くじら浜
 夢使い







小さくなった故郷   2014年01月16日(木)

龍郷の家 庭のソテツ よこにある小川と古木の渡橋
家から小学校までの距離 小学校の横を流れる川の幅
その川にかかる橋の長さ くじら浜 白い砂 
転がっている貝殻 電波塔の建った畑 その前の小路
父ちゃんの墓 大熊のをばの家 緑公園 ベンチ
その後ろのガジュマルの背の高さ 千代田湯
あまおと 新川の流れ 親子びっきゃ 山羊島
海の広さ 空の距離 樹のにおい 霧のふかさ 今井崎
長雲峠 安木屋場の屋根 てるゆきの家 志村商店
母ちゃんの手のひら その後ろにそびえるおでもり山
ゆうじろ峠 まやっくゎの声 空港までのみちのり
母ちゃんの背中 その背中におんぶされた赤ちゃんの顔
飛行機の音 おしよせる白い波

そのすべてがちいさくなっていた。







たまごやき   2013年12月23日(月)

昨日をばが死んだ


夏休みにはいつも大熊のをばの家に遊びにいっていた

大好きなたまごやきをたくさん食べさせてもらった

岩崎バスで浦上までいき
大熊のをばの家までは歩いていく

道端のすすきがいつもざわざわとゆれている

こたつの向こうがわの
しわくちゃになって笑うをばの顔を見る


昨日をばがしずかに死んでいった







影の声   2013年04月24日(水)

夢に入りこむ
いつか見た光景がそこにある
意識の底は見えなくて
あの角をまがるときっと会えるよと
影が言う







昇天   2013年01月17日(木)

煙が昇ってゆく
ゆっくり昇ってゆく
まっすぐ昇ってゆく

川のほとりの猿は
両ひざを立ててちょこんと座り
煙に合わせて
ゆっくりと自分の首を持ちあげる







   2012年11月04日(日)

凍てつくような冬がいい

何もかもを氷に閉じ込めるくらいの







たたずむ人   2012年10月25日(木)

道端にたたずんで
おじいちゃんは空を見上げた

夕陽に照らされたおじいちゃんの顔は赤く染まり
眩しい・・と、おじいちゃんは
顔の皺を指でなでて目を細めた

流れる雲を追いかけ
吹く風をつかまえ
明日を見るおじいちゃんは強かった






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