 |
 |
■■■
■■
■ 30minutes night fight
廊下の真ん中で、相方に声をかけているみのりを発見した。F組からわざわざここまで来て、何やら紅愛を捕まえている。非力な紅愛にしては珍しく、掴まれた腕を振り払っていた。 「……」 気まずいところを目撃をしてしまったようだ。 そのまま背を向けて、後ろから見てもわかるほど怒りを露にしながら立ち去っていく。後に残されて、しょぼーんとした寂しげな背中。関係ないとは思う。思うけど、見てしまったものはしょうがない。 腹を括って、呆然と立ち尽くすみのりの肩を叩いた。 「どうした?あいつ」 「あ……玲」 細い目からも、悲しみが伝わってくる。眉をハの字にしたみのりが、ゆっくり顔を上げた。 「珍しいじゃねーか。お前らがケンカするなんて」 廊下の雑踏に紛れて、うーんとみのりが唸った。宙を見ながら、何かを思い出すように呟く。 「まだ怒ってんだなー」 「何だよ。お前が何かしたのか?」 言うことははっきり言うタチの紅愛。何か気に障ったら怒るし、冷めるのも早い。喜怒哀楽が激しいところはみのりとは正反対。紅愛が怒っているのを、漠然と把握するしかない気の長いみのりという図がここに出来上がっていた。 「あたしが上に乗っかって寝たの、まだ怒ってんだ」 「……待て。それはどういう状況なんだ?」 廊下の雑踏がありがたかった。何かとんでもないことを突如告げられた玲は、精一杯努力して冷静になってリピートアフターミーを強制した。
時を同じくして、廊下の反対側。 どこからどう見ても、“今、ご立腹です”といった様子の紅愛がこちらに真っ直ぐ突き進んでくる。避けても隠れてもよかったが、何もしていないのに気を遣う義理もないか、と一瞬の迷いのうちに紅愛と突き当たってしまった。よほど前が見えていなかったのか、キャアと可愛い声が上がった。 「紗枝? ごめん、全然気がつかなくって」 「いいけど……何かあったの? すごい怒りのオーラが出てるわ」 ここまで怒っていることを隠しもしないのは、ある意味うらやましい。怒った時に怒った顔って、どうやればいいのかもう忘れてしまった身としては。 直球の怒りがまだ抑えきれないのか、紅愛ははっきりと大きな声で言った。 「みのりが私の上に乗って寝るのよ」 「……そう」 今、動揺を表に出さないでいられたか、自信がない。 周囲はざわざわと騒がしく、先ほどの問題発言を耳にした人はいないようだ。自分の耳の調子が良くないのかな、と紗枝は再度問うた。 「夜はあれほど私が上だって言ってるのに」 紗枝の問いには答えず、余計に違う想像が膨らむ言葉が続く。 いや、違う。多分そういうことじゃないのはないのはなんとなくわかるけど。聞いているこっちが恥ずかしくなってきたので、紗枝はそれ以上の真実を紅愛に求めるのを断念した。
廊下で物別れした二人と、廊下で物別れした二人と別れた二人は、放課後顔を合わせていた。 夕焼けのせいか、玲がアンニュイに見える。 「それはこっちのセリフだ。紗枝も疲れた顔してるぞ」 「そう?」 どうやら昼間の衝撃がまだ響いているらしい。あれから何かにつけて、発言内容が頭を掠めて困った。集中できないこと甚だしい。迷惑料を貰いたいぐらいだ。 「まさか、紅愛たちが……」 「ねぇ、みのりが……」 二人同時に、深いため息と共に。 友人たちの関係の段階について、しみじみと二人は語り合ったのだった。
「紅愛〜」 「……」 「あたし今度は気をつけっからさー」 「……」 「なーなー」 「……いいわよ」 「!」 「仕方ないわね。いい?上に乗ったらダメだからね。昨日は重くて息が止まりそうだったんだから」 「うん!りょーかい」 「どうして下に抱きしめて寝たのに、振りほどいて上に移動できるのかしら」
◆ただ今、ヤフームージックで坂本真綾特集やってます
2007年03月28日(水)
|
|
 |