池ポエム
ハンス



 君のいらないものは僕のほしいもの

甘い、うまい。机いっぱいに広げたチョコを片っ端から口に詰め込む。味わうことだけに熱心になっていたら、ふいに正面に座っていたクラスメイトが肩に腕を回してきた。
「ねぇ、月島」
「ん?」
そのまま顔を近づけて、ニコニコと笑いながら耳元で囁く。
「チョコの代わりに星ちょーだいよ」
ふざけているようで、言葉の奥に本気の響きが秘められている。直感でそう思ったが、答えは簡単だ。
「やだよ〜ん」
「えー?だってうちらこんなにアンタにチョコあげたじゃん」
だから、代わりに星をひとつくらい譲って欲しい。それが彼女の言い分だった。星をたくさん持ってるんだから、ひとつくらい交換したって罰は当たらない。
「だめ〜」
確かに、星はたくさん持っていた。でもひとつだって他人にはあげられない。交渉は常に決裂だ。


「うまいなー。紅愛、こんなにたくさんいーのか?」
「いいわよ。好きなだけ食べちゃって」
紅愛の教室に行ったら、さっき食べた倍ぐらいのチョコをまたもらった。うれしい。これは全部紅愛宛てのチョコだ。でも紅愛はいらないのだ。
「甘いものって大量に食べられないのよね」
クールに言い放ち、爪を磨いている。横顔が、いつもの興味なさげな退屈そうな紅愛で、安心する。
「あんがとー」
「代わりに、星をちょうだいね」
来週までに、あと3つは奪りたい。紅愛は欲しいものを口にした。
「りょーかい」
それは、ちゃんとあげようと思う。みのりは星はいらない。チョコはほしい。だから、チョコはもらうし星はあげる。それだけだ。




※ちょい前のワルだった頃の月星のバレンタの日。

2008年02月16日(土)
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