[ 天河砂粒-Diary? ]

2004年09月27日(月) ご冥福をお祈りします。

主に新書館から作品を発表していた漫画家のあとり硅子さんが。
さる7月6日にお亡くなりになっていたことを、
今日、同社から出版された最後のコミックスにて知りました。

帯にね。「あとり硅子のラスト・コミックス」って書いてあってね。
ラスト? え? 漫画家辞めちゃうの? 寿退職?(そんな馬鹿な)とか。
そんなことを思いながら。でも、大好きだから。持ち前の楽天思考で、
そのうち落ち着いたとかなんとかで復活するといいなぁ。と。
軽く考えていたのですが。
ご病気のため、逝去されたのだそうです。
最近、『 四ッ谷渋谷入谷雑司ヶ谷!! 』の2巻が出たばかりだったし。
今回、短編集が出て、その上イラスト集まで同時発売だなんて!
嬉しいなぁ。幸せだなぁ。と、思っていたところだったので。
なんというか。心にぽっかり、黒い空洞ができてしまったようでした。
もう、あとりさんのお話は読めなくなるのだなぁと思うと。
すごく、寂しいというか、悲しいというか。
こういう気持ちは、なんて言うのでしょうか。
直接、死を悼むのとはまた、違う感覚なのだろうなぁと思います。
作品でしか知り得ない人の死というのは、ぼんやりしていて……。
けれども、やっぱり、悲しい。
作品が読めなくなるということも、もちろんそうだけれど。
これらを描いていた人が、もう、この世にいないのだと思うことが。
なんだか。とっても。
むむ。文章が湿っぽくなってきたので、この辺でやめておきましょう。
高校生の頃から、大好きな漫画家さんでした。
情熱的に、大好きなのよー!! と、叫ぶような存在じゃなくて。
こっそり、大切に読み返したいと思うような、そういう存在でした。
そんな素敵な漫画に出会えたことを、とても嬉しく思っています。
心からの感謝を込めて。あとり硅子さんのご冥福をお祈りします。

追伸
ネット検索してみたら、新書館からの公式発表もありました。
来月頭には、池袋で原画展もあるそうです。
……池袋か。貯金使って、行こうかな。行きたいな。



2004年09月25日(土) お題バトルVSJINROさん&メェさん

お題:ご飯・遅刻寸前・犬・朝霧
制限時間:1時間

タイトル「黒い犬と朝ご飯」

 目覚まし時計のベルがなる前に、目が覚めた。
 ここ最近では珍しいほど、清々しい目覚めだった。
 連日の残業で疲れ切っていた体が、嘘のように軽い。体を起こしても、まるで重力を感じないほど、自分の動きが滑らかだ。
 大きくのびをして、ベッド横の窓を大きく開いた。
 朝霧が立ちこめている。灰色のビルが並ぶ街を、乳白色のベールが優しく包み込んでいる。その柔らかな景色に、思わず嘆息する。早起きをしたことで、こんなに美しい風景に出会えるとは。まさしく早起きは三文の得だ。
 ところで、いったい今は何時なのだろう?
 外はすでに光が射している。それほど早朝というわけでも無さそうだ。
 サイドボードの上に置いてある目覚まし時計を見る。そこで、行動が一瞬止まった。
 AM8:01
 デジタル表示の時計は、確かにそう時を示している。
 慌ててテレビをつける。朝8時から始まるワイドショーのオープニングが流れている。
 時計が狂っているわけではなかった。
 一瞬、今日は何曜日だったかと考え込む。思い悩むまでもない。火曜日だ。
 なぜなら昨日、不燃ゴミを出した。不燃ゴミの回収日は週に1回。月曜日だけだ。
 会社の休日は土日完全週休2日制。関連企業の都合上、祝日は出勤だ。
 今日は火曜日。もちろん、仕事だ。
 仕事は8時半から始まる。現在の時刻、まだ辛うじてAM8:01。
 間に合うには間に合うが。しかし、遅刻寸前だ。
 会社までは徒歩15分。大丈夫。走れば余裕だ。ご飯を食べさえしなければ。
 いつも、朝食はきちんととっているし、朝はご飯と決めているので、トーストをくわえながらダッシュで出社などということはできない。熱々ご飯をおにぎりにしている余裕は無さそうだ。
 即座の判断で朝食は諦め、身支度に入る。
 急いで髪を解き、顔を洗い、トイレに行き、水を飲み、スーツに着替え、鞄を手に取り、玄関で靴を履き。
 扉から出かけたところで、何かにスーツの裾を引っ張られた。
 引っかけるようなところはなかったはずだが。と思いながら振り返る。
 そこで、再び行動が止まった。
 黒い大きな影が、スーツの裾を引っ張っている。
 犬だった。しかも、目つきの鋭い、ドーベルマンだ。トゲトゲした厳つい首輪が、威圧感をそそる。
 なんで犬が居るんだ。犬なんか飼っている覚えはない。
 ましてや、こんな室内飼いには到底向かないような大型犬、部屋の中に居ること自体がおかしい。
 混乱する自分に向かって、スーツから口を放したドーベルマンが言葉を発した。
「朝食は、きちんと食ってから行け」
 すごみのある、低い声。黒く鋭いシルエットにぴったりの、威圧感のある言葉。
「や、でも、仕事がありますし……」
 ヤクザに絡まれて言い逃れをしているかのような低姿勢で、なんとかそう答えると、
「お前は、仕事と朝食と、どっちが大切だと言うんだ?」
 鋭い眼光を、より光らせて、ドーベルマンに詰め寄られた。
 仕事に決まってるだろう。朝食1回抜いたところで、どうということないだろう。
 心ではそう反論するものの、恐ろしい犬を前にしては、もう、声さえも出せない。
「飯を食え。ご飯は偉大だ。エネルギーのもとだ。米無くして、日本人はありえない」
 きっぱりと言い切り、犬はスーツの裾を力強く引っ張る。革靴を履いたまま、キッチンまでひきずられ、炊飯ジャーを前に、鼻先で「さあ、飯を食え」と、強く押された。
 時計に素早く目を走らせる。デジタル時計の表示はもうAM8:19となっている。
 もう、本当にギリギリだ。全力疾走しなければ間に合わない。この犬を振り切って走っていって。犬に捕まってなどという言い訳、社会で通用するはずもない。
 決断は、まさに1秒を争った。
「わかったよ。食うよ。朝食は大事だもんな」
 観念したようにそう言って、炊飯ジャーの取っ手に手をかける。
 ドーベルマンは、判ればよいのだというように、頷く。
 今だ。
 炊飯ジャーを取っ手ごと振り上げ、勢いよく犬の頭に打ち付ける。
「きゃううん」
 と、威圧感のある姿に似つかわしくない程の可愛い悲鳴を上げ、犬がよろめく。
 一瞬、罪悪感が心をかすめたが、今は何より出勤時間が最優先だ。
 犬の横をすり抜け、勢いよく家から飛び出した。
 全力疾走。足がもつれるのにも構わずに、力一杯走る。
 犬に朝食を食えと迫られて遅刻。そんな言い訳、社会では言い訳にもならない。
 走る。走る。とにかく走る。息が切れる。喉の奥がひりひりして、吐き気がこみ上げてくる。だが、もうすぐだ。あの角、あの角を曲がれば、会社が見える。
 勢いよく角を曲がり。
 俺は何かにぶつかった。
「朝飯は、食え」
 低いうなり声とともに、ドスの利いた声が足下から響く。
 馬鹿な。いつの間に先回りしたというのか。
 黒い、鋭い眼光を放つ犬が、恐ろしい瞳で睨み付けている。
 やむを得ない。
 急いできびすを返す。回り道になるが、別コースから。
 2歩走り出したところで、前から、黒い犬が姿を現した。
「朝食は大切だと言っているだろう」
 地響きのようなうなり声。気が付けば四方八方から聞こえてくる。
 まわりを見渡して、愕然とした。
 後ろにも。横にも。壁の上にも、車の下にも。
 犬、犬、犬。黒い犬が、影のように取り巻いている。
「飯を食え!」
 その影達が、そう叫びながら一斉に飛びかかってきた。
 衝撃が走る。体が突き飛ばされ、地面に落ちる。

 その痛みで、目が覚めた。
 目覚ましのベルがけたたましく鳴っている。
 ベッドから落ちたことを悟り、誰もいないのを承知で、照れ隠しに頭をかく。
 なんだか、凄い夢を見ていたような気がする。
 首筋に、大量の汗をかいていた。
 目覚ましを止め、窓を開ける。外には朝霧が立ちこめている。
 珍しく穏やかな、優しい光景に、俺は深く息を付く。
 キッチンから、ご飯の炊ける良い香りがしてきた。タイマーを、起床時間に炊きあがるようセットしてあるのだ。
 のそりと起きあがって、キッチンへ向かう。
 朝食は大事だよな。誰にともなく呟く。
 時計を見た。AM8:01。
 仕事がある頃なら、真っ青になっているだろう時間だ。
 だが、今はその心配はない。
 なぜなら、今は無職だからだ。
 朝食を食べない日々。残業が続く日々。
 その日々の中で体調を崩し。そのまま仕事を辞めたからだ。
 穏やかな朝。ご飯の香りに包まれながら。
 俺の1日は、ゆっくりと始まった。


 おわり 



夢オチですよ……。卑怯技ですよ。
初戦で夢オチ。初戦だから許してよと言い訳しながら。
タイムリミットまであと7分。45分で約9枚。
改行が多いし、一人称ではありますが。
久しぶりに書く文章にしては、そこそこのスピードで書けたのではなかろうか。
と、無意味な部分で自画自賛。
メェさんと、JINROさんの作品を楽しみにしつつ。ひとまずアップしてみます。
どうでも良いけど、タイトルなんとかなりませんかね。(自分でつけておいて)



2004年09月05日(日) 【水饅頭観察日記】その12

地震があった。恐かった。
結構大きな揺れで、しかも長かったので、いつもの様に、「おさまれ、おさまれ。これ以上大きな揺れになるな、おさまれ」と、心で唱えながら、ドキドキと、本棚押さえながら、ふとみると、水饅頭が縦揺れしていた。
ふるふる横揺れではなくて。
うにょん。うにょん。と、縦に伸び縮み。
恐いのも忘れて、しばらく呆然と眺めてしまった……。
地震が収まるとともに、水饅頭の縦揺れも収まって、何回か小さく「きゅきゅ」と鳴いた後は、何事もなかったかのようにまた、歌い出したのだけれど。
さっきのあれは、何だったんだろう……。
とても気になって、眠れません。
でも、眠たいので、水饅頭のうたを子守歌に、寝ることにします。
おやすみなさい。


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おたよりまたまたありがとうのコーナー!!

>いや実は、苗は華屋の地下で増やしてるんです(笑)
うわああ……。そうだったのか!!
と言うことは、ショッキングピンク(だから、正しくはパステルピンクだってば)をひらひらさせながら、一平君が水やりをして育ててくれたりした訳ですか!?
色んな毒草たちと一緒に栽培されてたんでしょうね……。
私、舐めちゃったんですけど。大丈夫でしょうか。心臓毒とか、あったりして……。(怯)



2004年09月04日(土) 【水饅頭観察日記】その11

今日は水饅頭にとって、受難の1日でした……。
最近涼しいと思って油断していたのですが。
今日は、やけに蒸し暑くてですね。名古屋は午後1時頃が暑さのピークでした。
そんな中、いつものようにタッチマウスの上に水饅頭をのせて、やわらかな歌声を聞きながら、のんびりまったりWeb小説などを読みふけっていましたら。
ふと気が付くと、水饅頭の歌が止まっておりまして。
いや、読むのに夢中になっていて、歌が途切れたことに気づかなかったのですが。
お? 歌がやんでるぞ? と、視線をおろしましたらですね。
ぐ、ぐったり、溶けかけた水饅頭がそこに!
室温が高い上に、ノートパソコンの放熱で、水饅頭大ピンチ!!
もう、腹の底から「ぎゃー!! ヤバイ、ヤバイ。氷、氷!」と叫びながら、かれこれ3年くらい冷凍庫で眠っていたと思われる保冷剤を持ってきて、水饅頭を乗せました。
手遅れだったら嫌すぎる。と、かなり不安になりましたが、幸い、しばらくの後に、ごくごく小さな声ではありますが、「きゅきゅ」と鳴き始めたので、ああ良かった。手遅れではなかった。と、安堵したのでございます。
が。しかし。安心したのもつかの間。
今度は、やけに「きゅきゅきゅきゅきゅ」と連続で鳴き始めまして。
「こ、今度は何!? どうしたの!?」と、慌てて掌にすくい上げましたところ、
水饅頭、底が少し凍りかけておりました……。ご、ごめん。水饅頭。
そうだよね。凍った保冷剤の上に直に置いたら、冷たいよね……。
私が悪かったよ。私が浅はかだったよ。ものすごく、反省しているよ。
もう、本当に本当に反省しているからさ。心から謝るからさ。
日記の文章が、ですます調になってしまうくらい、本当に反省しているからさ。

……だから、そろそろ、ご機嫌直していただけないでしょうか。

その後、保冷剤の上に、濡れタオルを敷いて、その上に水饅頭をのせて、マメに霧吹きで水をかけて。団扇で仰いだり、声をかけたりしたのですが。
うう。水饅頭、不機嫌そうにふるふる揺れるだけで、今日は歌ってくれませんでした。……ごめんなさい。


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メッセージ、たくさんたくさんありがとうのコーナー
いやもう、本当に一杯いただきました。
もしかして皆様、私を有頂天にしようと企んでいらっしゃる……?

>ふふふ、気づいていませんな。その露天商こそ、とのであったという事実に!!(なんてね・笑)
そうか。あの露天商、実はとのだったのか!
帽子は、髷を隠すためのものだったのですね?(笑)
ということは、水饅頭の苗は、一龍さんが増やして!?(笑)

>うちの水饅頭は薄い桃色。最近は涼しいのでご機嫌なようです。
おお! 水饅頭仲間さん登場だ! わーい。
薄い桃色、可愛らしいですね。というか、美味しそう(笑)
そうなのです。涼しくて、ご機嫌で。油断しておりまして……。
rinさんのところの桃色水饅頭は、ご無事でしたでしょうか……?

>いつも投票してました。商売上手だな、露天商も、三紀さんも……。そんな私はこの露天商に会いたいです。そして水饅頭を……!
いつも、投票ありがとうございます(笑)
露天商。最近見かけないのですが。もしかしたら、徐々に商売エリアを移動させているかもしれませんので、見かけたら是非是非、ゲットしてください!!
そして一緒に、水饅頭同伴で、飲み屋に行きましょう(笑)

>いや!そりゃ!舐めるでしょうよ!(笑)いや〜舐めますよ、今まで舐めてなかったのが不思議なほどですよ、そして「きゅ」だなんて……!(どうしよう水饅頭に萌えてしまいました)(もう終わりかも知れません)ああ可愛い水饅頭……ほしいなぁ(笑)。
あははは(笑) 舐めますか。やっぱりそうですよね!
私だけじゃないぞ。誘惑に負けちゃう人は(笑)
そして、そうか。水饅頭ってば、実は萌えキャラだったのですね!?
私にも萌えキャラを書ける日が、とうとう……!!(笑)
それにしても、1つの苗から1つしか水饅頭はできないので、
1つお裾分け。というわけにはいかないのが、とても残念です。

>水饅頭の歌を聴くために、わざわざボリューム上げたのに……! いじわるっ!
ご、ごめんなさい。だ、騙されてくれて、ありがとう。(おい)
だって、うちにはマイクもなければ、MP3に変換するソフトも無いんだもの。
お聞かせしたいのはやまやまだけれども、物理的に無理だわ……。
ええと……。い、いじわるであることは、この際、否定しません(笑)


>水饅頭でしたら舐める気になりますけれどスライムはちょっと・・・・(笑)これからも観察日記楽しみにしております。
確かに、スライムはちょっと、舐めても美味しく無さそうですよね……。
うむ。外見が似てるからなんとかなるかと思ったのですが(笑)
あ、観察日記、楽しみにしてくださって、ありがとうございます。
今、メッセージをいただいて有頂天になっておりますので、
しばらくは順調に更新できるのでは無かろうかと予測しております(笑)
これからも、よろしくお願いします。

やー。1日でこんなにたくさんのメッセージをもらったのは、本当に初めてです。
水饅頭、おそるべし! すべて君の魅力だよ、水饅頭。
……だから、そろそろ機嫌を直してください。お願いします。



2004年09月03日(金) 【水饅頭観察日記】その10

私は今、ものっすごーく強い誘惑に駆られている。
日記を書いたり、お気に入りのサイトを見て回ったりするときは、水饅頭を、ノートパソコンのタッチマウスの上に座らせているのだけれども。
ディスプレイから視線を降ろすと、目の前に、みずみずしくも艶やかな水饅頭があるというのは、酔っていない状態であっても、ものすごーく、心揺らぐものなのである。
……ああ、水饅頭。ちょこっと舐めてみても良いでしょうかっ!?
舐めて良い? と、聞いてみたんだけど。
言葉は通じていないらしくて、ご機嫌にうたを歌うだけの水饅頭。
しばらく眺めて。眺めて。眺めて。

……舐めてしまいました。
舐めた瞬間の、水饅頭の「きゅ」という、息が詰まったような小さな鳴き声に、ひどく罪悪感を呼び起こされました。……ごめんなさい。もうしません。
でも、味は無かったけど、ちょっとひんやりしてて、ある意味美味しかったです……。


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メッセージありがとうのコーナー!
(タイトルは、わかりやすいに限るよね。と、負け惜しみを言う会)

>あーどんな声なんだ、くそぉっ!聞きたい!
聞きたいですか。そうですか。……わかりました。
MP3形式で、水饅頭の歌声をアップしてみましたので、こちらからどうぞ。
……嘘です。ごめんなさい。もうしません。

>水饅頭欲しいですw
そう言っていただけると! 観察日記をつけている甲斐があります(笑)
是非とも、怪しげな露天商を見つけて、買ってみてください。
いざとなったら、スライムでも代用できます。……多分。

水饅頭が、霧吹きの水でご機嫌になるように。
私も、皆様からのメッセージでご機嫌に(ときには有頂天に)なります。
ありがとう、みなさん!
そして、ありがとう、水饅頭!
未だかつて、こんなに頻繁にメッセージをもらったことはなかった……!!(笑)
露天商のおじさんに、感謝せねばなるまいのぅ。



2004年09月02日(木) 【水饅頭観察日記】その9

仕事から帰ってきたら、水饅頭が枯れていた。
あ、いや、水饅頭本体じゃなくて、苗の方ね。
うっかり水をやらずに出勤したせいか、水饅頭を生んで役目を終えたせいか、どちらかは判らないけれど、蓮葉型の薄い緑色の葉は、すっかり茶色と黄色のまだら模様になり、茎は不健康な緑色になって、ぐったりと硝子製のポッドの縁に倒れていた。
ちょっともったいない気分になったけれども、露天商のおじさんは、1つの苗から1つの水饅頭。と言っていたので、もう役割を終えたのだと理解した。
そして生まれた水饅頭は、どうやら自力で移動することが可能らしくて、出勤前に置いておいたお皿の隅っこにちょこんと座って、ふるふる揺れながら、うたを歌っていた。
水饅頭は、どうやら歌うのが好きらしい。
霧吹きで水をかけてやると、ますます幸せそうに歌う。
その、歌声の微妙な変化が、私にはひどく可愛らしく思えた。
そのうち、ぴょんぴょん飛び跳ねたり、もしくはツルツル滑るようにしながら、皿から降りたりするかな? と思ってしばらく眺めていたのだけれど。
歌うし揺れるけど、移動する気配は全然なくて。
今は動く気分じゃないのかな? と、勝手に解釈して、お風呂に入って戻ってきたら、いつの間にか、皿から降りて、出窓の前でゆらゆら揺れていた。
……水饅頭め。だるまさんが転んだモードで生きているな?

水饅頭と一緒に、出窓から夜空を眺めながら。
水饅頭の歌声をBGMに、缶ビールなぞ飲んでみたりして。
なかなかに幸せな、秋の夜を満喫中でございます。
今の私は、ほろ酔いでかなりご機嫌。
水饅頭の歌声も、かなりご機嫌。
ご機嫌に酔っぱらって、うっかり水饅頭を食べちゃわないように、気をつけよう。


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