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■ 回り道しないで
少しお酒も飲んで、深い時間になって。そろそろ寝ようかなんて、どちらからともなく言い出して。歯を磨いて部屋に戻ったら、彼女が布団の上にちょこんと座っていた。ちょこんと。 薄暗がりに静かに俯いているから表情はわからない。眠いのかな。でも待っててくれたってことは、何か話したいのかな。わからない。昔はいろいろ試行錯誤しては的はずれなことばっかりしてよく呆れられてたっけ。最近は、彼女のことはよくわかる。よくわかるはずなのに、今はわからなかった。 背中には柔らかい空気をまとっている。浴衣から覗く首筋が白くて紅くて。つい、本当につい、昼間見た裸を一瞬思い出してしまい。いやいや、だめ絶対。なんかわからないけど、いつもみたいにじゃれて触れ合うのとは違う気がして、ものすごく悪いことをした気がして、内心ひどく焦った。変えよう、この空気。 「もう寝る?」 「◎ぐちは?」 あ、だいじょうぶ。いつもの彼女だ。よしよし、ここはいつもどおり一発かましておくか。 「今夜は寝かさないよ、も○」 「……さて、寝るか」 おお、いつもどおりの華麗なスルー。 「でも、◎ぐちが」 ん? 布団にごそごそ体を埋めながら、徐々に小さくなっていく声で、彼女はまだある続きを言う。 「話したいんなら、もう少しだけなら、いいよ」 こちらに向いている顔は、赤かった。右手が出ているのは、そういうことだよね。いいんだよね。手を重ねてみる。指に力を入れる。彼女も握り返してくれた。
「まあ、そんなことがあってですね」 ほんとうに、ほんとうのほんとに。好きかもしれないと。 打ち明けられたのはそんな話。難しい話。しかし当人、あんまり深刻そうではない。彼女は真面目な人柄なのだ。本当は。もっと悩んでいたらどうしようかと思ったが、元気そうで安心した。 気づいただけなんだろう。昔から二人を知ってる。二人とも、今も出会ったころも、何にも変わってない。最初から、ほんとうとかそうじゃないとかではなく、好きだったんだと思う。 「どうするの?」 ただ気になるのはこれから。答えはなさそうな無責任な問いに、妙に力強く彼女はうなづいた。お、妙案でもあるのか? 「とりあえず、ハワイ行きます」
※今度は年上の先輩の視点で。そういう話じゃないとはわかってるけど、ハワイで挙式すればいいのに。
2012年06月03日(日)
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