○プラシーヴォ○
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2002年06月30日(日) 解雇物語

昨日、痛い目にあったチビちゃんズ


うなだれながらも
カウンターの中で必死に笑顔をつくろうとしてる


さあ、そろそろ今日のお客さんがくるぞ…
というときに

オーナーが奥の事務所から出てきた


「二人とも、辞めてくれ
 今すぐ出てってくれ」



はあーーーーーーーーーー??



まだ昨日の怒りが収まらないらしい

(そんなに怒ることか?)



接客態度がなってないだの

マッサージが下手だの


いろいろ言っていたが最後には


「理由なんかどうでもいい
 とにかく辞めろ」



はああああああああああああああああ???




分かった


この人



頭がおかしいんだ



泣きながら着替えをするチビちゃんズと共に

私達も着替え



そして


結局誰もいなくなった



あせるオーナー


「君達に辞められると困る」



困れ困れ


2002年06月29日(土) ケンカケンカ

お給料をもらった


思いがけず少なかった


しかも明細がない


いったいどういう計算で
この金額になったんじゃ?


クビをひねっていると

今月頭から働き出したチビちゃんズ(新人2人)
が小さく悲鳴をあげた


二人とも4万円しか入ってない


どうして
どうして



恐る恐る、事務所に戻る二人


よくよく聞くと、

チビちゃんズのお給料は
来月に支払われるはずで

今回のこのお金はオーナーからの
お小遣いだそうだ



「お前ら、俺の好意に文句をつけるんか!!」



すんごい怒鳴り声


っつーか、渡す時に説明しろよ!!



オーナーの怒りは収まらない


「文句あるんなら
 辞めてもらってもかまわない」


チビちゃんズが慌てて頭をさげて

一旦は収まったように…見えた


2002年06月28日(金) 手と手

うちの店で唯一の男性


フクくん


私よりひとつ年上


ハム男と同じ0型


癒し系


顔は

藤井隆とゴリさんを足して2で割った感じ




決して美男子ではない


でも彼女がいる



「肩が痛いの
 少し揉んでもらっていい?」


クイックマッサージの台に誘導され

揉んでもらう



「んん?
 がちゃ子さん、すごく凝ってますね
 部分部分ですごく違う
 
 ここはこんなにゴリゴリなのに
 こっちはホグレてるなあ…」



丁寧に丁寧に
温かい指で

背中がほぐれていく



お店で働くと同時に

整体の学校に通っているフクくん



「よし、スペシャルメニューですよ」



私の手を握って

腕をグイッと45度の角度にあげる


そうして肩を再び揉みだした



こうするとね
肩の筋肉が緩まって、よく効くんです
こっちはどうですか?
腕をこう後ろに回すとね
肩甲骨の脇の筋肉が…



説明をしながら

的確に揉んでくれるフクくん



マッサージよりも


私の手を握るその手が

気持ちよくて


どきどきする



ハム男のおケツを見ても

もうしなくなったどきどきが

よみがえってきた



血行がよくなる


2002年06月24日(月) ぼんやり

一緒にいても


肌をくっつけていても


その温かさをじんわりと感じていても


名前を呼んで
すぐに返事が返ってくるとしても



好きかと問うて

そうだと肯定されても



ぼんやりとあなたが遠くにいるような


この不安は
どうしたことだろう



出会ったばかりのような


何がなんでもあなたへ引き寄せられる

そんな吸引力が


お互い弱ってきているのだろうか



好きだというだけでは


幸せになれないのだろうか


2002年06月23日(日) お日柄もよく

お店の子にそそのかされて


買ってしまった


『六星占術』



来年が、結婚やらなんやら
いろんなことをスタートさせるのに
いい年らしい


ギネスブックにも公認された
すんごい売れてる本にそう書かれていると


ちょっとその気になってくる


なにがなんでも


来年結婚したくなってきた


2002年06月19日(水) うらやますい

私よりひとつ年上の
お店のスタッフから電話があった


「がちゃ子ちゃん…どうしよう」


昨日の飲み会の後、
記憶を無くし

気がついたら


そこは


予約の出来ない楽しいホテルだったそうだ


隣には唯一のお店の男性スタッフ(入ったばっかり)



最後までイってしまったかどうかも
分からないそうだ
(起きたとき二人ともきっちり服は着てたそうだが)



いいにゃあ

そういうアバンチュール

うらやますい



ハム男から電話


「あ、どうも ケチケチウンコマンです」


笑いながら名乗るハム男



怒ってないの?



怒ってないのかい?


ほっとした


2002年06月18日(火) 憎まれ口

お店の人たちと飲み会


大嫌い店長が主催者だから
いまいち乗り気ではなかったが

グビグビビールを飲んで
店長をあからさまに無視



気持ちよく酔って

2時間弱かけて電車で家へ帰る



ハム男に電話



「ハム男、大阪か三宮にくる?
 飲み会が終わって、今から帰るとこなんだけど」



あー、ダメダメ
俺もう、酒飲んじゃったもん

飲酒運転の罰金、改正されてめちゃめちゃ高くなってんで
迎えにはいけないよ

だめだってば
行けないよ



ぶっちりと電話を切り


アホ  

ケチ

ケチケチウンコマン 大嫌い



三通のメールを立て続けに送った






これが国語のテストで
感想文を書かされるとしたら

きっとほとんどの人が


『この彼女はわがままで筋がとおっていません
 彼氏は別に悪くありません』


って書くはず



私もそう



きっとハム男はあきれてしまって


私への思いを
考え直しているかもしれない


2002年06月17日(月) 優しいと優しくなる

今日は早番


いつもより明るい景色を見ながら
電車に揺られる


ハム男から電話


「がちゃ子?
 昨日言い忘れてたんだけど…」



うんうん



「昨日俺な、がちゃ子が仕事いってるあいだ
 寝てただけじゃないねんで
 掃除をしとってん」


…う…うん?



「床とかな、ぴっかぴかやで」



映画 蛍の墓の女の子のような
たどたどしい話し方


私が穏やかな気持ちで受け答えすると

こころなしか電話の時間が長くなる気がする


「ハム男、昨日作ってくれたエビフライ
 おいしかったよ」


そう?
切り込みの入れ方がよく分からなかったから
丸まっちゃったけど
今度こそまっすぐなエビフライを
作ってみせるからね
エヘヘ


目を閉じる


この普通が幸せすぎて


夢かと思う


2002年06月16日(日) ブラックリスト

開店して一ヶ月弱


スタッフが8人も辞めて行った


ほとんどの理由は

「研修中にお給料が出ない」


『続くかどうかも分かんないやつらに
 払う金なんか無いよ

 やる気があるんなら
 無給でも研修するはずだよ』


はあああああああああああ???





店長の言葉に私はブチ切れた



『それって、面接の時にちゃんと確認してます?
 一旦採用してから
 実は無給でした〜なんて言ってるから
 バタバタ辞めていくんでしょう?』



店長は拗ねた顔をして
奥に引っ込んだ


38歳のデブの男が拗ねたって
かわいくねえんだよ!


しばらくして

新人ちゃん2人が私にこっそりと
教えてくれた


『さっき、事務所で店長が
 がちゃ子さんのこと言ってました…』


経営者でもないのに
俺に口出しするのは気にいらない

早くパンフレットを作れだの
店のホームページを作れだのうるさいけど
俺は当分作る気はない

でしゃばりすぎだ









分かったよもうなにもいわないよ




帰り道、ハム男に電話した


『私、思った事を言いすぎかなあ
 大人だから我慢した方がいいのかなあ』


ハム男が笑う


『言いたいことを我慢してまで
 働きたくないやろう?
 
 大体、たとえば、
 がちゃ子が恋焦がれてるオットコマエの
 店長に悪口言われたんならまだしも

 そいつは、デブバカ店長なんやろ?
 
 嫌われてラッキーやん
 そんなやつに好かれる方が気色悪いわ』



いっつもいっつも
あほな事しか言わないハム男が

私を諭すようにゆっくりと話をする



ありがとう


少し心が

ほっくりしたよ



2002年06月15日(土) 2回目のプロプロポンズ

寝るときにハム男の肩をかじりながら

ふと言った



「ハム男、好きだよ」


ハム男と付き合いだしてから
やっといえるようになった



「結婚しような」



はい?




ハム男の顔を見ようと
体を起こそうとしたけれど

ハム男の腕枕が
私を引き戻す


「そうね、早くしたいね」




びっくりで
びっくりで


私の妊娠が発覚した時から
数えて

2回目のプロポーズ



ハム男の心境の変化は分からないけれど


この日の夕方に見た

「I AM SUM」

よりも


私はこのプロポーズを思い出して
泣きそうになる


2002年06月13日(木) やっとこどっこいさ

やっとやっとやっと


明日ハム男に会える


本当は先週の土曜日会えるはずだったけど

八ヶ月のお子さんがいる人が

「子供が熱をだしたので
 そばにいてやりたい
 休みを替わって」


と言ってきたので

出勤するはめになってしまったのだ




「私も、彼氏に会いたいので
 替わってあげることはできません」

だなんて

狂ったことを言いそうになるのを

ぐっとがまんしてた



赤ちゃんの病気と
彼氏に会いたいという気持ちは

やっぱり病気の方が大事なんだろうか


だなんて

狂ったことを一瞬本気で考えた



だってだって

私はハム男に会いたい



何が優先すべきことなのか
分からなくなってくる


こんなに会いたいのは久しぶり


2002年06月10日(月) ノーコメント

日本 が ロシア に 勝ちました



チャンネルを

変えても変えても変えても変えても

同じニュース


放送事故かと思うくらい

同じニュース



ハム男もさぞかし
ウッホウホで喜んでるんだろうなあ


と思いをはせていると

電話が鳴った



「あー、元気?
 仕事調子どう?
 俺は仕事で遠くに行ってて
 今帰ってる途中で〜」


いつもは1分たらずで切れる電話だが

2日ぶりとあって
20分ほど会話した



その間

サッカーのサの字もでなかった


2日前


「じゃあ何?
 ワールドカップが終わるまで
 放送予定に合わせて
 私たちのデートの予定も変わってくるわけ??」

と私がつめより

「まあ…そういうことになるね」

とハム男が答え


私は無言で電話を叩き切った



今の私にサッカーの話題は
タブーだと

やっとこさ学習したらしい




遅いんだよね
おじちゃん


『ワールドカップ ウィドウ』


という言葉があるらしい

ウィドウ=未亡人



ワールドカップに夢中になる旦那に
かまってもらえなくなった奥様のことらしい



そんな言葉ができてしまうほど
ワールドカップは魅力的なのかい


寂しい思いをしているのは
私だけじゃなかったのかと


ちょっぴし
ほっとする


2002年06月06日(木) 意外や意外

マスカラばっちり

ぱさぱさ金髪

自分のことは名前で呼ぶ

大きな笑い声



新しく入った18歳の女の子

とても不安



だったけど


覚えは早いし、

ティッシュ配りも進んでやるし

気がつけば掃除してる



相変わらず鼻にかかったような
だるい話し方だけど

人の話をくりくりの目を大きく開いて
しっかり聞く


こういう人たちが


私の心のキャパシティを広げていく


足をひきずりながら
けだるそうにメールを打ちながら
歩いていた女子高生が

道の真ん中でばたばたともがいていた蝶を

少しためらったのち
そうっとつまみあげて

花壇の湿った土の上へ置いていた



まったく参ってしまう

こんな意外は
大歓迎だ


宇宙人も言っているとおり


この世はだんだん

見た目と中身が一致しなくなってきている


がちゃ子 |偽写bbs

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