池ポエム
ハンス



 good morning,good communication

朝だ。鳥の声。カーテンから漏れる白い光。ああ、もう少し寝ていたい・・・じゃなくて。どんなに朝に弱くても、律儀に頭の片隅にここはどこで今はどんな状況なのかが蘇ってくる。ここは家じゃないんだ。自分の部屋じゃあない。
がんばって目を開く。
ほら。見慣れた壁の色でもないし、うちはカーテンじゃなくてブラインドだ。ここは自分ん家じゃないから、いつまでも寝てはいられない。

「よし」

気合いをこめて、できるだけ小さく発声した。だって起こしたら悪いし。上下のまぶたがくっつきすぎて目を開けると若干痛い。昨日遅くまで起きていたからだ。今日が大事な日だから、お互い余計に眠れなかった。だからつい、ほら、身を寄せ合ってしまっているわけで。
穏やかな寝息が静かな部屋にそっと潜んでいる。
寂しいなら素直に言えばいいのに。頼れるあの人ならもっと上手に甘えられるんだろうけど、残念ながらA型チームはこんな時二人とも下手くそだ。片手がこちらに差し伸べられるようにはみ出ていて、そっと包むように握った。一緒に寝ようって今日の今日まで言えなかったなんて、笑ってしまう。どんだけ照れ屋なんだ、あなたもわたしも。手があったかい。それに、とても小さい。いつもは誰よりも聡い彼女が、たまらなく健気に思える。やっぱり抱きしめて寝ればよかったかも。抱き枕、普段から使ってないことを少し後悔する。

「宇田ちゃん、もう起きたの・・・?」
「え、あ、うん」

できるだけ物音をたてないようにとか、無駄な努力だったらしい。よく考えたら、起き上がった拍子に布団が動いているから、さすがに朝弱いルビでも起きるだろう。

「ごめん、起こしちゃったね」
「ううん・・・」
「まだ少し時間あるから、寝てていいよ」
「・・・手」
「え?」

ルビの手と重なった私の手が、少し持ち上がって布団にぱたんと倒れる。それが二度くり返されて、自分がどんな状況なのか気がついた。

「あ! ご、ごめんね」

とっさに放り出す勢いで手を離す。さながらおさわりに飽きたあの人みたいな仕草。隣で寝てる人が知らない間に手握ってるとか、やばい。変だと思われたかな。思っただろうな。あの人みたいに普段からそういうキャラだってことなら申し開きもできただろうけど、普段そんなにスキンシップしないのに二人きりの時だけとか、まずい。そういう人みたいじゃん。
頭は回る一方で、それらしい言い訳は一個も思いつかない。ああー、致命的だ、このアドリブの利かなさ。どうしようどうしようどうしよ

「・・・」

無言で、手をつなぎ直された。

「え?」
「宇田ちゃんの手、あったかい」

細い指が、焦って手に汗でもかいてそうな私の手に絡み付く。

「る、ルビ?」

同時に、ルビの目がすーっと閉じていく。あ・・・そうか。まだ半分寝てる状態だったんだ。しっかり手を握ったまま、再び夢の中へ。
時計を確認。あと30分はこのままでも、まだ間に合う。それまでは、ずっとこうしていようね。ちゃんと覚醒した時、ルビがどんな顔するかはわからないけど。



2012年09月24日(月)



 M想上の天使

「Y乃さんはどう思う?」
「う〜ん・・・どうだろうね」

我々は、若いモンのことが気になっていた。
いや、若いと言っても何十歳も差があるわけじゃないけど。むしろその中の一人は三十路なので年上なのだけれど。

「ほんとは24歳らしいよ」
「うん、知ってる」

それでも、実は自分と1歳しか違わない。むしろ、今正面にいるY乃さんより年の差が少ないくらいだ。でも、なんて言うんだろう。キャラ? やっぱキャラなのか? キラキラ分が足りない? ゴリラ分が足りない? 百合分とか、腹黒分が・・・その他諸々がなんとなく違っている。だからこそY乃さんと二人、非キラキラチームを名乗ってみているわけで。
こうしてまったりしているとなんだか落ち着く。何をしゃべっているということでもないのだけど・・・そうそう。何を話していると思われているんだろう、という疑問がきっかけだった。

「あっちの部屋、どうなってるんだろうね」
「覗く? 突撃してみる?」
「歓迎してくれるかなぁ?」
「素で戸惑われたら寂しいよね」
「あっ・・・みたいな? あぁ、なんか傷つくかも」
「あはは、そんなことないよ。あの3人に限って」

今晩は、非キラキラした2人組であの企画をやる予定だ。だから他の3人が夜部屋でどうしているかは知ることができない。想像してみよう。イマジン。
私が黙りこんだのを察して、Y乃さんも黙って見守ってくれる。

---

どこにする?
3人そろえば文殊の知恵、ではなくて、席取りゲームが始まる。どこに座るかは大事な問題だし、今夜の場合はどこに寝るかが大事な問題。
「私そっちの端がいいなー」
「え、いいの?」
「いいの? なんで??」
「そこ、夜トイレ行く時とか踏まれるよ?」
「踏まれるの前提!?」
「ふ、踏まないように気をつけようよ」
「じゃあA音ちゃん端っこね。Kとりちゃんは?」
「うー、どこでもいいけど、N望ちゃんはどっちがいい? 真ん中か、奥か」
「私もどっちでもいいよ。あ、そうだ。せっかくだからKとりちゃん挟んで川の字になる? 親子みたいに」
「え!?」
「Kとりさんが子供役ね。私はどっち? お父さん? お母さん?」
「A音ちゃんはお母さんじゃない?」
「なんで?」
「体型的な意味で」
「えー! それセクハラですよー、Nじょさん!!」
「いいじゃん! 褒めてるんだから!」
「・・・」
「Kとりちゃん、どうしたの?」
「あ、ううん。せっかく二人いるから、どっちと一緒に寝ようかなぁって」
『!』
「最近ホームシックだったから、人が夜一緒にいるのうれしいな」

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「黒っ!」
「うわ、びっくりした。え、どうしたの、Sおりん」
A音ちゃんもびっくりのチャラ発言を素で繰り出す黒Kとりちゃんが脳内に舞い降りた。純粋無垢な顔してなんと恐ろしい。
「いや、それはSおりんの妄想上のKとりちゃんでしょ。そこまでベタベタしてないよ、きっと」
暑苦しい。主に胸元が。だめだ、あの部屋は危険がいっぱいだ。夜中にそっと訪問してみたい。写真の一つでも撮ってみたりして。
「あー、終わったら行ってみる? お酒の勢いで」
「でも酔わないんだよ、私」
「そうだけど、ほら、そこは酔ったふりして」
そう言っている間にも、何飲みますかというありがたい気遣いがスタッフさんから届いて、何なら用意してもらえますかなんてY乃さんがノリノリで返事している。飲む気やな、この人。もずくありますかって言ってるし。
「収録終わった後はだめかも」
「なんで?」
「だって・・・酔う予定だから。Y乃さんに」


おあとがよろしいようで

2012年09月15日(土)
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