あー・・・さっきの見ちゃったんだ」

暗がりでもはっきりわかる、泣きそうなみかしーと、その肩を男らしく抱くるみちゃんの姿。るみちゃん、いつもの変なイケメンキャラ入ってる。
そうこうしてるうちに、なんとなく映画は終わっていた。


「で、ゆかちんどうした」
「来ちゃった」

可愛く言えばいいってもんじゃない。あーでも、枕抱えてパジャマでベッドに座ってるゆかちん可愛いな。って、そうじゃなくて。
みかしーを慰めつつ一緒に寝てしまったるみちゃんを置いて、なぜかこっちのベッドにゆかちんが。こっち、シングルなんですけど。

「いいじゃん、一緒に寝ようよ」
「いつかの未遂の続き?」
「そうそう。今日は未遂じゃ済まないぞ」

おいこら。未成年がそういうこと言うんじゃありません。

「ゆかちん」
「ん?」
「ありがと」
「いえいえ。どういたしまして」

たまには年下の気遣いを目一杯受けてしまおう。
その夜、抱き枕使いゆかちんの手慣れた包容を受けて、色々苦しくて眠れなかったのはまた別の話。

2013年05月24日(金)



 るみるみの愛は貴く深い

久々に会って話して、寝顔まで惜しみなく見せてくれる彼女が愛おしい。長い髪を撫でる。普段は触れたくても遠慮と恥ずかしさから手が出せない。チキン野郎と呼ぶがよい。仕方がないじゃないか。長い間、いや今だって憧れの人であることに変わりないのだから。2年の月日は特別な絆を育んだが、それでも二人きりだといまだにドキドキする。
目を閉じていると、お茶目で愛嬌のある普段の彼女とはちょっと違った表情を見せる。お姉さん。寝ていると幼くなりがちなものだけど、彼女はなぜか大人っぽい。無防備で、きれいな顔。目が離せない。
こんな遅い時間まで一緒にいたらこうなるよね。
基本的に早寝な彼女は、睡魔に襲われたら抵抗できない。わかってて、帰る機会をそれとなく奪ったのは自分なのだけど。今日のこと話したらまたゆかちんや津田ちゃんにあざといって言われちゃう。あざとい訳じゃない。そうじゃなくて、どうしても彼女の特別が欲しいと思ってしまう瞬間がある。それだけのこと。
贅沢者?仕事の仲間として、友人として、これ以上ない関係にあるのに。彼女を独占することなんて、できるはずないのに。
可愛い吐息を聞きながら、頬杖をついてる深夜2時過ぎ。ここは朝までやっている。


「朝まで?ずっと?寝息聞いてただけなの?」
「うん。そだけど」
「ねぇ、朝まで5時間ぐらいあったよね?るみちゃんはその間、一睡もしてないの?」
「してないよ。あの状態で寝れるわけないじゃん」
「退屈じゃなかった?」
「ぜんぜん。超楽しかった」
「へぇ・・・」
「どしたの津田ちゃん。なんかゆかちんみたいな目になってるよ」

2013年05月18日(土)
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