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■ シドのバンダナをずらし隊
「伝説の男〜♪ 伝説の男〜♪」 べんべべべべん、べんべべべべん。 始めて話した時から、シドははっきりと言っていた。 欲しいモンを手に入れるために、星を奪る。見たまんまの、わかりやすい奴。何か隠してる引き出しでもあるのかと、楔束当初はしばらく観察したりもした。 結果、見たのはバカだけだった。 こいつは、最初から最後までずっとこんな調子なんだろう。 欲しいモノをちゃんと手に入れたところだけは、根っからバカのこいつにしては上出来と言ったところか。口だけとは言わないが、変なところでヘコんだりもする奴だから、目標達成まで折れなかったことだけは褒めてやってもいい。 それでも、疲れるには十分なほどフォローしてやったけど。 お前はパンクじゃなかったんかい、と心からツッコミたいけどもう放っておく。やっと手に入れた念願のベースを、夜通し弾いてるのは構わない(隣の部屋の生徒には迷惑だけど)。問題は、曲だ。調子っぱずれな「ガッツ伝説」を熱唱してご機嫌な姿を見ると、よくコレと4年もやってこれたもんだと自分で自分を褒めたくなった。 でもそれも、あと少しで終わり。疲れるバカのフォローも、少しは楽しかった星奪りも。シドが目標を達成してバックレるって言うのなら、続ける理由もなくなる。 (……最後、ね) 夜風に乗ってバカの声が寮の至るところに流れていく。そろそろ止めた方がいい。 「ガッツ、ガッツ、VIVAガッツ♪」 「シド! そろそろやめな」 「ちくわで星を見る♪」 (このガキャあ……) 心から聞いてないバカの、脳天を引っつかんでこちらを向かせた。掴みやすい無造作な髪を引っ張られて、やっと周囲の状況に気づいたらしい。目をパチパチさせて、マヌケ面を作る。 「んっだよ、ナンシー。今サイコーにノッてるとこなんだぜ!?」 ノッてるのか、その曲で。ベース芸人と化したシドをじっと見ていたら、ほんのごくわずかでも感傷に捕らわれた自分がばかばかしくなった。こいつ相手に、シリアスは似合わない。最後まで、バカ騒ぎのまま駆け抜けてやれ。 大事な大事なシドの相棒を押しのけて、髪を掴んだまま無理やり口づけした。 「は、えっ!? ナ、ナナナナナナナ」 「七?」 「ちっがっ!」 爆発しそうに赤い顔で、そのままベースごとシドは後ろへ引っくり返った。髪を離して、支えてやらなかったからガターンと派手な音を立てて椅子ごと床に転がる。 訳がわからず赤い顔で放心しているシドを見下ろして、一言だけつぶやいた。 (……まっ、悪くなかったかな) ラストステージまで、いい夢見たままイケそうだ。
2007年05月17日(木)
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