酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年01月31日(火) 『私の遠藤くん』 吉村達也

 由美香は10歳年下の男の子と結婚し、「遠藤くん」ぞっこんラブな毎日を送っている。遠藤くんが仕事で不在の無聊を慰めようとテニススクールに行き、そこで知り合った女友だちに遠藤くんとのラブラブっぷりをのろけまくることが楽しみ。しかし、遠藤くんが同窓会に参加し、由美香の猜疑心は膨れ上がり・・・

 むー、なんだか背筋が寒い思いでしたなぁ。今、テレビドラマで『小早川伸木の恋』というのをやっていて、その主人公の妻が由美香タイプ。あそこまで執着すると相手を追い詰めるのみだってことにどうして気づかないのかしら。・・・結局は自分の事しか考えていないからなのだろうなぁ。まぁどんなトラウマがあろうとも遠藤くんも伸木も優しすぎます。考えられなーいx

『私の遠藤くん』 2005.10.25. 吉村達也 集英社文庫



2006年01月30日(月) 『貴族探偵エドワード 銀の瞳が映すもの』 椹野道流

 裕福な貴族の末っ子エドワードは、愛され甘やかされ育った。周囲の心配をものともせず、エドワードが選んだ職業は“探偵”だった。生まれたときからなついているシーヴァとともに、ハジメテの事件に出向き、トーヤというエキゾチックな少年と出会う・・・

 お忙しい椹野道流さまの新しいシリーズです。美少年で貴族で探偵。いやーまさしく椹野道流さんキャラ! 嬉しくなっちゃいました。今回は登場人物の顔見世興行って感じかしらん。私はシーヴァがお気に入り。これはボブまっしぐらでもないようでありますにゃぁ。

「心配じゃなきゃ、怒鳴ったりはしないだろう。どうでもいい奴なら、愛想良くして放っておくさ」

『貴族探偵エドワード 銀の瞳が映すもの』 2005.11.1 椹野道流 角川ビーンズ文庫



2006年01月29日(日) 『グイン・サーガ』71〜75

 リンダは双子の弟であり、パロの王であるレムスと対面し、レムスが邪悪なものに乗っ取られていることに気づき、幽閉されてしまう。ナリスはレムスに反乱を起こす。そしてヴァレリウスはグラチウスと手を組み大導師アグリッパと出会う! ヴァレリウス不在のナリスを補佐するのは、かつてイシュトヴァーンが大切に扱ったヨナのだった・・・

 うーん、すごい、すごすぎる。70巻まで怒涛の展開に驚かされ、75巻までで織り成されてきた人間模様の美しさに驚かされています。ただひたすらに「すごい」としか言えないのだもの。馬鹿みたいに。長い時をかけて語られてきた人物がここでこういうふうなキィマンとして登場してくるのネェと。いやはやそりゃ何十年もかかるって。当然の事ですv
 ここまで来てしまうと本当の骨格がわかってしまって、ナリス様とグインとイシュトヴァーンの3人の望むと望まざるとに関わらない国盗りがあって、そしてそれを凌駕する大きな宇宙規模な世界があって・・・。グインはおそらく超越するもので、ナリス様はそれに気づき憧れている。悲しいことにイシュトヴァーンが一番愚かな人間代表なのかもしれません。それに気づいたからイシュトヴァーンを愛しいと哀れと感じてしまう。ああ、栗本薫って残酷だよ・・・。

『グイン・サーガ71 嵐のルノリア』
『グイン・サーガ72 パロの苦悶』
『グイン・サーガ73 地上最大の魔道師』
『グイン・サーガ74 試練のルノリア』
『グイン・サーガ75 大導師アグリッパ』



2006年01月28日(土) 『グイン・サーガ』66〜70+外伝16

 リギアに伴われてスカールがナリスのもとへ参上、そしてかつて見たノスフェラスの秘密を告白。そしてグインはシルヴィアとオクタヴィア&マリウス&マリニア親子を連れ、ケイロニアに帰還。シルヴィアと結婚し、ケイロニア王となる。イシュトヴァーンは、傭兵時代の対モンゴール行為を告発され・・・

 いやはや怒涛の展開とはまさにこのこと! ナリス様、グイン、イシュトヴァーンの3人が軸だったのだとやっと理解できました(笑)。ナリス様にはリンダやスカールやヨナがいて、グインにはお荷物な(苦笑)シルヴィアやマリウスなどなど多くの信者がいて、イシュトヴァーンにはカメロン船長。なんと言うか、これを描きたくてここまで長々と引っ張ってこられたのねぇ・・・。ふぅ。付き合ってみてよかった。このまま現在の出版ブツまで追いつきたいものにございますv

『グイン・サーガ66 黒太子の秘密』
『グイン・サーガ67 風の挽歌』
『グイン・サーガ68 豹頭将軍の帰還』
『グイン・サーガ69 修羅』
『グイン・サーガ70 豹頭王の誕生』
『グイン・サーガ外伝16 蜃気楼の少女』



2006年01月27日(金) 『エンド・ゲーム 常野物語』 恩田陸

 母が旅先で昏睡状態になってしまった。時子は母・排島暎子が『あれ』と闘ったのだと思う。ひとりきりになった時子が辿り付く真実とは・・・

 『光の帝国』の「オセロ・ゲーム」で母を助け、能力に目覚めた時子の闘いが描かれます。行方不明になった父、意識が戻らない母。たったひとりで闘う時子が恩田陸ならではのキャラクターで嬉しくなってしまう。こういう広がりを見せ、こういう畳み方をするナンテ、陸ちゃんってばヤッパ怖いほどに素晴らしい。はぁ。

 なんと人の心は不思議なのだろう。

『エンド・ゲーム 常野物語』 2006.1.10. 恩田陸 集英社



2006年01月26日(木) DVD『真夜中の弥次さん喜多さん』

 弥次さん(♂)の恋人・喜多さん(♂)はヤク中。喜多さんは弥次さんに「オイラはリアルがわからねぇ」と甘える。喜多さんのリアルを求め、そしてヤク中を治そうと弥次さんは伊勢参りに行くことにする。ふたりの行く先々で待ち受ける珍事件、そしてふたりを待っていた本当のリアルとは・・・

 くど監こと(笑)宮藤官九郎の初監督作品は、彼ならではの感性とクドカンファミリィの個性あふるるものでありました。だいたい人気アイドルの長瀬くんにゲイの役をやらせるナンテ(しかもキスシーンいっぱい)それだけでただものじゃないと思いました。馬鹿と笑いがてんこもりで、そのくせ最後に見えるリアルがなかなかに苦しいもので・・・なんだか不思議だったなぁ。参加している人間みんなで楽しんで作ってる感がひしひしと伝わってきました。面白かった。クドカンはやっぱりすごいよぅ。



2006年01月25日(水) 『グイン・サーガ』外伝10〜15 栗本薫

 淫魔ユリウスにたぶらかされ、拉致されたシルヴィアとグインに会いたいばかりに災禍に巻き込まれたマリウスを助けるため、グインはグラチウスと戦った。無事ふたりを救い出すことができたグインはザザとウーラを従え、新しい戦友リー・リン・レンやシャオロンとの出会いを得ることが出来た。そしてグインは・・・

 やっとグインが愛しいシルヴィアちゃんを助け出しました。グインのパワーが欲しい魔道師グラチウスの執拗さは天晴れだったかも(笑)。新しい出会いもあったし、グインは戦いによって自分の味方を増やしていってるのですね。そしてやっと外伝から本編へ戻れる・・・のかな?(大笑)

『グイン・サーガ外伝10 幽霊島の戦士』
『グイン・サーガ外伝11 フェラーラの魔女』
『グイン・サーガ外伝12 魔王の国の戦士』
『グイン・サーガ外伝13 鬼面の塔』
『グイン・サーガ外伝14 夢魔の四つの扉』
『グイン・サーガ外伝15 ホータン最後の戦い』



2006年01月24日(火) 『ノスタルジア』 小池真理子

 繭子は46歳。ひっそりとひとり暮らしをしている。繭子は15年前に9年間付き合った男を看取った。あの9年間が繭子の全てだった。そんな繭子のもとに彼の息子から会いたいと連絡が届く。彼の息子は繭子と同じ年。いけないと思いながらも逢瀬を重ね、昔の様に惹かれていく繭子だったが・・・

 恋愛モノは得意ではなかったのですケレドモ、年を重ねたせいなのか、小池真理子さんなど特定の女流作家さんのものは読むようになりました。この恋愛モノもただの恋愛モノではなく・・・ラストがすごかった。こういうカタチの恋愛もありだと思いました。小池真理子さんのコノ路線を追いかけてみたいなぁと考えているくらいによかったです。

『ノスタルジア』 小池真理子 講談社文庫 



2006年01月23日(月) 『けものみち』 松本清張

 成沢民子は寝たきりの夫を抱え、割烹旅館で住み込みで働いていた。夫は若くして不随となり、民子への執着と欲望の獣と化していた。31歳女ざかりの民子は出口を求め、割烹旅館の客・小滝の誘いに乗り、夫を焼き殺し・・・

 この『けものみち』は今から40年くらい前の作品。なのに読んでみると現代でもきっちり通用するものでありました。やはり松本清張さんってすごい方だったのね。小説を読むと言うより、映像化されたものでしか接していなかったので、松本清張さんの作品を読んでみるのもいいかもしれないと感じました。
 さて、その映像化されたテレビドラマ『けものみち』を見て原作を読んでみた訳ですが、物語の骨格はそのままで、ドラマとしてはかなり今風のアレンジがなされています。小説では流されるヒロインでありましたケレドモ、ドラマではしたたかな物語を動かすパワーを持たせている感じ。なんにしても覚悟を決めた女はすごいものだわ。

『けものみち』上下 松本清張 新潮文庫



2006年01月22日(日) 『向日葵の咲かない夏』 道尾秀介

 小学4年生の夏休みの前の日、ミチオは休んだS君の家にプリントや宿題を届けに行くことになる。途中、悲惨な殺され方をした猫を発見。この手の犬猫殺しが多発しているが、自分が発見してしまうとは。そしてS君の家ではS君が自殺していた。しかも大人たちが出向いた時、S君の死体は消えていた・・・

 うー。本当にこれってすごい話なのかもしれない。合わない人は徹底的に毛嫌いしそうな世界。私はこういう歪んだ世界が嫌いじゃない。嫌いじゃないケレドモ、ものすごく空恐ろしい気がした。なんだか、なんと言っていいのか・・・。その歪み方にひたすら圧倒されていた。

「僕だけじゃない。誰だって、自分の物語の中にいるじゃないか。自分だけの物語の中に。そして、その物語はいつだって、何かを隠そうとしているし、何かを忘れようとしているじゃないか」

『向日葵の咲かない夏』 2005.11.20. 道尾秀介 新潮社



2006年01月21日(土) 『グイン・サーガ』61〜65

 イシュトヴァーンの国盗りは、図らずも壮大なものへなっていく。ナリスは、イシュトヴァーンとは別に自分の国盗りのためにリギアを草原のスカールのもとへ旅立たせる。レムス国王に反逆することに決めたナリスは、リギアにリンダにスカールに心情を吐露するのだった・・・

 タイトルロールの主人公グイン不在でどんどん物語りは進んでいます(笑)。イシュトヴァーンは戦場という己が一番生き生きとする場で剣を振り回し、己が夢をつかもうとし、身体が動かないナリス様は頭と周りの親衛隊の力に寄って夢をつかもうとしている。うーん、それぞれの浪漫。
 ただ、リンダがかわいそうだとハジメテ気づきました。まさかナリス様と結婚して尚、乙女のままだったなんて。ナリス様は相変わらず罪深いお方だこと。リギアは恋しい男と再会できて本当によかったね。それだけは救いだった。個人的にはスカール様がむちゃくちゃにタイプ。ああっ、そんな男が欲しい!

『グイン・サーガ61 赤い激流』
『グイン・サーガ62 ユラニア最後の日』
『グイン・サーガ63 時の潮』
『グイン・サーガ64 ゴーラの僣王』
『グイン・サーガ65 鷹とイリス』



2006年01月20日(金) 『ファニーフェイスの死』 林真理子

 1960年代、東京。モデルのゆい子と出会った恵子は、ゆい子と東京の魔力に溺れていく・・・。

 こういうひとつの華々しい時代があったのだなぁと映像が頭に浮かぶ。こんな毒々しい輝きを放った時代をリアルに見てみたいと思った。

「思い出話って、すればするほど命が削られていくみたい。たった今、そんな気がしたわ」

『ファニーフェイスの死』 2005.11.25. 林真理子 中公文庫



2006年01月19日(木) 『わくらば日記』 朱川湊人

 昭和30年代、ワッコちゃんは姉さまにくっついて生きていた。美しくて儚げで不思議な力を持つ姉さま。姉さまの名前は鈴音(りんね)。これはワッコちゃんが見た、ワッコちゃんが大好きな姉さま鈴音の力による不思議な数々の物語・・・

 んー、朱川湊人はどんどんと高みに昇って行かれている感じ。物語がますます透明感を増してきました。そして懐かしくも優しい。舞台は昭和32年。レトロな昭和。まだ生まれていなかったこの頃のことを、この話を読むと思い浮かべる事ができるのは何故なのかしら。
 ワッコちゃんが語り部となって姉さまの力で様々な事件に関わった様子が描かれています。これはシリーズ化しているようで、まだまだ続編があるみたいなので楽しみです。

「自分が信じられていることに、誇りを持ちなさい。信じられたからには、もう自分一人の体ではないのだと思いなさい」

『わくらば日記』 2005.12.25. 朱川湊人 角川書店 



2006年01月18日(水) 『ライト・グッドバイ』 東直己

 ススキノの馴染みのBAR<ケラー>で呑んでいた俺は、奇妙な客とすれ違った。中途半端な長髪で、妙にフケっぽい感じの中年男・・・。こんな奇妙な男と親友になれ、と昔馴染みのえらそーな退職刑事に頼まれた。奴が言うには、奇妙な男は殺人容疑者だと言うのだ・・・

 いやーっ(嬉)、いいですねー。東さんの<俺>シリーズは。にっこにこ。あいかわらず東さんは過激だケレドモ(苦笑)、北海道に根を張って、自分の立ち位置でしっかと戦ってることがわかるから大好きですv まぁほどほどにワルでかなりのエロなとこも隠し味と言うことで。今回の事件も今の世の中にありがちでフィクションフィクションしてないのですよねぇ。ため息。

「楽しかったんだろ、きっと。酒飲んで、バカ話するのが」

『ライト・グッドバイ』 2005.12.10. 東直己 早川書房



2006年01月17日(火) 『英雄先生』 東直己

 松江で高校教師をしている池田は、プロボクサーの夢を断念し、東京から戻ってきた。ボクシングを辞めたとされる噂から英雄先生などと呼ばれているが、実際は教え子のGカップ娘タマキに手をだしてやりまくっているようなオトコである。そんなふうにいい加減になんとなく日々を生きる池田が、タマキの友だちアケミが誘拐されたことで大きな事件に巻き込まれていく・・・!

 東直己さんが珍しく北海道ではない場所・松江を舞台に物語を展開させられました。でもちゃーんと大切な北海道での事件が大きなファクターとなって出てくるあたり、やっぱり北海道を愛する道産子作家さんでありました。いつも以上にエロイかもしれないくらいで失笑しました。ウフフ。
 こういう宗教がらみの事件というのは、他人事ではないのかもしれません。なにかを信じたいと願う人の心を弄ぶなんて許しがたいことですけど・・・。

 セックスとは、もちろん、単に射精だけのももではない。相手が、服を全部脱ぎ。その体を、こちらに全面的に委ねる、そういう特殊な出来事だ。相手を受け入れ。相手に差し出し、そして抱き合い、お互いの感触や、存在や、ニオイまでも経験する、特別な出来事だ。そして、性器の、あるいは体全体の快感。相手に対するいたわりと、感謝と、愛情・・・・・・あるいは親密感がこみ上げる、セックス。

『英雄先生』 2005.12.20. 東直己 角川書店



2006年01月16日(月) 『えんじ色心中』 真梨幸子

 なんと言うか、とてもデリケートな小説でした。そしていくつかのかなりキツメの辛口書評を拝見し・・・私はそこまでこの作品が悪くないと思っていることに気づきました。作者が仕掛けた罠も、悲しいラストも嫌いじゃない。だからって決して大好きだーvって言えるようなタイプのものではなくて。心にズーンって残るのですよね。悲しいなぁ、と言う感じ。ああ、せつないなぁ。

 人は、どうして生きるの。
 どうして、死んではいけないの。
 どうして、殺してはいけないの。
 生きる意味って。死ぬ意味って。殺す意味って。

『えんじ色心中』 2005.11.15. 真梨幸子 講談社



2006年01月15日(日) 『一週間のしごと』 永嶋恵美

 恭平は、拾い癖のある幼馴染・菜加に振り回されて生きていた。ある土曜日、渋谷に出かけた菜加は、あろうことか小さな男の子を拾ってきた! 誘拐罪に問われかねない菜加のため奔走する恭平と菜加の弟の克巳。ドタバタするうちに恭平の同級生・忍まで巻き込んでしまい・・・

 いやぁ、まさしくホロ苦い青春ミステリでありましたv 菜加の性格に問題はあるものの、恭平や克巳が振り回されてしまうだけの魅力がありました。こういう少し苦さの残る青春ミステリーってステキです。
 この本への感想を見てまわってて、タイトルの一週間がロシア民謡だと気づかされました。そうか。そうだよね〜。これに気づくと章タイトルの妙に唸ります。うむうむ。なるほどー。

「半分は当たってるけど、半分ははずれ。穴があいてるんじゃなくて、穴をあけてあるの」

『一週間のしごと』 2005.11.30. 永嶋恵美 東京創元社



2006年01月14日(土) 『グイン・サーガ』56〜60

 軍師アリに翻弄され、トンデモナイ伝説を残しかねない寸前のイシュトヴァーンは、思い立ってナリス様のもとへウマを走らせる。あの美しいひとと再会し、イシュトヴァーンは、魔道師ヴァレリウスのおかげでアリが影でやってきた罪の全てを知ることとなる・・・。思うようにならない身体を抱え、隠居するはずだったナリス様はイシュトヴァーンの登場で、ヴァレリウスと共にレムス国王に対し反逆の意志を固める。ナリス様とイシュトヴァーンの再会は、世界を大きく動かしてしまうのか・・・?

 うー、すごかった。すごかった。もう本当にここまで読んできてヨカッタと心から感謝してしまうくらい面白さ惜しげなく増量中! こういうふうに今までの謎や積み残した大風呂敷は納まるべき場所へ納まっていくものなのねぇ。世界を手にしようと暗躍するグラチウスと淫魔ユリウスがB級存在でありながら、なかなか好物となってきた。あんなふうな汚れ役は必要不可欠。グインは本編では名前だけがあちらこちらに登場。外伝ではユリウスにたぶらかされたシルヴィアちゃんとマリウスを探しまわっておいでだわよ(笑)。さてさてナリス様の寿命はいつ尽きる?(←死ぬと決め付けた)

『グイン・サーガ56 野望の序曲』(※天野喜孝さんのイラストよ、さらば)
『グイン・サーガ57 ヤーンの星の下に』
『グイン・サーガ58 運命のマルガ』
『グイン・サーガ59 覇王の道』
『グイン・サーガ60 ガルムの報酬』



2006年01月12日(木) 『砂漠』 伊坂幸太郎

 仙台の大学に入った北村は、鳥井・南・東堂・西嶋と知り合う。クールで熱くならない(なれない)北村、軽佻浮薄な鳥井、不思議な力を持っている南、美女で無愛想な東堂、・・・表現のしようのないブットビ男・西嶋。彼ら5人は自分が何者であるかわからない不安定な砂漠のオアシスのような時代を駆け抜ける。そして彼らは、社会という砂漠に旅立って行く・・・

 んー、かなぁ〜り自分的に解釈して書いちゃいました(笑)。これね、いいんですよ。伊坂幸太郎さんが「いい」ことなんて周知なのですケレドモ、それでもコノ砂漠は「いいっ!」と声を大にして言いたいの。もう最後のほうは泣きましたもん。本を読んで初泣きですよー。感動で。妙な5人が運命のように出会い、さまざまな出来事を体験しながら4年間を過ごす・・・ああ、青春って素晴らしい。きらきらっ。こういう若者達がいてくれるならば、日本はだいじょうぶ。現実にいてくれるのかなぁ・・・(不安)。西嶋くんは最強キャラでした。こんな奴に惚れる女がまたスゴイ。

「北村だったら、絶対やらないでしょ、悔しくても」
「そもそも、悔しく思わないだろうね。ボウリングの点数が悪くても、別に気にしない」
「わたしもそう。でも、じゃあ、何のことなら必死にやるのか、って思わない? 結局さ、いざという時にはやる、なんて豪語している人は、いざという時が来てもやらない」

『砂漠』 2005.12.15. 伊坂幸太郎 実業之書日本社



2006年01月11日(水) 『みずうみ』 よしもとばなな

 窓から顔を出して知り合った(笑)中島くんと一緒に暮らすようになったちひろ。母を失ったばかりのちひろと心に傷と闇を抱える中島くんは、すこしずつ丁寧に時間をかけてかけがえのない存在となっていく・・・

 うわー、これぞ吉本ばななって感じだ〜と感動してたら、違和感が。え、ばななさんはいつからよしもとばななに変化しちゃったんだろう(知らない)。村上春樹とか吉本ばなななんてのは最初は食わずギライだったものだケレドモ、読んでみたらすごかった、すみません、ごめんなさい、私が悪うございましたって感じですね(笑)。久しぶりのばなな節はせつなくて深くて透明で、やられたなぁ。そして相変わらず登場するヒロインが底なしにセックスが好きらしく、共感しつつおおいに笑えました。なんて素直な人なんだv>ばななさん

「今日は、昔よくないことがあった日みたいで、なんだか落ち着かないんだ。僕の頭と体は妙に記憶力がよくて、いやな記念日には絶対に調子がおかしくなるんだ。」

『みずうみ』 2005.12.8. よしもとばなな フォイル



2006年01月10日(火) 『女郎蜘蛛 伊集院大介と幻の友禅』 栗本薫

 銀座で伊集院大介はタイムスリップしたかの思いに囚われた。和服を着た艶やかな美女が杖をつきながら歩いていく姿に惑わされ、ストーカーのように思わず彼女の後を追いかけてしまった。その和服美女から彼女の母にまつわる《幻の友禅》の行方を調べて欲しいと依頼され、大介は魔界都市京都へ向う。名探偵が事件を呼ぶのか。名探偵がそこにいるから事件が起こるのか・・・?

 んー、久々の伊集院さんとの遭遇って感じでそれだけで(それでいいのか)トッテモ嬉しかったですv 今現在、栗本薫さんのライフワーク『グイン・サーガ』を読みすすめている最中で、その“あとがき”から栗本薫さんの様々なことを知りました。私は伊集院大介との出会い=栗本薫との出会いみたいなもので(『魔界水滸伝』は過去に途中で(出版のインターバルの長さにイラついて)放り出した経験があった)このグインを書いている時に伊集院さんは産声をあげていたのですねぇ。しみじみ。伊集院大介シリーズは、ライバル・シリウスとの対決が一番読み応えあるのですケレドモ・・・会えないより会えたほうがいいから、って感じ(笑)。
 今回は妖艶な毒婦(妖婦)が現れて、スタートから伊集院さんは惑わされっぱなし。まるで映像を見ているような心持で読みました。そう言えばどうしてドラマ化とかされないのかしら。栗本さん御自身がやりたいから? 

『女郎蜘蛛 伊集院大介と幻の友禅』 2005.12.20. 栗本薫講談社



2006年01月09日(月) 『グイン・サーガ』51〜55 栗本薫

 ナリスを慕う学生達の暴走の果てに、反逆罪として囚われ、拷問を受けたアルド・ナリス。解放されたナリスを待っていたのは怪我による命の危険を回避するための残酷な処置を施される。回復に向うナリスはレムスに宰相の位をヴァレリウスに譲る事を直訴し、公の場から姿を消すと共にヴァレリウスを傀儡として暗躍することに・・・。一方、イシュトヴァーンはアリの張り巡らした陰謀に踊らされ、クムとユラニアの婚礼の場で血の嵐を降らせるのだが・・・。

 ・・・ナリス様がトンデモナイ目に遭うことはチラリと聞いていたのですケレドモ、まさかこんなことになるなんて(驚愕)。美しすぎるナリス様にはあまりにも過酷。でもどうも本人はそれはそれとして嘆く事もなく、淡々と前向きなのでナリス様らしいと言うか、そこがまた恐ろしいと言うか。どうなってしまうのかしら。ナリス様はグインの最後まにはいないのでしょうねぇ(想像)。イシュトヴァーンは相変わらず単純明快で、まぁカメロン船長が側にいてくれればヨシでしょうか。カメロン船長の活躍で《煙とパイプ亭》の面々が救われて本当に良かったv

『グイン・サーガ51 ドールの時代』
『グイン・サーガ52 異形の明日』
『グイン・サーガ53 ガルムの標的』
『グイン・サーガ54 紅玉宮の惨劇』
『グイン・サーガ55 ゴーラの一番長い日』



2006年01月06日(金) 『港町食堂』 奥田英朗

 奥田英朗さんの抱腹絶倒旅エッセイです(嬉)v エッセイって人柄がそのまんま出ちゃうので、今まで面白いと思ったのは浅田次郎さんくらいじゃないかしらん。しかーし、さすがは奥田英朗さんであります。文句なく面白くって本で初笑いしちゃいました〜。テンポがいいし、言葉の操り方がむちゃくちゃフィットするのよねぇ。船上で嬉しさのあまりダンスしてみたり、ムカデにさされて診て貰った女医さんに恋したり、スナックの美人ママに叱られたいと願ったり。やっぱり奥田節はたまりまへんなぁ。笑えますv

 つまんねえ人生。面白いのは文章だけだ(自己申告)。

『港町食堂』 2005.11.20. 奥田英朗 新潮社

 



2006年01月05日(木) 『グイン・サーガ』46〜50 栗本薫

 グインに捨てられ、傷心のままモンゴールへ戻ったイシュトヴァーンは、ヴァラキアを捨て自分のためだけにやってきたカメロンの存在に心を癒される。そしてアムネリスとの婚約を決意する。一方、パロではナリスとリンダは幸せの絶頂。ナリスは国王レムスの嫉妬による不遇も気にせず、リンダを伴い学生の街アムブラで若人たちとの交流を楽しんでいた。しかし、若く真っ直ぐな学生達はレムスの悪政を批判し、ナリスを「ナリス陛下万歳!」と騒ぎ出し、そのことにより反逆罪としてナリスは幽閉されてしまう。レムスに憑いていた悪霊カル・モルと関係のあるらしき魔僧カル・ファンによってナリスは・・・

 んー、とうとう50巻まで読破いたしました! いやぁなんと言うか、ちょっとばかし感無量(笑)v この妖しく壮大な物語にすっかり馴染んでしまいました。栗本薫さんが繰り返し描く《恵まれすぎた人間の孤独》は、この物語にも大きく現れています。中でも一番の宇宙人の孤独はナリス様なのかもしれないですねぇ。ずば抜けた頭脳で全てを見渡してしまう。それを理解してもらえない孤独。またそんなナリス様に魅入られてしまった哀れな魔道師ヴァレリウス・・・。ナリス様も性格悪いからなぁ・・・。

『グイン・サーガ46 闇の中の怨霊』
『グイン・サーガ47 アムネリスの婚約』
『グイン・サーガ48 美しき捕囚』
『グイン・サーガ49 緋の陥穽』
『グイン・サーガ50 闇の微笑』



2006年01月04日(水) 『グイン・サーガ』40〜45 栗本薫

 イシュトヴァーンとグインは戦場で再会し、グインはかつてイシュトヴァーンの頼みを断り去ってしまったことを詫びる。拗ねていた心が溶け、素直に喜び再会を楽しむイシュトヴァーンだったのだが、グインはシルヴィアを探すためにイシュトヴァーンに言葉もかえないでまたもや捨て去ってしまう。二度までもグインに去られたイシュトヴァーンの心は前回よりも深く傷ついてしまう。醜く自分に妄想を持っている参謀アリを疎ましく思いながらも今のイシュトヴァーンにはアリしかいないのだった・・・

 なんだかねぇ・・・罪作りなグインはイシュトヴァーンの前からも読者の前からもまたもや消えてしまいましたよー。トホホ。あんな見掛け倒しの男にいいようにされちゃったシルヴィアちゃんをどうしてそこまで追い求めるのかしらん。そして哀れなイシュトヴァーンは満たされない孤独感でいっぱいでトッテモ可哀想です。こういう星の下に生まれた男って栗本さんの好きなタイプよねぇ。容姿とか才能とかに恵まれているのに満たされないって感じ。だんだん母性がイシュトヴァーン擁護的に走り出したようです。危ない傾向だわ(笑)。

『グイン・サーガ40 アムネリアの罠』
『グイン・サーガ41 獅子の星座』
『グイン・サーガ42 カレーヌの邂逅』
『グイン・サーガ43 エルザイムの戦い』
『グイン・サーガ44 炎のアルセイス』
『グイン・サーガ45 ユラニアの少年』



2006年01月03日(火) 『死後結婚』 岩井志麻子

 京雨子は、尚一との付き合いに倦み、別れたいがために見合いをし、慶彦と付き合うようになった。結婚を前提に付き合いが始まり、京雨子は落ち着き始めるのだが、慶彦の付き合いの関係で知り合った沙羅という不思議な素敵な女性に惹かれる。沙羅の内縁の夫が自殺をし、沙羅が死後結婚をすると言うので韓国へ同行することのなる。韓国では、死者と生者との婚姻の儀式があると言う・・・

 2005年の大晦日に読んだ志麻子ねぇさんのナカナカな物語です。岩井志麻子さんの作品は個人的には激しく当たりと外れがあるのですケレドモ、これはいいなぁと思いました。ずば抜けて素晴らしいとまでは言えないにしても、志麻子ねぇさんコノ路線グーですよって感じでしょうか。生と死が入り乱れる感じはうまいと思いました。持ち味のエロさはしっかり健在ですしねv

「意外ね。好き嫌いなさそうなのに」
「男と食べ物は、偏食が激しいの」
「あら、気が合うわ。私もよ」

『死後結婚』 2005.12.31. 岩井志麻子 徳間書店



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