酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2005年03月31日(木) 『骨肉』 明野照葉

 稲本家三姉妹、真子・聖美・美善はそう仲もよくない。母を亡くし、男やもめの父から招集がかかった。嫁いで専業主婦になっている真子、独立して仕事を生きがいにしている聖美、父のもとで気楽にOLしている美善。そんな三人に父は「新しい妹」を紹介した。いまどきのギャルの阿子は、いきなり結託した三姉妹の追い出し攻撃を浴びるのだが・・・

 明野照葉さんがこういう路線をポンって差し出されるとは意外な気がしましたが、読んでいるうちに明野さんらしいなぁとトッテモ面白かったです。タイトルの『骨肉』は骨肉の争いから来ているのだと思います。仲の悪い三姉妹が財産の分け前が減ってしまう事に目の色を変えて、まだ子供の阿子に徹底的に立ち向かう。読んでいて滑稽で、ある意味ホラーで人間って怖いなぁって感じます。ぞぞぞぞぞ。表紙のイラストの目と開きのイラスト目が内容をうまーくあらわしていることにも感心しました。

 しかし、自らの死を前にしてみれば、それらすべてが意味を失っていく。あの世には、何も持っていけませんから。

『骨肉』 2005.3.25. 明野照葉 中央公論社



2005年03月30日(水) 『夜明けまで1マイル』 村山由佳

 大学生の僕は、ゲロ吐き失態のおかげ(?)で憧れのマリコ先生と男と女の関係になる。美人でクールで、そして結婚しているマリコ先生。僕は全身全霊でマリコ先生に恋をする。バンドにバイトに大学生活にマリコ先生。僕の青春。
 これはフリンなんかじゃない、恋だ。

 最近マイ文庫ブームが村山由佳さん。通勤のお供に心をホロリと揺らめかせながら、さらりと読むのがお気に入りv この大学生の一途な恋が胸にキュキュキューンって響いてくるのよ。素敵素敵。マリコ先生のことをもっと知りたかった気はしますが、若者に視点を合わせたということで気持ちよく読了。

 世の中には、いくら牙をむいて立ち向かっていってもどうにもならないことがある。そんな時には、じっと体を丸めて嵐が過ぎるのを待つ以外に手はない。けれど、どれほど深く傷ついたとしても、時がたてばいつかその傷は癒える。長くかかるかもしれないが、時が癒せない傷はない。

『夜明けまで1マイル』 2005.1.25. 村山由佳 集英社文庫



2005年03月24日(木) 『決めかねて』 新津きよみ

 悩みを抱えた三人の女。子供を産む産まないで夫ともめている志奈子。ばりばりキャリア驀進中の智美はプロポーズに戸惑う。不倫にけじめをつけられない佳代子。悩みに答えを出したいと有名な占い師に頼った三人が出会い、三人の悩みが動き、意外な結末へ・・・

 30代半ばの女たちが、悩んで有名占い師のもとへ赴く。これが痛々しいオープニングで・・・。悩みや迷いは占いにも他人にも解決などできやしない。自分の悩みも迷いも自分で折り合うしかないのだと思います。傷ついても苦しんでも自分の力を信じない人のいつまでたっても未来は霧の中。

 誰に相談しようと、最後は自分の判断。決めるのは自分自身。

『決めかねて』 2003.10.30. 新津きよみ 詳伝社文庫



2005年03月23日(水) 『秘密のクラブへようこそ!』 椹野道流

 由緒正しい名門私立英聖高校。この高校にはE組という特別クラスがある。一芸に秀でたものが学費等を免除されるが、将来的に英聖高校の広告塔たる実績をあげなければならない。そこへ「笑顔」を武器に入学してきた白瀬真透(ますき)は、見たものを惑わす笑顔を放つ。アーチェリーでE組に入った藤堂要平は、真透になつかれ、振り回される。しかし、このふたりには出会うべくして出会った宿命の絆があった・・・?

 椹野道流さんの初めての学園モノということで、どんな展開になるのかなぁ〜と思っていたら、こう来ましたか(笑)v この学園の秘密に生徒ながら立ち向かう事になるなんて、やっぱり椹野道流さんだぁ〜。当然敵はこの世のものならぬ魔物です。椹野道流さんはこうでなくちゃー。

『秘密のクラブへようこそ!』 2005.2.1. 椹野道流 小学館



2005年03月22日(火) ドラマ『救命病棟24時』に想ふ

 新潟で地震。そして今回は福岡で地震。この東京を襲った地震を想定した救命病棟の医師や看護士やボランティアたちの[希望]を失わない姿に何度も何でも泣かされました。現実に起こったとすれば、きっとこのドラマよりも過酷で厳しいものとなるに違いありません。でも地震の国・日本に生きている限り避けては通れないテーマだったと思います。この物語を想定し、放映したフジテレビに心からの敬意を。
 今回のシリーズは極限状態に置ける人間達の苦悩、そしてそれでも希望を忘れない・あきらめないことの大切さを心に刻み付けてくれます。かつて地獄を見たDr.進藤の慈悲深く優しい笑顔にめろんめろん。こんな男がいたら私は全てを捧げますっ。却下されてもストーキングしますっ!! あんな男いたら、あぁぁっ(身悶え)。でもファンサイトを見てみると、なんとDr.進藤をさしおいて大泉洋さん演じる看護士・佐倉さんがダントツ人気だったのでちょっと驚きました。え・・・(笑)。私はDr.進藤に身も心も捧げますからっ(ってしつこい?)
 救命病棟の研修医のその弟(小栗旬)が、これがよいのじゃー。ちょっとオバサン入りまくっちゃう。最初出てきたときには出来のいいお兄ちゃんへのコンプレックスの塊だった少年が、ボランティアをすることになり、肉体労働・ヨゴレ仕事を率先してこなすようになる。医師達の姿を目の当たりにした彼は、数年後研修医として救命病棟に戻ってくる・・・この彼の成長が素晴らしくって。ええ、Dr.進藤の次を狙うならカレv うふ。
 ・・・すみません。書いていてどんどん崩れてしまいました。えへへ。まじめな文章は書き続けることできないやー。あーん、進藤先生が欲しいよー(煩悩の塊)



2005年03月21日(月) 『となり町戦争』 三崎亜紀

 舞坂町に住む北原修路はイキナリはじまったとなり町との戦争勃発を[広報まいさか]で知る。広報で死者が出たことに驚くが、自分が知る戦争の気配は感じない。ある日、舞坂町からの通知で「戦時特別偵察業務従事者の任命」を受ける。役場職員の香西さんと偽装結婚をして、となり町に住み始め・・・

 ‘見えない戦争’・・・闘う時間も決められていて、目的は互いの町の活性化? なんだかとっても不思議な物語でした。淡々と僕の視点から‘戦争’が語られ、疑問を感じ、唐突に始まり、唐突に終る。戦争ってなんなのでしょうね。

 戦争ってのは・・・・・・、戦争ってのはこうやって僕からいろんな感情を奪っていくものなのか。

『となり町戦争』 2005.1.10. 三崎亜紀 集英社



2005年03月20日(日) 『れんげ野原のまんなかで』 森谷明子

 なんだって、こんな人気もないところに図書館など、建てたのだ?・・・なんて場所に秋庭市立秋葉図書館は建っている。気のいい大地主・秋葉のだんなのおかげだ。ここで文子は働いている。本を愛してやまない野瀬さんと日野さんにビシバシ鍛えられながら、なぜだか妙な謎に巻き込まれながら・・・

 『千年の黙 異本源氏物語』で第13回鮎川哲也賞を受賞した期待の新鋭が放つ、本好き、図書館好きに捧げる受賞第1作!と言う惹句に間違いはなく、本好きさんたちの心をぎゅぎゅっと鷲づかみv 読みながら北村薫さんを思いましたよ。なんとく通じる空気があると思うのですけど。小さな不思議な謎たちは、読んでる本好きさんたちも謎解きできる範囲のものばかりだし。図書館に住んでみたい思いは痛いほどわかります。うう、まじ住みたいー。館内整理くらいするからぁ(笑)。

 共通の愛読書があるとわかると、人間、ずっと親密さが増す。

『れんげ野原のまんなかで』 2005.2.28. 森谷明子 東京創元社



2005年03月19日(土) 『ベイビー・セメタリー』 和田はつ子

 水谷あすかは可愛いハーフの双子を持つシングルマザー。かつて父親が母を捨て、駆け落ちした女と再婚し、その継母となった女に姉さやかともども苛められたトラウマを持つ。姉さやかは継母におもねる術を持っていたが、あすかは耐え切れず、イギリスへ。そこで出会った男と恋をし、可愛い双子を授かるが、その男の本性を知り、日本へ逃げ帰る。ハーフの双子の愛らしさに継母はペット感覚で猫かわいがりを始める。あすかは距離を置き、恋人と娘達との生活を夢見るのだが、あすかが身ごもったとき、悲劇がふたたび始まった・・・

 うーん、和田はつ子さんは好きなんです。とってもうまいと思うし、独特の世界をお持ちなので。この『ベイビー・セメタリー』も要素は面白いものばかりなのだけど、詰め込みすぎと言う感じが。身ごもった子供の不気味な力を描きたいのか、あすかを羨み妬む女たちのドロドロさを描きたいのか、あすかを巡る男達のおぞましさを描きたいのか・・・。ひとつひとつを分けてしまって描きこんで欲しかったです。中でも、あすかに対する継母・姉・親友の屈折した僻みは怖いですよー。こういう文庫は待ち合わせなどでサラッと読めるよさがありますが、どうしたって性癖上(?)やはりもう少しヘビィな方が好みなのでした。

『ベイビー・セメタリー』 2005.1.10. 和田はつ子 角川ホラー文庫



2005年03月18日(金) 『かけら』 新津きよみ

 キャリアウーマンの理恵、主婦読モの涼子、主婦業専念の紀子。三人は遠い昔に同じアイドルを追っかけていた。そんな三人も38歳。理恵は友人の失踪事件に巻き込まれ、涼子はストーカーに付け狙われ、紀子は買い物依存症に・・・。

 それぞれの人生に満足しきれず、その心の隙間を狙われたように事件に巻き込まれてしまう三人の女たち。その昔に袖すりあった三人だけど、絡み合うことなくそれぞれの事件や出来事に折り合いをつけていく。新津きよみさんってこういう展開をサラリと読ませてくださるので好きです。私は主婦業に専念できる立場ではないけれど(残念ながら)、なぜだか紀子の心の隙間が一番手にとるようにわかっちゃった。その程度で済んでよかったね、紀子。

『かけら』 2005.2.20. 新津きよみ 詳伝社文庫



2005年03月17日(木) 韓国ドラマ『向日葵』 ※ネタバレあります

 ビル地下駐車場で働く娘は、父親の家庭内暴力というトラウマを持つ。推理小説をパソコンで発表する事を趣味としている。彼女は時々妙な視線を感じる。同じビルの高級日本料亭の板前と知り合い、惹かれながらも拒絶する。しかしストーカーの異常な行動に耐えかね、その彼を巻き込み闘おうとするのだが・・・

 えーっと登場人物の名前をもう忘れました。ごめんなさい。イ・ビョンホンが多重人格ストーカーと言う役に挑んでおられますv 「純愛中毒」でも愛する女に妙な接近をしたイ・ビョンホンさま、今回もキッパリ異常です(笑)v 残念ながらヘビィなサイコスリラー好きとしては、ラストが気に入りませーん! もっと残酷に非道にぐろくっ!! でもドラマのスペシャル番組としては面白いかな。
 韓国はネット人口がものすごく高いそうで、パソコンで小説発表、チャットなどは日本より進んでいたのかもしれませんねー。チャットでの異常な会話、盗撮、不法侵入などなど、そのシーンを演じているイ・ビョンホンさまを観たかったなー。残念っ。ヒロインの友人を排除するシーンだけはゾクリとしたかも。



2005年03月16日(水) 『インディゴの夜』 加藤実秋

 高原晶、三十路の女性ライター。「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」この晶から漏れた願望を大手出版社編集者・塩谷が叶えてしまう。伝説のホスト憂夜が敏腕マネージャーとなりホストクラブ<club indigo>が渋谷で大ブレイク。やんちゃで奇妙なホストたちとともにオーナーとなってしまった晶はいくつもの事件に巻き込まれ・・・

 池袋が渋谷に移動して、チーマーたちがホストやナンパ師に代わった・・・と言ってしまえば身も蓋も無いけれど、ちょっと池袋WGPの亜流って感じはしました(笑)。でも、なんだか楽しい展開ですごーくわくわくしながら読めました。誰よりもやんちゃな晶が年甲斐も無くてキュート。こういうのを登場人物が勝手に動き出した物語といえるのかもしれませんね。オススメでーすv

 言葉は、残酷なほど書き手のセンスや感覚の新旧を映す。

『インディゴの夜』 2005.2.28. 加藤実秋 東京創元社



2005年03月15日(火) 『銀座小悪魔日記 元銀座ホステスの過激すぎる私生活』 蝶々

 やー、すっかりやられました〜(パタリ)。蝶々さんの本は顔とかを晒しちゃった新しいものを一冊読んでいたのですが、これぞ元祖・蝶々節なのですね。これは期間限定WEB日記だったそうで、もともと本として出版されるなど思われず、自由奔放に書かれているところがとってもとっても面白い! ここまで面白いWEB日記をリアルタイムで読めなかったことが残念だわ。くそー。
 とにかく美しい人ならではの我侭さ・傲慢さのオンパレード。でもどこか憎めない可愛らしさがある。こういう人ってそこにいるだけでオーラを放ち、人を惹きつけてやまないんだろうと思います。たまたまWEB日記を書いたことが世に出るきっかけとなられた形ですが、この女性は遅かれ早かれ露出せざるを得ないタイプだと思いますね。きっと男も女も彼女の前では腑抜けになってしまう。素晴らしい。
 あ、最後にこれも誉めておかねば。文章がうまいっ。こんな文章をWEB日記でがしがし書いていたなんて・・・うっひゃー。

『銀座小悪魔日記 元銀座ホステスの過激すぎる私生活』 2002.8.17. 蝶々 宙出版



2005年03月14日(月) 『LOOSER〜失い続けてしまうアルバム〜』 TEAM-NACS

 TEAM-NACSさんが描いた新選組は、今まで見てきた、読んできた新選組とは全く違う角度から描かれていました。NHKで三谷幸喜さんの新選組もよかったけれど、この舞台の解釈はかなり意表をつきます。
 まずはたった5人でさまざまな登場人物を演じます。ひとりの青年が現代と幕末を行き来し、そのたびに視点が変わります。現代の青年が幕末の登場人物に成り代わってしまうという点は矛盾と指摘されるも仕方ないけれど、オモシロイ演出だと思いました。中でも大泉洋さん演じる坂本龍馬の秘密には唖然としました。そこが一番リーダーの森崎さんの才能をひしひしと感じました。
 個人的な好みから言えば、安田顕さん演じる芹沢鴨が素晴らしかったっ! 赤フンがあんなに似合う男がこの世に存在するだろうか? いや、しない。ヤスケンさん最高v 残念ながらヤスケンさんに関しては芹沢鴨の場面があまりにも強烈で後半が物足りなかった。あのヤスケンさんの芹沢鴨がメインの舞台を観たいくらい惚れ惚れしたのでありました。
 何度も繰り返し観てしまう、そんな舞台なのでありました。超オススメv



2005年03月13日(日) 『弘海 息子が海に還る朝』 市川拓司

 息子の身体に異変が起こり、彼は水の中にいることを安らぎとする。彼をしあわせにしてやりたい一途な愛情で、両親と妹は息子・弘海の決断を受け入れる・・・

 やっぱり、すっごい綺麗な文章です。こういう自分だけの文章を描ける人って幸せだろうな。誰のモノでもない市川さんならではの透明で優しくてせつない文章。この人の持ち味は、家族の絆と愛情を丁寧に描ききり、しかもSF風味が効いているところだろうなぁと思いました。そしてそこには必ず哀しい『別れ』があって・・・泣かされます。ううう。家族、きょうだい、友達・・・人にはどんな絆からも旅立たねばならぬ時が来るのね。いいですわー、市川さん。大好きv

 ぼくには責任がある。彼を幸せに。それがぼくら夫婦にとっては悲しみであっても。

『弘海 息子が海に還る朝』 2005.2.28. 市川拓司 朝日新聞社



2005年03月12日(土) 『天使の梯子』 村山由佳

 夏姫は、教え子と再会し付き合うようになる。彼は8歳年下の男の子・慎一。亡くなった姉・春妃が愛した歩太と同じ年の差だった。慎一は、夏姫と歩太の絆に嫉妬し、苦しみ、そして・・・

 歩太は私だ。歩太の気持ちが痛いくらいに手に取るようにわかってしまう。そして夏姫のような存在がいる。愛する人を亡くした人間は、遺された人間は、その喪失感と戦いながら生きねばならない。先に逝ってしまった人のぶにまで生き続けなければならないのだ。生きることは苦しい事、哀しい事の連続。だから自分の好きな事や幸せだと感じる事を慈しむように大切にする。それはきっと本能。
 泣きました。なんだか最近こういう愛する人を失った人の物語をよく読んでいる気がします。読めるようになっただけ、時間が経ったということなのかもしれないわ。失わずに生きることは不可能。失って、それでも笑顔を忘れずに生きていきたい、そう心から感じさせてくれる物語でありました。すがすがしい。

「後ろばっかりふり返らないで、いいかげんに前を見たほうがいいとか何とか −
ボクみたいなのがまわりからいろいろ言うのは勝手だケレドモ、そんなに簡単にいくものじゃあないしネ」
「結局、忘れるというのは本人にしかできないことダカラ」

『天使の梯子』 2004.10.31. 村山由佳 集英社



2005年03月11日(金) 『天使の卵』 村上由佳

 歩太は19歳の予備校生。目指すは美大。ある日、満員電車で出会った女性に心惹かれる。その彼女は8歳年上の精神科医で歩太の父親の担当医だった。彼女に焦がれ、彼女を手に入れた歩太だったが・・・

 一途に人を恋しいと想う。そんな気持ちは人生で何度抱けるものなのかしら。愛して手に入れて永遠に失ってしまう。なんだか自分の人生をそこに見るようで胸がきしきし痛かったわ。それでも愛した事を悔やみはしない。愛こそすべて、そう心から思い続けたい。

 どれほど大切にしても、どれほど愛しても、結局「死」には追いつけない。そのことが僕にはもう、いやになるほどわかっていた。死を悼み、悲しむのは、遺された者だけだ。どれだけ涙を流しても、死者には届かない。逝ってしまった者と遺された者とは、永遠に分かたれたままなのだ。「死」というその一瞬を境にして、その先は − 未来永劫。

『天使の卵』 村上由佳 集英社文庫



2005年03月10日(木) 『LOVER』 TEAM-NACS

 TEAM-NACSさんの舞台『LOVER』を観ました。今回はアノ5人と女の人たち(ひとり?)が合コンをして、さまざまな恋愛模様を繰り広げると言うもの。5つのカップルが出来れば5つの形があって、なんだか胸がキュンとしたり、せつなくなったり。中でも今回主役だったらしい大泉洋さんの「愛してる」と言う台詞では涙がぽろり。あぁ、青春だー!
 大泉洋さんが気になって、TEAM-NACSさんの舞台を観るようになりました。しかし、このTEAM-NACSさんの5人ってキャラが濃いですわー。大人気なのもよーくわかるv 私は顔の濃い裸キャラのあの方が気になって・・・。あの顔と声はタイプなのう〜。
 



2005年03月09日(水) 『湘南人肉医』 大石圭

 「神の手」と言われる整形外科医・小鳥田優児。巨漢の彼が手がけた女性は彼を神と崇めるほど美しく変身する。そし小鳥田の喜びは女性の肉を食べる事だった!

 リアルの世界でも世界に名を残す、モンスターがいます。連続猟奇殺人者。人肉嗜好者。そういうモンスターのことを知りたいと言う欲求が私の中にはある・・・。だから、こういう物語は興味深い。善悪は置いておいてね。
 人の肉を食べたい。そんな願望を抱き、囚われてしまう男。禁断の味だからこそのエクスタシー。彼を待ち受けるラストはちょっと弱いと言うか、ありがちだけど、じゅうぶんにグロい物語でした。

『湘南人肉医』 2004.11.10. 大石圭 角川ホラー文庫



2005年03月08日(火) 『クリスマスの4人』 井上夢人

 1970年ビートルズが死んだ。その年の聖夜に4人の男女が飛び出してきた男を撥ね殺してしまう。そして10年ごとに集まる4人の前に現れる死んだはずのあの男。恐れ慄きながら30年の時を過ごした4人を待っていた真実とは・・・

 すごーい。井上夢人さんってホントすごい。まさかこの展開であんな結末になってしまうとはー。降って沸いたような男を跳ねてしまった男女4人は事件を隠す事にする。人を殺した恐怖と発覚の恐れ。集まるたびに現れる死んだはずの男。もうこれはホラーです。でもホラーでは終らせない。おそるべし、井上夢人。

 時間が経てば忘れてしまうだろうって、それを期待していたけど、忘れることなんてできなかった。ずっと負債を抱えて生きてきたんだもの。だから、覚悟はできてる。どんなことを聞いても、受け入れられると思う。

『クリスマスの4人』 2004.12.20. 井上夢人 光文社文庫



2005年03月07日(月) 『漢方小説』 中島たい子

 昔つきあっていた人から結婚すると言う事を聞かされ、体調を崩した31歳みのり。セルフ・ロデオマシーンとなり、突如として身体が暴れ出す・・・。4人の医者にかかったが悪化するばかり。実家の最寄にある漢方診療所で診察してくれた5人目のドクターはちょっといい男で・・・

 心に傷を負って身体に異変。本当にあることですものね。薬に頼るも漢方に頼るもヨシですよー。自分で自分をラクにしてあげる手段はきちんと捜すべきだと私は信じていますからv
 この物語では西洋医学に見放された女性が漢方(東洋医学)に癒され、再生されていきます。ちょっとだけときめいたり、呑み仲間うちでドタバタしたり、ごく自然に生きている人たちの人生がほのぼのといい気分を与えてくれます。こういうお話はとても好き。

 どんな深さも、変化も、恐れず受けとめられる自分になれたらと思う。

『漢方小説』 2005.1.10. 中島たい子 集英社



2005年03月06日(日) 舞台『ミハル』 TEAM-NACS

 ホテルの一室で向いのホテルを見張る(ここからか!)刑事ふたり。敏腕刑事の安藤と後輩の岡田。そこにベルボーイの小宮がルームサービスの伺いにやって来て、ブリーフ姿のAV男優キノコ山本が間違って入ってきて、コスプレの作家・長峰が逃げ込んでくる・・・

 いやー、面白かったです。TEAM-NACSの舞台。大泉洋さんが気になっていると日記で書いたら、友人がDVDを送ってくださったのです。もう心から感謝。しかし、この舞台に関して言えば私はキノコ山本に釘付け!(大笑) なんて言うか間の取り方とか、妙な動きとかすっごいツボでありました。
 舞台の内容としては非常にうまく出来ていて期待以上でした。ベルボーイ役の佐藤さんの作らしいですが、オチや突込みに素直に笑えました。ただ残念なことはシリアスとコメディとどちらをもと欲張り過ぎではないか、という点。いっそのことブラック・コメディに重きを置いてもじゅうぶんよかったのではないかしら。
 とにかく大満足。今、大注目のTEAM-NACSなのでありますっ!←鼻息荒い



2005年03月05日(土) 『恋愛寫眞  もうひとつの物語』 市川拓司

 大学生の誠人(まこと)は成長を止めてしまったような少女・静流と出会う。背が低く、おそろしく華奢な身体なのだ。不思議な彼女をファインダー越しに捕らえる。それがふたりの始まりだった・・・

 WOWOWのドラマとしての恋愛寫眞 と今回の物語は似ているようで全く違う物語となっていました。市川拓司さんはこれで2冊目ですが、市川節って出来上がっているのですね。静かで優しい言葉のやりとりは絶妙。哀しい哀しい出会いと別れも健在。でも心に残るものは優しさだったりする・・・不思議な世界を創りだす人で目が離せないわ。

 別れはいつだって思いよりも先に来る。
 それでもみんな微笑みながら言うの。
 さよなら、またいつか会いましょう。 
 さよなら、またどこかで、って。

『恋愛寫眞  もうひとつの物語』 2003.6.20. 市川拓司 小学館



2005年03月04日(金) 『愛が理由』 矢口敦子

 麻子、39歳独身。友人の美佐子の家の側にマンションを購入し、翻訳の仕事をしながら生きていた。美佐子は癌家系であることを気にして子供を作らなかった。ある日、突然美佐子が死んだ。自殺なのか、他殺なのか。美佐子の死を不審に思う麻子の前に少女と見間違えるような美少年・泉が現れて・・・

 自分にとっては何げない一言が、受けた人間にとって致命傷となってしまう。そういうことって現実にも多いような気がします。特に病気の種が自分に遺伝しているのでないかという不安は他人には理解できない事だろうなと思いますね。うかつに触れないほうがいい話題ってあるってことでしょう。自戒をこめて。
 この物語、読みやすいし、二転三転する展開が面白かったです。でももう少し人間の内面を突っ込んで表現されていたら、より面白かったのではないかしら。面白いキャラとか登場するのだけど、なんだか存在が浅いと言うか、のっぺらーとした感じで残念でした。

 辛い出来事って、人間、記憶をねじ曲げてしまうことがあるものね。

『愛が理由』 2005.2.18. 矢口敦子 角川春樹事務所



2005年03月03日(木) 『ラム&コーク』 東山彰良

 博多の墓石販売業・新納壮一郎は中国進出を考えていた。ふたりの異母兄弟のクールな冴と真っ直ぐな礼に野望を果たすべく中国へ行く事を命じる。幼馴染の大友翔子に中国語を教わる事になるのだが、翔子の祖父が強盗殺人に遭遇し・・・

 「アジア人同士のお互いの差別感情をデフォルメした作品です」と作者の東山さんが語ってらっしゃいました。その言葉の通り、登場する日本人・中国人・台湾人・米系日本人・・・人種のさまざまなこと。そして互いが互いを罵倒しあっていたり、コンプレックスを抱いていたり。差別や偏見と言う感情の根深さをからりと描かれているけれど、純粋に犯罪エンターテイメントとして楽しむには重すぎました。
 大好きな街・博多を舞台にしているのだから、もう少し街並みや博多ならではの人情や文化を匂わせて欲しかったわ。

 世界が自分以外のだれかを中心にまわっているときは、用心に越したことはない。

『ラム&コーク』 2004.10.29. 東山彰良 宝島社



2005年03月02日(水) 『もっと、生きたい・・・』 by Yoshi

 神野の元カノ梨花のもとへ届いた携帯メール。件名「down」内容「足の指」という文字。そしていきなり梨花の足の指が・・・。天才プログラマー神野は、この一連の不気味な事件に関わる事になるのだが・・・。

 ううむぅ。なんでもケータイ小説の生みの親で鬼才だそうです。1時間ほどで読める手軽さと挿絵から、漫画と小説の中間にあるシロモノだよなぁと思いました。こうして書籍となった時に、横書きは馴染めない気がしましたけど、売れてるってことは受け入れられているのかしら。本というカタチで読むにはちょっと違和感がありました。奇想天外でグロいのは面白かったですけど。

『もっと生きたい・・・』 2004.12.25. Yoshi スターツ出版



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