 |
 |
■■■
■■
■ bande a part
二人部屋でも、一人の時は一人。こんな時に限って、無愛想なルームメイトはいない。いたって優しく甘えさせてはくれないけど、一人でいるよりはうんとマシ。一人でいるのが辛い時、綾那がいてよかったな、と思う。入学して、二人部屋になって、無愛想だけど結構いい奴な綾那がいて。 誰かがいるっていいことだ。今までは夕歩だけだったから。夕歩は、何かあって甘えたい顔してることをすぐに見抜いてしまう。そんなわかりやすいつもりはないのに。 「綾那〜、どこ行ってんのよ」 普段は誘われたってめったに重い腰を上げないってのに。愛用のゲーム機が丁寧にしまわれているから、こりゃ当分戻ってこない。思えば、綾那は入寮して間もなくこれを持ち込んだ。どこで買ったのか、もらったのか。それから、部屋に一人でいる時は遊ぶようになった。半年ぐらい経った頃、妙に座った目でつぶやいたのが忘れられない。 「ゲームの人の顔は怖くない」 それがどういう意味なのか、いまだによくわからないけど。 コツコツ、とドアが鳴った。 「はいよー、開いてますよー」 綾那ではないな、と思った。とくれば、残るは夕歩か綾那の刃友であるところのゆかりな訳だが、ここはノックの仕方ですぐわかる。 「綾那なら今留守よん」 親切なご申告を聞いて、ゆかりは部屋の中を見渡す。目の前にいる順を見て、眉をしかめた。緩くウェーブのかかった前髪をかき上げて、口を開く。 「何て顔してるの、順」 「へ?」 壁を背にして座り込んでいる順を、立ったまま見下ろす。 「染谷ったら失礼ねー、こんな美少女捕まえて顔がヘンだなんて」 「貴方の無根拠な自信はともかく、泣いてたら台無しよ」 「泣いて?」 慌てて手で目尻を拭う。濡れてなどいない。 「もーう、染谷も人が悪いなぁ」 最高の作り笑顔。誤魔化すことには慣れているはず。綾那は知ってても、声の掛け方がわからならいから距離感がちょうどいい。夕歩は全部わかってくれてるから、ちょうどいい距離まで突き放してくれる。 彼女は綾那の刃友で、信頼できる人間だし、順にしては珍しいぐらい心を許している。 それは間違いない。 「下手な笑顔ね」 「!」 目の前に、意志の強い真っ直ぐな瞳があった。 「……なんなら、慰めてくれる?」 眼差しはいつも真っ直ぐに目の前のものを見据えて、強く惹きつける。その代わり、生半可な甘い寛容などありはしない。強いところ、潔いところ。弾かれても弾かれても、彼女に近づきたくなる。 「お断りよ」 貴方に言われると妙な寒気がするから、と心を抉るセリフが追加される。今の、かなりぐっと来た。立ち直るのに力が入りそう。 「そういうのは、私じゃなくて夕歩に頼みなさいよ」 「いや〜、ほらあたしって繊細だからさ〜。夕歩にも染谷にも、もちろん綾那にも癒してもらいたいって言うか〜、もう三人まとめて上から下から慰めまくっちゃってーって感じのを希望しま……」 「順」 最愛の刃友の声がして、反射的な口がしまる。我ながらパブロフの犬より染み付いている。体が固くなり、来るべき一撃に備える。 「夕歩も大変ね」 「ま、慣れてますから」 さりげなく肩をすくめてゆかりが部屋を出て行く。席を外してくれるのはうれしいけど、気が利いてるというより修羅場を見たくないって感じだ。 「ま、待って待って!もちろん夕歩が第一希望だってば!!」 しかめっ面もいいとこの、ぶすっとした夕歩がゆっくり近づいてきて。ギュッとつねられた。 「いっ、いたいいたい!!」 「もう……順はろくなこと言わないんだから」
「何?何かあったの、ゆかり」 バカが一人折檻されているのをこれ以上見ている趣味はなかったので、早々に退散することにした。その判断は正しかったようで、中からはうめき声が聞こえてくる。 綾那にバカがうつったら大変だ。やんわりとドアを開ける手を押し留める。 「なんでもないのよ。さ、避難しましょ」 「?」
2007年11月24日(土)
|
|
 |