酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年03月31日(金) 『天使と悪魔』 ダン・ブラウン

 ロバート・ラングドンはセルン所長コーラーから絶滅したはずの秘密結社《イルミナティ》の紋章を焼き付けられた死体を見せられる。殺された科学者が発明した反物質を《イルミナティ》が奪い、ヴァチカンへ・・・!? 《イルミナティ》は自分達を迫害した宗教の象徴ヴァチカンで次々と殺人をおかす。巻き込まれてしまったラングドンはヴァチカンを救うことができるのか?

 『ダ・ヴィンチ・コード』があまりにも面白かったのでダン・ブラウンの作品を追いかけはじめました。この『天使と悪魔』は『ダ・ヴィンチ・コード』の主人公ラングドンのデビュー作。これがまたトンデモナイ面白さ。「読み始めたら止められない」って言う惹句に嘘偽りナシなんです。このスピード感でこの読みやすさは素晴らしいと思います。もう大ファンですv この作品も映像化されるといいと思うのですケレドモ、ヴァチカンが舞台ってむずかしいのかしら。映像で見たいなぁ。

「あなたがたに欠けているのは、まさにその信憑性だよ。ミズ・ヴェトラからまだ聞いていないだろうが、セルンの科学者は何十年にもわたってヴァチカンの方針を非難してきた。創造論を取り消し、ガリレオとコペルニクスに対して正式に謝罪し、危険で不道徳な研究に対する批判を撤回するよう、陳情を繰り返している。さて、ふたつの筋書きのどちらがもっともらしく聞こえるだろうか − 四百年前に存在した悪魔的集団が最新の大量破壊兵器を携えてふたたび現れたという筋書きか、それともセルンの不届き者が周到ないかさまでヴァチカンの聖なる儀式を混乱させようとしているという筋書きか」

『天使と悪魔』上下 2003.10.30. ダン・ブラウン 角川書店



2006年03月30日(木) 『キス』 西澤保彦

 里佐が惰性で開いている店にかつて恋焦がれた男そっくりの少年がやってきた。高校時代に女達の憧憬と垂涎の的だったふたりの男を欲しいままにしていた真智子の子供に違いない。里佐は復讐の思いで少年を誘惑。そして少年の弟もまた憧れの片方の男と真智子の間に出来た子どもと知り、里佐は兄弟とも狂ったようにいただいてしまう。ある日、真智子が店にやってきて二人の息子の性欲処理をしてくれたことへの礼を述べ、そのお礼として・・・

 うーん、かなり禁欲的に表現しようとしてみてもえらいエロエロになっちゃいますわねぇ(苦笑)。西澤保彦さんの問題小説(大笑)モリナツ・エロエロシリーズ第三弾の中の「うらがえし」の作中エロ話なのですよ。アハハ、長い説明だなぁ。どれもこれもエロチックまっしぐらで面白かったのでありますが、この作中小説が一番きましたわー。西澤先生の妄想爆裂っぷりが楽しいですし、なによりふたつの落ちがいいv 西澤先生うまいわぁ。シロクマもどき宇宙人も可愛いし、おおいに楽しませていただきました。が、しかし、18禁にした方がよろしいかと・・・。

 と里佐は、名刺の裏に『西澤保彦』と書きつけ、改めて加地に手渡した。

『キス』 2006.3.31. 西澤保彦 徳間書店



2006年03月29日(水) WOWOW『巷説百物語 飛縁魔』

 江戸の町で男の黒焦げ死体が多発。男を虜にし、焼き殺す妖怪《飛縁魔》の噂が広がり、真相解明に又市たち妙なチーム4人がまたしても立ち上がる。そして又市を執拗に追いかける真兵衛に縁談が舞い込み・・・

 京極夏彦さんの人気小説を堤幸彦さんが映像化した巷説百物語シリーズ第二弾であります。前回の『狐者異』よりトッテモ面白くなっていましたネ。又市チームの4人と脇を固める真兵衛さんたちの絡み具合がグーv 堤監督らしい小さなユニークさがアチラコチラに見え隠れしてる(笑)。見逃してる面白いシーンがもっとありそうだなぁ。又市役の渡部篤郎さんはカッコいい。陰間親父の治兵役の大杉蓮さんもウマイ。治兵さんは竹中直人さんでもいいかも。私が気に入っているのは真兵衛さん役の遠藤憲一さんv 舞台でナマを拝見した時にあまりの渋さに惚れちゃったのです。声もいいしステキーv まだまだ続いて欲しいシリーズなのでありました。面白かったわー。



2006年03月28日(火) 『七つの黒い夢』 西澤保彦ほか

 乙一さん、恩田陸さん、北村薫さん、そして西澤保彦さん他という超豪華な作家さんのラインナップ! どんどん増刷されているそうですが、当然だと思います。これだけのビッグ・ネームの出来のいいブラッキーな短篇集なのですもの。乙一さんは久しぶりに拝読しましたが、なんだか大人になられた感じ。ますます面白さ倍増ですねv 陸ちゃんは残酷、北村薫さんはサスガのうまさ。そして大好きな西澤保彦さんの『桟敷がたり』は西澤保彦らしさ炸裂! こういう展開を描かせたら容赦ないほどだわ。うっとりー。他の作家さんの短編もGOODで一冊で何度も美味しい文庫であります。

『七つの黒い夢』 2006.3.1. 西澤保彦ほか 新潮社文庫



2006年03月27日(月) 『猫目堂』 水名月けい

 とある山奥の小さなバス亭の近くに猫目堂と言う喫茶店がある。看板には『あなたの探しているものがきっと見つかります。どうぞお気軽にお入りください』と。そこを訪ねるお客さんたちは何かに惑い何かを喪失した人生の迷い子たちばかり。でも猫目堂の扉を開けてみたら・・・

 なんと言うか、宮沢賢治を思います。不思議でセピアカラーで残酷で厳しくて優しくて・・・ああ私も猫目堂に行ってみたいなぁ。しみじみココロに優しい物語です。この物語は作者の水名月けいさんがネット上で公開されていた物語を纏めたそうです。すごいですよね。こういう確かな力を持つ物語はキチンと世に出てくるのですもの。そんなことにも感動しました。装丁に惹かれて大当たりでした。オススメです。

「いいえ。人生をやり直すのなんて、本当はとても簡単よ。間違えたと思ったら、そこからまたやり直せば良いだけのことだもの」

『猫目堂』 2006.3.15. 水名月けい 文芸社



2006年03月26日(日) 『サーカス市場』 三浦明博

 高杉は友人の浮田と飲んだ帰りに地下鉄の階段手前で倒れている若い男とその側から逃げ去る美女を目撃した。美女は毛鉤をピアスにしていた。なぜ毛鉤をピアスに? 彼女に惹かれ追いかけた彼らはサーカス市場に迷い込んでしまう。臓器売買が行われているとか、焼肉のメニューで臓器が焼かれているとか怪しげな噂に事欠かない場所だった・・・

 サーカス市場と言う独特な場所で起きる事件に巻き込まれてしまう高杉。・・・巻き込まれると言うより自発的に巻き込まれてしまったと言うべきかしら。不思議で気持ち悪くて淫雑でなかなか好みな世界が繰り広げられています。淡々と語られるケレドモ、ええーっ!?って言うどっひゃーな事件の数々。面白かったなぁ。語り口がかなり好物なのでありました。

「意味意味意味、まったくいまは意味ばっかり求めたがる奴らが多すぎる。そう思わないか?」

『サーカス市場』 2006.2.28. 三浦明博 講談社



2006年03月25日(土) 『ダ・ヴィンチ・コード』 ダン・ブラウン

 ハーヴァード大学教授ラングドンは、会う約束をしていたルーヴル美術館館長ソニエールの殺人事件に巻き込まれてしまう。ソニエールは死の時までのわずかな時間と瀕死の己の肉体を使ってメッセージを伝えていたのだ。現場に駆けつけた暗号解読官ソフィーとともにラングドンは壮大な謎に挑むのだが・・・!?

 興奮して上下巻を読んだと言う感じです。ヒットした作品と言うものは侮れないものだと言うのが素直な感想。これだけ素晴らしい作品であれば売れに売れたことも納得です。映画公開を控え、文庫化もされたそうなのでまた爆発的に売れることでしょう。この感想を読まれた未読の方にもゼヒに読んでいただきたいです。
 暗号とか美術とかで敬遠される方もおいでかもしれませんが、トテモわかりやすいです。このわかりやすい文章は翻訳の越前敏弥さんの手腕によるもでしょうね。イメージがわきやすいし、外国作品特有のとっつきにくさは全くありません。翻訳もセンスの時代なのだと痛感しました。宗教に疎い日本人にもこれだけスンナリわからせる力があるのですものね。すごいなぁ。
 興奮してとにかくラストまで読みたくて読みました。なのでこれから映画公開まで何度も何度も読みたいと思います。細部まで頭に叩き込みたいくらい素晴らしい世界なのですもの。惚れ惚れするほど面白い。これだから読書はやめられないのですよねv 超大絶賛でオススメですw

「赦しの心は、神がお恵みくださった最高のものだ」

『ダ・ヴィンチ・コード』上下 2004.5.30. ダン・ブラウン 角川書店



2006年03月21日(火) 『クジラの彼』 有川浩

 言葉の感性を見初められ、イケメンの彼をGETできた聡子。しかし聡子の恋愛は前途多難だった。なぜならばイケメンの彼の仕事は潜水艦乗りだったから・・・
 うー、これものすごく気にいっちゃったんですv 恋人同士になるふたりの言葉の扱いがトッテモよくて。こういう恋愛っておおいにありだよなぁってしみじみほのぼのしちゃいました。聡子をかなり応援しちゃいましたもの。人を好きになるってトッテモ素敵なことだよなぁと思えた優れもの。ちなみに私的には潜水艦は「潜る」だと思います。沈むじゃなくて潜るだわー。

『SweetBlueAge』 2006.2.20. 角川書店より



2006年03月20日(月) 『あの八月の、』 角田光代

 結婚を控えた友と大学の部室にもぐりこみ、過去の想い出を映像で鑑賞する女ふたりの物語。ほろ苦い青春を回想させられました。酒とつまみをもって部室に潜り込むナンテそれさえもまだ青春って感じがするのですケレドモ。角田さんってうまい書き手さんですよねv

『SweetBlueAge』 2006.2.20. 角川書店より



2006年03月18日(土) 『時は静かに戦慄く』 木宮条太郎

 京都下鴨神社に由紀は合格祈願に来た。従兄で秘密の恋人の健一と一緒に。由紀は父の児童相談所で働きたいと言う夢があり、夢実現のために浪人して同志社大学を受験するのだ。その帰り道、由紀は同級生の明子をが健一の父(警察官)に逮捕される同級生を目撃する。彼女はコインロッカーに産んだ赤ちゃんを捨てていたのだ。そして由紀は木乃伊化して笑っている赤ちゃんを見てしまい・・・

 いやぁ、すごかったです。さすがに第六回ホラーサスペンス大賞特別賞だけのことはありました。今回の大賞作品の『キタイ』もかなり面白かったですし、ホラーサスペンス大賞関連作品は本当に侮れない。なのにどうしてこの大賞が今回で終了しちゃったんだろう。ぶんぶくぶーん(不満)。
 この物語はどうしようもなくホラー。なにがホラーかと言うと幼児虐待の多発性→子殺し頻発という世紀末的なところが何とも凄まじかった・・・。ぐいぐいと読まされましたもの。ただ個人的な好みを言えば「どうして?」が全く解明されていなくって消化不良な部分は残りました。勿論きっとそれが持ち味であり、そういう意図的な流れだったのでしょうケレドモ、いったいどうしてそうなっちゃったの?と言う心に湧いた謎がそのまま残ってしまうと言う久々の放置プレイっぷり。参っちゃったなぁ。これはたぶん映像化してもかなり面白いと思うので大いに期待して待ちたいと思います。お後がよろしいようで・・・。

『時は静かに戦慄(わなな)く』 2006.1.30. 木宮条太郎 新潮社



2006年03月16日(木) 『厭魅の如き憑くもの』 三津田信三

 怪奇幻想作家・刀城言耶(とうじょうげんや)は神々櫛(かがぐし)村へ取材に赴いた。この村では憑き物筋の「黒の家」と非憑き物筋の「白の家」の対立があり、神隠しと言われる子供達の失踪が続いている。生霊に取り憑かれた少女、死んだはずの姉の存在に慄く少女、かつて不気味な体験をした少年・・・この村では今もまた怪異に怯えているのだ・・・

 うー、しびれました〜。こういう幻想的な怪異物語でここまでキチンと読ませていただけるとおおいに満足であります。しかもキチンと謎解きもあり、ソノ上心をそそる《落ち》(=お約束)があって・・・。かなり好みなのであります。この世の中には不思議がいっぱいだなぁとしみじみ思うのですね。白と黒で割り切れるもんじゃないんだなぁ。

「谺呀治家は憑き物筋の家柄で黒、神櫛家は非憑き物筋の家柄で白 − などというように、白黒をはっきり決められることなど、実は世の中には少ないと思うんだ」

『厭魅(まじもの)の如き憑くもの』 2006.2.28. 三津田信三 原書房



2006年03月15日(水) 映画『エミリー・ローズ』

 神の問題を人間が裁けない・・・ラストの字幕に出た神父さまの言葉に頷いてしまいました。神の存在、悪魔の存在。日本人にはピンとこない感覚だと思いますが、世の中に奇跡は起こっているし、神も悪魔も存在する気がします。そしてやはり人間は無力なのかしら、いやいや人間にできることだってあるのじゃないのか!・・・なんてアレコレ考えてしまいました。
 この映画はホラーではありません。実話に基づいた映画。実話に基づいてこんなことがあったってことは十二分にホラーだと言えますけど。エミリー・ローズと言う少女に取り憑いた悪魔。その悪魔を祓おうとする神父様。神父様の行動が彼女を死へ至らしめたと裁判が起こってしまった・・・その裁判で神父様の弁護をした女性がこの物語を書いたのだそうです。
 映画を見ていて何故悪魔はエミリーを選んだのだろう? 悪魔が選ぶ基準は何なのだろう?とずっと思っていました。その答えをエミリーと一緒に知ることとなり、けっこう呆然としました。うーん(困惑)x こういうことを考える時にいつも遠藤周作さんの『沈黙』を思い出します。神の沈黙は何故なのか、と。しっかりとした宗教を持つことは強い事なのかもしれませんね・・・。うーん。



2006年03月14日(火) 『KAIKETSU! 赤頭巾侍』 鯨統一郎

 久留里一太郎は浪人。寺子屋で子供達に読み書きそろばんを教えながら、その裏で怪傑(解決?)赤頭巾侍に変身し、世の中の悪を切り捨てていた・・・!?

 鯨統一郎さんらしいスピーディでユーモラスな短編集でした。久留里さんは早とちりでワルモノを成敗し、勘違いに気づいて慌てて(笑)、しかし頭脳でキッチリ解決する、という流れ。ワルモノに違いない相手を成敗した後で自分の間違いに気づき一瞬あわあわする久留里が可愛らしい。でもキッチリ頭脳で解決v だからやっぱり解決赤頭巾侍が正しいのじゃないかしらーん。

『KAIKETSU! 赤頭巾侍』 2006.2.28. 鯨統一郎 徳間書店



2006年03月13日(月) 『秘密クラブ、海へ行く!』 椹野道流

 藤堂要平はインターハイ目前に平常心を失っていた。真面目な要平は自分に充分な力を持っているにも関わらず、特待生として恥じない成績を残したいがゆえの焦りだった。長期出張(?)から戻った黒崎理事長もなにやら夢見が悪いらしく体調が優れない様子。そこで秘密クラブの面々は気分転換と療養を兼ねて海へ合宿に行くのだが・・・!?

 笑顔が癒しや清浄の力を持つ真透くんがキュートな秘密クラブ・シリーズも3冊目となりました。椹野道流さんの描かれる世界はトテモ読みやすいのですケレドモ、物語の中にたくさんのメッセージが込められていてあなどれないのですよね。さくさく簡単に読み捨てるシロモノではなく、なにかココロに清いものが残ります。それって椹野道流さんの人となり、もしくは清純なココロが投影されているのだろうなぁと思います。今回も仲間が仲間を思いやる大切な暖かいものを読み取れました。こういう物語を読んで若い人たちがどんどん本を好きになってくれると嬉しいなぁ。

 だからと言って気が緩むわけではなく、鼓動は相変わらず速かったが、頭からはすっと余剰な血が下がっていった気がした。

『秘密クラブ、海へ行く!』 2005.12.1. 椹野道流 小学館パレット文庫



2006年03月12日(日) 『ストロベリーナイト』 誉田哲也

 姫川玲子は27歳で警部補昇進、警察庁本庁捜査一課殺人犯捜査係の主任。そこそこの美貌とスタイルに恵まれた玲子は、同僚からのセクハラにめげず働いている。ある日、丁寧に梱包されながら放置されている遺棄死体が発見され、玲子は持ち前の勘の鋭さで捜査の核心へ。一緒に捜査する公安あがりの勝俣は何故だか玲子を目の敵にし、かつて玲子が巻き込まれた事件のことを・・・

 面白かったです! 姫川玲子が良かったですし、異様なオッサン勝俣もまた良いキャラでv 勝俣の常軌を逸脱した玲子への関心についてもう少し掘り下げて欲しかったくらい。勝俣のアナザー・ストーリーって言うのもいいかもしれないなぁ。物語の犯人については冒頭で登場するので、おおまかな輪郭はつかめてしまいます。また黒幕についてもなんとなくわかっちゃうかな。でもそれでもぐいぐい読ませてくれる面白さ炸裂でありました。たくさんの屈折を盛り込み過ぎていて描ききれていない勿体無さはあるかもしれないなぁ。ひとりひとりが主人公になれると言うことでもありますね。あ、なにやら大絶賛してますねぇ。好きなんですよ、こういう物語。ウキウキ。

「いいか。人間なんてのはな、真っ直ぐ前だけ向いて生きてきゃいいんだよ」

『ストロベリーナイト』 2006.2.25. 誉田哲也 光文社



2006年03月11日(土) 『輪廻』 大石圭 原作:清水崇

 大森は娘・千里の背中に亡くなった妹・美弥子と同じ黒子を見つけ、娘は妹の生まれ変わりであると信じ、おかしな実験を始めた。ネズミに焼き鏝で印をつけ、殺すのだ。それは生まれ変わりを確認する実験だった。そして同じ印をつけたネズミの誕生を確認し、次に大森は人間を殺しまくった。殺した人間に印をつけ、生まれ変わりの確認の目印とするために。そして35年後・・・

 清水崇監督の映画『輪廻』のノベライズです。清水さんと言えば発禁寸前ビデオ『呪怨』v あのビデオの怖さは私が見たホラーでナンバー1の怖さを誇るシロモノであります。なかなかアレを越える怖さはないだろうなぁ。あんな怖い思いしたのってホラーで初体験だったもの。近いくらいに怖かったのは『富江』かしらねぇ。どちらも不条理な怖さ。理屈のつけられない恐怖って考えるだけでも恐ろしいー!
 この『輪廻』も映画をまだ観れていないのでありますが、ノベライズが結構面白いので映画もいい出来なんじゃないのかしらん。なんと言っても異色俳優・椎名キッペイさまがホラー初出演されてるし。観たいなぁ。
 人間の魂は何度も転生しているという説は、なんとなく心惹かれるのでありまする。よく生まれ変わりが話題になった人って言うのは若すぎる死や突然の死ゆえってことが多いようです。その衝撃が生まれ変わった先の魂までにもリセットされることなく持続しちゃう。たった一度の人生に前の人生が割り込んでくるって言うのはちょっと辛すぎることではありますね・・・。

 わたしの娘。わたしの妹。来世ではいったい・・・・・・わたしの何になってくれるのだ?

『輪廻』 2005.12.25. 大石圭 原作:清水崇 角川ホラー文庫



2006年03月10日(金) 『サイレン』 進藤良彦

 天本由貴は、弟・英夫の病気療養のために父と共に夜美島(やみじま)へやって来た。この島では29年前に島民消失事件が発生し、たったひとりの生き残りがいたらしい。サイレンが鳴ったら外へ出てはならない、そう教えられた由貴が島で遭遇する奇妙な出来事・・・

 堤幸彦監督の映画を観たいと思いながら読んで見たノベライズですが、どうやら小説のラストはアナザー・エンディングとなっている模様。この小説のラストが理解できていないので悶々としています。ラストの彼女はいったい・・・?
 映画とゲームから小説が生まれ、アナザー・エンディングとは御洒落なものだなぁと思います。そしてやはり小説なのに映像を見ているような読みやすさが魅力。これは映画も観なくてはv さすがにゲームには手をださないケレドモ。

『サイレン』 2006.2.10. 進藤良彦 小学館



2006年03月09日(木) 『ガール』 奥田英朗

 奥田英朗さんらしいワーキング・ガールたちの物語。小粋だったり、頑張っていたり、腹の中で毒づきながらカッコいいヒロインたち。でも・・・これってちょっと違うわよねって言うのが女からの本音。物語だし、フィクションだし、違って当然なのだケレドモ、うーん、でもやっぱり「実際の女は違うよ。奥田さん」と言う微妙なところ。男目線なんだよなぁ。でも面白いことに違いなかったです。割り切って楽しめばよいのだろうに、なんだかちょっと反感を感じている自分が可笑しかったです。やっぱりワーキング・ガールでありたい女としては、それ違うよーってネ。ははは。頑張りすぎちゃうから、ガールは。

『ガール』 2006.1.30. 奥田英朗 講談社



2006年03月07日(火) 『奇談』 行川渉

 里美は7歳の時に神隠しにあったが、その時の記憶がない。考古学を専攻する里美はフィールドワークで自分の故郷の村へ向う。そこは隠れキリシタンの村で奇妙な村八分状態の部落があった。古来よりソノ地域で7歳の子供ばかり神隠しにあうのはいったい何故なのか・・・?

 伝説の諸星大二郎さんの原作が映画化されると聞き、観たかったケレドモ、観ることが出来ず、やっとノベライズを読めました。そうか、あの異端の考古学者・稗田礼二が登場するのだったかー(驚)v ノベライズを読んだらますます映画を観てみたくなってしまいました。木乃伊取りが木乃伊に。
 日本に置ける宗教と言うのは、外国に置けるキリスト教のように絶対的なものはなく(と無宗教な私は思う)、それなのにキリスト教を題材にしてだいじょうぶなのか心配しながら読みましたが杞憂だったようです。日本であればこそ、こういうことありそうに思えたくらい・・・。読みやすいし、内容も面白かったなぁ。

『奇談』 2005.10.25. 行川渉 角川ホラー文庫



2006年03月06日(月) 『レンタル・チルドレン』 山田悠介

 息子が死んだ。喪失感から泰史と冬美は立ち直れずにいる。心配した泰史の兄から、P.I.(プレジャー・インビテーション)という子供をレンタルする会社の噂を聞く。ダメ元でP.I.を訪れたふたりは死んだ息子ソックリな子供をリストから発見。迷わずその子をレンタル、そして購入したふたりだったが・・・!?

 なかなか面白かったです。設定も落ちもありがちかもしれませんが、この作家さんは着実に“面白く”描く力を磨かれている感じを受けました。若い世代がこの作家さんによって本の楽しさに目覚め、読書の迷宮へ迷い込んでくれたらいいなぁと思える物語でした。読書のとっかかりは手軽なものでよいのではないかと考えます。これはそう言う意味で読みやすいし、謎だし、適度にホラーだし、なかなかいいんじゃない、と思った次第でありました。

『レンタル・チルドレン』 2006.1.25. 山田悠介 冬幻舎



2006年03月05日(日) 『盗作』 飯田譲治+梓河人

 彩子の弟カヅキは聾児。聴力が全く無いカヅキだが、家族に愛され、不思議な力を秘めていた。彩子の幼馴染のミチは美しい少女。彩子とミチの同級生で女王様である紫苑は、自分より目立ってしまうミチを敬遠していた。ある日、彩子はトテツモナなにかを体中に受取り、一心不乱に1枚の絵を描く。人々の心に感動を呼び、魅了してやまない絵。彩子はあっと言う間に熱狂の渦に巻き込まれてしまう。有名な画家に認められ、前途洋洋に思われた彩子だったが、紫苑がその絵をかつて見たことがあると気づく。それは原野アナンのモザイク『天を走る』という作品。天国から一転、彩子は盗作疑惑の地獄へ突き落とされるのだった・・・

 すばらしーいv 大好きな飯田譲治さんの物語、しかもあの『アナン』の流れを汲む物語を読めることができる幸せ。たまらない読書タイムでした。上下巻なんて気にならないでさーっと読まされてしまいました。ああ、飯田譲治さんの世界は映像であれ、物語であれ、愛しいなぁ。素晴らしいなぁ。手放しで褒めちぎっちゃう。『アナン』は文庫化され、『アナン、』と改題、そして大幅改訂されたとか。買わなくちゃ。買わなくちゃ。そわそわ。
 今回のヒロイン彩子は、大きなエネルギーを受信し、表現することが出来てしまい、それが人生に数度も起こってしまい、彼女は翻弄されます。彩子がどこかでペシャンと潰れてしまうのじゃないかと心配でハラハラしどおしでした。でも家族と友人に支えられ、彩子の彩子だけの人生を全うします。なんてスゴイことなんだろう。
 飯田譲治さんの物語には救いや癒しが散りばめられていて、読むヒーリングだと思っています。出会いは『ナイト・ヘッド』(テレビ版)でした。サイキックな兄弟が大変な目に遭いながら、岬へ到達する物語。あれも大きな癒しだったわ・・・。なつかしい。今回の物語にアナンはチラチラ影を落とします。アナンも頑張っているんだなぁ、と昔馴染みの近況を知ることが出来て嬉しいような心持なのでありました。

「世の中のほとんどのことはわかんないまま過ぎていくけど、ちゃんと元気に生きていけるもんよ。いつか死ぬまでにわかるかもしれないし、わかんないかもしれない。そういうことがあるっていうことを覚えるのには、これはいいチャンスかもしれないけどね。ま、あたしたちが若いときにはいろいろあったわよ。娘に知られたらびびるような騒ぎもたくさん起こしてきたけど、人なんかそのうち忘れちゃう。思い詰めないで。ゆったりかまえておいで」

『盗作』上・下 2006.2.3. 飯田譲治+梓河人 講談社



2006年03月04日(土) 『シフト −世界はクリアを待っているー』 うえお久光

 とかげ男ラケルはセラを援護し、ミュージィ救出へ。この不思議な世界ではやるかやられるか。しかし、たとえ死んだとしても現実の世界に影響はない。この世界に戻れなくなり、この世界のことを忘れるだけだ。現実とソチラの世界をあちらへこちらへシフトする瞬間に「世界はクリアを待っている」という言葉が聞こえてくるのだが・・・

 いやー、参りましたな、コレは。シャッポを脱ぎます。面白くて最高にウマイ。ソノ上になんだか泣けてしまう。うーん、すごいもんだなぁ。『悪魔のミカタ』のうえお久光さんの初単行本! これはオススメです。ゲームをする人であるなら、さらに倍面白いと思いますv うえお久光さん、本当に面白かったので「敗北感」をしっかと感じましたよー!!!

「・・・・・・この、くそったれな世界のなかで、唯一、価値があるものがあるとすれば、それは          仲間、だ」

『シフト −世界はクリアを待っているー』 2005.7.30. うえお久光 メディアワークス



2006年03月02日(木) 『THE TEAM』 井上夢人

 目が不自由な人気霊能者能城あや子、飛ぶ鳥を落とす勢いの露出っぷり。彼女が《見る》相手の周囲での悩みや事件が、次々と解決、解消されていく。そしてその裏にはあや子をサポートする最強のチームの存在があった・・・!

 これは本当に本当に本当に面白い物語でした。世の中には不思議なことなど何にもないんだよ、ってことでしょうか(笑)v あや子に霊視してもらうクライアントの抱える問題も様々なものを見せてもらえるし、またザあや子チームのスタッフが最強に素敵なの。うーん、これはもう一度再読だな。

『THE TEAM』 2006.1.30. 井上夢人 集英社



2006年03月01日(水) 『快楽の封筒』 坂東真砂子

 引っ越した先の隣の主婦を狙う男、留学先イタリアの大学時代の男友達3人と寝る女、田圃で他所の亭主に抱かれる女、女子大時代にいきなりキスをしてきた女友だちと再会する女、旅先で美しい少年にハジメテの体験をする少女、女友だちの男にちょっかいを出す女、自分の性を母に理解してもらう事を諦めた女、隣の男に抱かれる様を亭主に目撃される女・・・

 出るわ、出るわ、エロい話のオンパレードっ!!! これがまた坂東真砂子さんの手に料理されると一筋縄ではいかない余韻を残すのですよね・・・。すごい作家さんだと思います。どれもこれもエロ・セクシーでめろりんめろりんになりながら読みましたが、一番身につまされたのは『母へ』でした。いろんな事情が織り成し、私にとって母親の存在は異様に大きい。荷となり、足枷にもなる。それでもソノ心を砕きたくはない・・・そういうことを思いながら読むと心にものすごく痛かったです。
 短篇集なので読みやすいですし、女の人にはオススメでありますよv

 これは、私がずっと心の中で、お母さんに出しつづけてきた手紙。お母さんは、これをたびたび受け取ってきたはずです。だけど、私はこの手紙を書かなかったふりをし、お母さんもまた、読んだりしたことはなかったかのように振る舞ってきた。
 この手紙は、書かれたけれど、存在しなかった手紙。いつか、この手紙を読む日が来るのでしょうか、お母さん。

『快楽の封筒』 2006.1.25. 坂東真砂子 集英社文庫



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