...ささなみ

 

 

ゆくすえ

「地図」についての断片。覚え書。 - 2005年02月06日(日)

その場所を旅した者によって記されたもの。過去の時間。
これからその場所を旅する者の手をひくもの。未来の時間。
過去と未来の結節点。
かつてあった世界の死体。これから生まれる世界の胚。


記されたことによって、記され得ないことを示すもの。
宝の在処をほのめかすもの。
物語を語らせるもの。
地図の端からは水があふれている。流されて落ちる船。
その世界の外から覗き込まれるもの。
誰が記したかわからないのに、すでにそこにあるもの。謎。


ムーミン谷の地図。
「くまのプーさん」の百ちょ森の地図。
「黒い郵便船」の「おもてまち」と「うらまち」の地図。
宝島の地図。
ロビンソン・クルーソーの地図。
RPGのダンジョン。
イタロ・カルヴィーノのフビライ汗とマルコ・ポーロの「見えない都市」の地図。時間の配列をシャッフルされたアトラス。


地図から蜃気楼のように立ち上がり、現前する幻想の都市。
その細部にまでわたしたちが足を踏み入れることができる幻想の路地。
そこを所有することを欲望させながら、そこを所有することを禁じるもの。
そこで迷うことを禁じながら、そこで迷うことを欲望させるもの。





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「犬」 - 2005年02月05日(土)

十蘭堂の2004.12の朗読会で、読んだ詩。

  犬

わたしの犬がわたしの眼の前にいて飢えています。
わたしは犬を飼ったことがないのにわたしの犬はわたしに飼われたことがあるといった顔でわたしに要求します。わたしの犬は言葉ではなく先立つ時間としてわたしに要求します。わたしはわたしの犬を好きでなく先立つ時間の要求を受けつけることはできません。荒い縄でくくられたわたしの犬の首の毛はこすれてとても見苦しいのです。わたしは乏しさそのもののようなわたしの犬を嫌いですがわたしの犬はそこで立ち上がりわたしの眼の前に腕を差し出しそこに切れ込みを入れていきます。一本二本三本と赤い肉の筋を入れながらわたしに刻々と要求します。
うるさい。現前そのものがうるさい。
ああ おまえは くさったえさでも食べていなさい。
わたしはおまえのことを知らない。
わたしはお前の顔をしらない。
兄弟の顔をした わたしの犬の顔は大きすぎてわたしは空を見ることができません。



注:これは以前見た夢を記したものです。


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