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■ こわい話
今日は怖い映画でも見よう。 そんな提案がまかり通ったり、通らなかったり。と、いうか二人は乗り気で二人はいやがってるんだけどね。もちろん、いやがってるのは青二の二人。 ・・・そう、冷静に語り手やってるこの私も含む。 だってしょうがないじゃん。怖いの苦手なんだから。て言ったらるみちゃんとゆかちんになんかニヤニヤされた。くっ・・・これが屈辱ってやつなのか? と、厨二的なプライドが発動した私はうっかり、そううっかり乗せられて。 みかしー勢を裏切って大久保・大坪勢に寝返りました。 「ちょっとぉー、津田ちゃんは私の味方じゃなかったのぉー!」 「ごめん、みかしー」 「これ、私知ってるもん。すっごい怖いって、友達に聞いた!」 「そぉんなことないって。見かけだけ見かけだけ。全然怖くないから」 「そうそう、そんなに血も出ないよ」 「血の量の問題?」 「和風のホラーはダメなんだってばぁ・・・絶対後悔するよ」
みかしー、貞子系にいい思い出がないんだな。私もそうだけど。
「今日夜寝られなくなったらどうするの」 「あ、それならあたし添い寝するよ」 「・・・じゃあいっか」 「いいの!?」 「あ、でも・・・髪洗う時後ろに誰かいそうで怖い」 「じゃあ一緒にお風呂入ろうよ」 「見張っててくれる?」 「うん、見てる。超見てるよ」 「ねぇ、ゆかちん。それってどっちを?」 「やだなー、津田ちゃん。幽霊に決まってるじゃん。うん、決まってる」 「ほんとかよ・・・」 「ね、みかしー見てる間あたしの手ぇ握ってていいからさ」 「ほんとにー!?る、るみちゃん、女に二言は無しだよ」
おい、怖がってるみかしーどこいった。 いきなり豹変して違うことに興奮してるよ、この人。しかもすでにるみちゃんの手を握っている。まさに、文字通り手が早い。恐怖<るみちゃんの手。みかしーという人がよくわかった気がする。 ていうか、ホラー映画見ることになっちゃったじゃん。部屋の電気も消して、みかしー部屋のテレビの前に全員陣取って。全員の仕事柄、立派なDVDは必須だ。
「ゆかちんさぁ」 「ん?津田ちゃんも怖いなら手つなごっか?」 「いや、それは」 「ほれほれ、遠慮しなくっていいよ。あたしと津田ちゃんの仲じゃない」 「どんな仲だよ」 「それはーもちろん、パンダとトマト的な?」 「・・・て、手湿ってるけどいい?」 「全然いいよ」
緊張してひとりで堅く握ってたから、うっすら湿ってて申し訳ない。ゆかちんはさり気なく優しい。年下に甘えるなんてなんかかっこ悪いけど、なぜかゆかちんにならあんまり抵抗がない。 こうしてると、ほんとに京子と結衣みたいだ。
「てかさ、なんで急に怖い映画?」 「あー。最近暑いから、あたしとるみちゃんなんか寝れなくって」 「そうだったんだ」 「思いっきり涼しくなりたいねーって話しててさ。気分的に」 「あーそれでかー」 「ちょうどあたしTSUTAYAに行ったから、これだーって思って」 「じゃあこれゆかちんチョイス?」 「そう。学校でみんな見たって言ってるやつ」 「へ〜」 「あ、なんか窓から手が千本ぐらい出てきた」 「!!」
反射的に目を閉じる。これが怖い映画見るはめになってしまった時の必殺技『怖いシーンで目をつぶる』だ! でも今はゆかちんと手をつないでたせいで、目を閉じた拍子に手にも力が入っちゃったみたいで。ゆかちんにはバレバレだった。
「もーいーよ」 「ほんとに?」 「ほんとほんと。もう怖くないシーンになったよ」
そーっと薄目を開けたら、確かに怖いものは映っていなかった。 そういえばみかしーは大丈夫かな?
「津田ちゃん」 「ん?」
ゆかちんに小声で呼ばれる。
「みかしー、超涙目」 「あー・・・さっきの見ちゃったんだ」
暗がりでもはっきりわかる、泣きそうなみかしーと、その肩を男らしく抱くるみちゃんの姿。るみちゃん、いつもの変なイケメンキャラ入ってる。 そうこうしてるうちに、なんとなく映画は終わっていた。
「で、ゆかちんどうした」 「来ちゃった」
可愛く言えばいいってもんじゃない。あーでも、枕抱えてパジャマでベッドに座ってるゆかちん可愛いな。って、そうじゃなくて。 みかしーを慰めつつ一緒に寝てしまったるみちゃんを置いて、なぜかこっちのベッドにゆかちんが。こっち、シングルなんですけど。
「いいじゃん、一緒に寝ようよ」 「いつかの未遂の続き?」 「そうそう。今日は未遂じゃ済まないぞ」
おいこら。未成年がそういうこと言うんじゃありません。
「ゆかちん」 「ん?」 「ありがと」 「いえいえ。どういたしまして」
たまには年下の気遣いを目一杯受けてしまおう。 その夜、抱き枕使いゆかちんの手慣れた包容を受けて、色々苦しくて眠れなかったのはまた別の話。
2013年05月24日(金)
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