池ポエム
ハンス



 キラキラチームとダークサイドチーム

あのお二人は、部屋で二人だと何してるんだろう?
素朴な疑問がふと湧いた。そもそもは、逆の質問を向こうから聞かれたのが発端。三人は、自分たちが何話してると思ってる? という、なんか遠回しな言い方で。こんな風に、3・2で部屋割されたとなると、より一層考えてしまう。
「どうかな?」
「う〜ん」
「どうだろうね」
大人な二人だから、とりあえずお茶は似合うよね。うん、必須必須。そこにしびれる憧れるよね。よくわかんないコメントもあったが、今は突っ込まないでおく。部屋にあったおまんじゅうとか食べちゃうのかな。食べるでしょ。お茶と絶妙な間隔で食べるでしょ。しょっぱいものと甘いものは同時にほしい派だっておっしゃってたし。
「あ、はーい!」
元気よく手を挙げたのはA音ちゃんだった。差し向かいでひたすらお茶を飲んでいるだけだった二人にとたんに動きが加わる。

ーーー

「で、どっちにするか決めた?」
ひとしきりお茶を飲んだところで、彼女が言った。畳の上に鎮座する姿はさながらお人形のよう。伏し目がちなせいで、長いまつげがより強調されて、特に何も考えていなくても憂いを帯びている。黙っていても、いや、黙っていれば? 深窓の令嬢に意味深に微笑みかけられて、動揺せずにはいられない。
「どっち?」
どっちって、どっちとどっち? そもそもどこから来てる話題だっけ。まるで台本の上の彼女たちの会話みたいに脈絡がない。何これ、Aパート? 返答に困っておまんじゅうをちびちび食べ続けていると、彼女は考えながら続けた。
「N條くん」
「くん?」
おいおい、女装男子疑惑がこっちに飛び火か? 今度の収録で実は男でしたって結論出されたらどうリアクションしよう。まだ脱いだ覚えはないぞ。いや、まだってなんだ。たとえ疑惑を晴らすためとはいえ脱がないだろう。そこは守ろうよ、私。
「くん付けで呼んでも、いいよ」
なかなか定着しないあだ名が決まるんなら、別にくん付けでもいい。そんな風に呼ぶ人他にいないから、特別な感じもするし。それと「どっち」がどうつながるのかわからないけど。
「じゃあ旦那? 私、妻かぁ」
なんで急にこの人、妻を名乗ってんの。めとった覚えないから! そもそもめとれないし! 女だから。
「楽しみだなー」
何が!? ものすごくいやな予感がするけど、問いただすのも怖い。あー、夜にならないで。それかあの3人。あの3人が乱入してきてほしい。今だけは切実にそう思う。

ーーー

「よっしゃー!! 行こう!!」
「えぇ! この人、自分の妄想に自分で返事してる!?」
自分で妄想して自分で返事してすでに走り出しかけているA音ちゃんを追いかける。いやぁ、でもまさか。あのお二人は仲良いけど、まさか現実でそこまでは・・・さすが百合マスター、発想が半端ないっす。でもちょっと迷惑かなぁ。
「まだ夕方だから押し掛けたら迷惑じゃない?」
「何言ってんの、今から隠れないと」
「隠れる?」
「押し入れに入って、夜になるのを待ぁぁつ!」
「えぇぇぇぇ!」
あんた、中の人じゃなくて中の世界の住人だ、発想が。ふと横を見ると、目をキラキラさせたN望ちゃんが。あなたもリアクションおかしいですから。
「よしっ、入ろうよ! 入って3人でぎゅうぎゅうになろう!!」
「いやぁぁぁ、暑苦しい!!」

2012年09月03日(月)



 回り道しないで

 少しお酒も飲んで、深い時間になって。そろそろ寝ようかなんて、どちらからともなく言い出して。歯を磨いて部屋に戻ったら、彼女が布団の上にちょこんと座っていた。ちょこんと。
 薄暗がりに静かに俯いているから表情はわからない。眠いのかな。でも待っててくれたってことは、何か話したいのかな。わからない。昔はいろいろ試行錯誤しては的はずれなことばっかりしてよく呆れられてたっけ。最近は、彼女のことはよくわかる。よくわかるはずなのに、今はわからなかった。
 背中には柔らかい空気をまとっている。浴衣から覗く首筋が白くて紅くて。つい、本当につい、昼間見た裸を一瞬思い出してしまい。いやいや、だめ絶対。なんかわからないけど、いつもみたいにじゃれて触れ合うのとは違う気がして、ものすごく悪いことをした気がして、内心ひどく焦った。変えよう、この空気。
「もう寝る?」
「◎ぐちは?」
 あ、だいじょうぶ。いつもの彼女だ。よしよし、ここはいつもどおり一発かましておくか。
「今夜は寝かさないよ、も○」
「……さて、寝るか」
 おお、いつもどおりの華麗なスルー。
「でも、◎ぐちが」
 ん?
 布団にごそごそ体を埋めながら、徐々に小さくなっていく声で、彼女はまだある続きを言う。
「話したいんなら、もう少しだけなら、いいよ」
 こちらに向いている顔は、赤かった。右手が出ているのは、そういうことだよね。いいんだよね。手を重ねてみる。指に力を入れる。彼女も握り返してくれた。


「まあ、そんなことがあってですね」
 ほんとうに、ほんとうのほんとに。好きかもしれないと。
 打ち明けられたのはそんな話。難しい話。しかし当人、あんまり深刻そうではない。彼女は真面目な人柄なのだ。本当は。もっと悩んでいたらどうしようかと思ったが、元気そうで安心した。
 気づいただけなんだろう。昔から二人を知ってる。二人とも、今も出会ったころも、何にも変わってない。最初から、ほんとうとかそうじゃないとかではなく、好きだったんだと思う。
「どうするの?」
 ただ気になるのはこれから。答えはなさそうな無責任な問いに、妙に力強く彼女はうなづいた。お、妙案でもあるのか?
「とりあえず、ハワイ行きます」





※今度は年上の先輩の視点で。そういう話じゃないとはわかってるけど、ハワイで挙式すればいいのに。

2012年06月03日(日)
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