 |
 |
■■■
■■
■ 端っこから滑りくる未来
あれだけバーでシュッに憧れてるのに、案外お酒に弱かったりしたら可愛いなぁ、ゆかちん。
---
「前方確認!」 「はーい、頭の方持ち上げましたー」 「じゃあ足行きまーす」 「あ、枕これでいいですか?三上さん」 「うん。あとその掛け布団持ってきてー、津田ちゃん」 ふう。今日も我々ごらく部が一人の女性の命を救ってしまったようだな。 じゃなくて。ただ今、3人がかりでごらく部一の高身長を誇るJDを寝かせているところ。やっぱり背が高いと動かすのも大変だから、小さいるみちゃんと大きいみかしーと中ぐらいの津田とで、いろいろ協力した訳です。ああ、力の抜けた人間てこんなに重たいんだなぁ。 「ゆかちん、暑そうだね」 「うちわあるよー」 当のJDことゆかちんは、顔こそ真っ赤だけどなんかうれしそうな表情。悪酔いというよりこれは……単なるお酒に弱い人? 「襟元緩めてあげよっか」 みかしーがテキパキとゆかちんのブラウスのボタンを外していく。あまりの手際の良さに、思わず普段から女の子の服を脱がせ慣れているのかと疑わざるをえない。下の方まで外しすぎてるみちゃんがツッコミ入れて止めてるし。 「ゆかち〜ん、蘇れ〜」 うちわであおぐぐらいじゃ酔いは冷めないと思うけど、とりあえずバシバシあおいでいこう。 「それにしてもさー、まさかゆかちん、お酒弱いなんてねー」 「ていうかさ、なんで誰も弱い方だって予想しなかったんだろ?」 「そうだねー。可能性は2つに1つなのに」 お酒への希望を語るゆかちんが結構自信満々だったからだよなぁ。まぁ、若さゆえの過信というのはよくあるものだよ、うん。かくいう自分も若い頃(今だって若いけど)飲みすぎて店で寝ちゃったり二日酔いがひどすぎて後悔したり、やらかしたもんです。 というかそこの二人。JDを肴に酒盛り再開してるし。いつの間にかテーブルの上の余ったお酒や食べ物がゆかちんを囲むように置かれている。お供え物か! 「ほらほら、津田ちゃんももっと飲んで」 「あ、すいません」 みかしーにぐいぐい氷結を押しつけられる。正直、困惑せざるをえない。みかしーお酒強いからなぁ。 「るみちゃん、三上さんのペースに合わせなくていいよ」 「大丈夫だよ、津田ちゃん。まだ津田ちゃんが1人しかいないから」 「いや、2人以上に見え始めたら早めに教えて。止めるから」 うわあ。すでに結構ハイだ、この人。 「でもちょっと可愛いね、ゆかちん」 「うんうん。ゆかちんの可愛いとこまた1個増えたねぇ」 いつもニコニコ笑顔全開、どんなフリにも屈しない天性のひらめきと強いハートでごらく部のペットとしてがんばるゆかちん。若干20歳とは思えない落ち着き、思慮深さ。一緒にいて、年下だなぁと思うことは、あまりない。でも今目の前で、幸せそうな顔して寝てる姿は年相応というか何というか。まだまだ子供だなぁと思う。 「バーは当分先だね」 「みかゆかカクテル誕生までまだ先が長いなぁ」 「じゃあゆかちんが30才になるまでに行けたらいいね」 「うちらその頃とっくに30半ばだよ」 「その頃になったら……大酒飲み?」 「量がどんどん増えるわけじゃないですから」 「それはみかしーだけだよぉ」
「……いつかいこうね、みんなで」
不確定なはずのごく近い未来。そこへ向けて背中を押すのは、今はまだ寝ているだけの彼女のつぶやき。
2013年06月30日(日)
|
|
 |