感想メモ

2013年07月21日(日) アニバーサリー  窪美澄



窪美澄 新潮社 2013

STORY:
マタニティスイミングの講師・晶子はレッスン後の食事会で東日本大震災に遭う。電車が止まってしまい、気になる臨月間近の妊婦・真菜のもとを訪ねることにすると…。

感想:
 震災により、マタニティスイミングの講師と妊婦が触れ合うことになる。

 講師の晶子は第二次世界大戦中に子供時代を過ごし、空腹や疎開、焼け野原の東京、親友との別れなどを経験。また戦後に結婚後も、夫は仕事で飛び回り家を空けて、子育てはほぼ自分一人で行った…という経験の持ち主。おせっかいとは思いつつも、気になる妊婦には積極的に声掛けをしている。

 一方の真菜は、有名料理研究家を母に持ち、名門私立校に通ったものの、親が多忙で構ってもらえず、そのことがトラウマになっている。高校時代は親友の手引きで援助交際をしてお金を稼ぎ、カメラマンとなった。

 その事務所の妻子ある男の子供を身ごもったが、男はそのことを知らないし、今は別の女と一緒である。

 そんな閉塞感の漂う彼女のもとに晶子が訪ねていき、無事出産後も自分の家に招いてくれたりと、手厚くもてなしてくれる。

 震災後の世界は放射能が漏れていて、何かと不安になる日々だったから、彼女の申し出はありがたかったけれど、段々負担も感じる真菜。

 晶子の計らいで、父と再会したり、母の気持ちを父から聞かされたり…。真菜も子供を産んで、母親の気持ちもわかったのかも…。

 そして、晶子の親友・千代子や晶子が親戚のように、細く長く真菜とその子供を見守ってくれそうで、その点はホッとした。

 自分も産後は大変だったし、うちの場合は、もうすぐ1歳を迎えるかというときに震災が起こったけれど、さらにそれよりも小さい新生児の時に震災が起こっていたら、本当に不安で仕方なかったと思う…。(1歳未満だった自分の子供も将来のことを考えると今でもたまに不安だけど)

 初めての窪美澄の作品だったけれど、かなり夢中になって読んでしまった。特に子育て中の方などにはオススメ。



2013年07月13日(土) 彼女のしあわせ  朝比奈あすか



朝比奈あすか 光文社 2010

STORY:
三女・凪子は子供を持つことが難しい体ながらも結婚、次女・月子は田舎で子育てに無我夢中、長女・征子は結婚せずに一人で生きていく道を選び、母・佐喜子は父との生活に愛想を尽かし家出して…。

感想:
 家族の中の4人の女性の生きざまを通して、色々な生き方があるのだなーと思わされる作品。

 どの生き方が正解とかいうのはないのだろう。その時代の価値観もあるだろうし…。

 私が一番身につまされたのは、次女・月子の生活。子育てに追われて、イライラしていて、背伸びした生活のブログを書いてアクセス数を伸ばそうと必死になっている。

 ブログうんぬんは置いておいて、ネットなどに夢中になると、子供の声が邪魔に感じて、邪険にしちゃったりとか…ホント気持ちがよくわかってしまって。

 こうして文章に書かれたようなのを読むときは、多分なんてひどい母親なんだろうとか思っちゃう人も多いんだろうけど(自分もそう思う)、でも、自分がやってるのは同じようなことなのかも…と。

 長女・征子の結婚せず仕事中心で自分の生きたいように生きるという生活もわからなくはないけど、私自身はそういうのはちょっとさびしいかなと思ってしまうかな。

 三女・凪子はいい旦那様に恵まれて幸せだなーと思う。子供を産む・産まないではなくて、産めるか産めないかって、気持ち的に雲泥の差だと思う。自然に子供がいない生活を送る結論に達したのもよいことなんじゃないのかな…とか。

 そして、母の気持ちもすごーくわかる。自分なら耐えられず、もっと早く家出なり離婚なりしちゃいそうだ…。

 と、どの描写も女性の日常がよくわかるなーという感じで、自分とは全然同じ立場ではなくとも、女性なら、よくわかる感覚なのかも…と思った。


 < 過去  INDEX  未来 >


サーチ:
キーワード:
Amazon.co.jpアソシエイト
ゆうまま [MAIL]