池ポエム
ハンス



 ハロウィン企画

 紅愛の部屋を出入りする生徒が後を絶たない。今日は来客が多くて、一人去ってはまた現れる。朝からこの調子で、そろそろ昼になる。さすがにくたびれて、「ただ今休憩中」とでも看板を出そうかと考えていたところ。あまりに慌ただしい部屋の様子に、ルームメイトはとっくによそへ避難済み。少しは手伝ってってほしい、と目で訴えたのに軽やかに「がんばってね〜」なんて言って逃げられた。
 まぁ、こればかりは基本的に自分でやるしかないので、本気で手伝ってほしかったわけじゃないけど。
 今日は楽しい西洋のお祭りの日。寮全体が浮かれているのに、どうして参加する気もさほどない自分がボランティアしなければならないのか。散らばった道具をまとめながら、窓の外に目をやった。頭にかぼちゃをかぶった背の低い子が猛ダッシュで駆けて行く。その後ろから、バットみたいな物を持って頭にコンビニ袋をかぶった子がすごい勢いで追撃して行くのが見えた。
 「あんな仮装もありなの?」
 よその国のオバケのことはよくわからない。
 紅愛のところに訪ねてくるのは、大抵がドラキュラの仮装をしたい人ばかり。始めは長いつけ爪を再現したくて相談に来た。ちょっと工夫していい感じのを作ってあげたら、口コミで広がって寮中からドラキュラ志願者が集まってしまったというわけ。
 「うちはドラキュラの館じゃないっての」
 ハロウィンに関心はないけど、一つだけ気がかりがある。この行事はお菓子が欠かせないものだから。
 「……来るかしら」
 お菓子と聞けば学園の至るところに現れる、強くて頼もしい正義じゃなくて紅愛の味方。食材庫に侵入してまでお菓子を求める彼女なら、今日は朝から浮かれているに違いない。会う人会う人に公然とお菓子を求めてもいいなんて、この世の楽園だ。ひょっとしたら、会長たちに勝ってお菓子の学園を作るより楽しそうだ。
 あちこちでお菓子をもらってご機嫌になったみのりを思い浮かべたら、少し胸が痛くなる。もう充分満足して、ここまでは来ないかも知れない。
 「私だけ、なのに」
 みのりにお菓子をあげるのは。
 「誰でもいいもんね。アナタはお菓子が好きなんだから」
 それが二人の始まりなのに。たかが行事で、特別を越えられてしまって。学園の喧騒の隙間で紅愛はため息をつく。
 突然、ノックもなしにドアが開いた。
 「紅愛〜?」
 予想外に、みのりの両手は空いていた。手ぶらでひょっこり現れて、窺うように中を見渡す。
 「どうして……」
 「ん?ノックしたけど返事ねーからさ」
 どうやら暗い考えに落ち込んで、耳に入っていなかったらしい。戸惑う紅愛にはお構いなしに、みのりが颯爽と中に入って来る。目の前に立つと、勢いよく叫んだ。
 「とりっくおあ……」
 (あ!)
 この行事にお決まりの、決めゼリフが飛び出す。心臓がドキッと跳ね上がる。先ほどの自分の悲観が恥ずかしくなる。ちゃんと貰いに来てくれた。忘れてなんかいなかった。ひらがな全開の発音の続きを受け止める。ところが、みのりは宙を睨んで止まった。
 「……あー、えーっと。なんだったかな〜?」
 (トリート!トリートよ、みのり!!)
 子供の学芸会を見守る親みたいな気持ち。手出しはできないけど、心から応援している心境。
 「あっ!」
 紅愛の心の声が通じたのか、みのりの顔がパッと輝く。
 「とりっくおあ、とりーとめんと!」
 ……。
 …………。


 その日の夜、遅くまでのかぼちゃ騒ぎを尻目に、二人の生徒がシャワールームに向かって行くのを多数のオバケが目撃したらしい。
 「ほら、行くわよ」
 「い、いーってば!」
 「みのりが言ったんじゃない。イタズラか、トリートメントかって」
 「う……ちっと間違えたんだってば」
 「でも私はトリートメントを選ぶわ。特別丁寧にしてあげるから」
 「や、やだっ!!」
 ずるずると。非力な紅愛が怪力のみのりを引きずっていく珍しい光景。
 「おい、なんだありゃ」
 頭につけられた耳をしきりと気にしながら、玲は変なものを見てしまった報告を傍らの魔女へ。
 「今日の紅愛は力強いわね」
 「てか、みのりはなんであんなに及び腰なんだ?」
 狼男と魔女は、知り合い二人が闇へ消えていくのを見つめていた。

2006年10月29日(日)



 拍手お礼漫才詰め合わせ

◇ミカどんの部屋でアレな物を発見した紗枝のお話
祈「……ってことがあってね」
星「へー」
祈「もちろんその後でシメて吐かせたんだけど」
星「玲……かわいそうに」
祈「隠すことないじゃない、ねぇ?」
星「どんなのだったの?」
祈「××××みたいな感じの。海辺で」
星「へぇ。可愛いじゃない」
祈「そのあたりに放っとく辺りがうかつなのよね」
星「うっかり者ね、玲って」
祈「紅愛はないの?みのりの部屋で意外なものを発見、とか」
星「みのりの部屋ねぇ。お菓子の本ぐらいしか置いてないし」
祈「アハハ、見たままなんだ」
星「ま、みのりにはまだ早いわよ。そういうのは」
祈「静久は?」
宮「え?」
祈「会長の部屋で、なんかすごいものとかないの?」
星「ありそうよね。あの人、人外だから」
宮「な、ないですよ。ていうか勝手に入ったりしませんから」
祈「今度探索してみたら?なんならカメラ貸すわ」
宮「そんな……多分すぐバレちゃいますよ」

そんなこんなでわいわいする3人娘を、壁の影からそっと見つめる3人。

神「……なんの話してんだよ」
天「神門さんの秘蔵コレクションの話ね」
神「お前には聞いてねーっ!!つーか蒸し返すなっ、頼むからっ!!」
月「……」
神「みのり、おい、どうした?」
月「な、なんでもねーよ。……紅愛に見つかんねーようにしねーとな」
天「わたくしの部屋に不法侵入しようとは、いい度胸ですね」
神「いや、宮本は断わってるぞ」
天「静久が忍び込んで来た時のために、愉快なトラップを用意しなくては」
神「そんなんだから宮本はかたくなに拒否してんだな……」



◇そして私たちは途方に暮れる
天「指を入れてみてもいいかしら……」
宮「ダ、ダメですよ!そんな」
天「でも柔らかそうね。見ているだけで、こう衝動が」
宮「いけません。ひつぎさんがそんなことでどうするんですか」
天「触れるだけでもダメ?静久」
宮「ダメです」
天「第2関節辺りまでなら」
宮「ダメですってば」
天「ならば今日のところは第1関節で我慢するわ」
宮「そういう問題じゃありません!」

神『な、何してんだ、あいつら』
祈『ね、玲。声だけだとすっごく気になるでしょ』
神『気になるというか、覗いてていいのか、あたしら』
祈『たいしたことじゃないわよ。タネ明かし、見てみる?』
神『……』

宮「ひつぎさん、せっかく洸さんが作ってきたケーキに触らないでくださいよ」
天「この美しく滑らかな、足跡一つない雪原のような……触るなという方が殺生ね」
宮「ダーメーでーすー。これから皆さんで食べるんですから」
天「わたくしの指穴付きの方がプレミアがつくのではないかしら」
宮「それやったら皆さんに剣で追いかけ回されますよ」
天「まぁ、それはおそろしい」
宮「多分、私も追いかけます」
天「静久ったら食いしん坊ね」
宮「食べ物で遊ぶ方がいけないんですよ」

神『まぎらわしい会話しやがって……!!』
祈『すばらしい日本語力ね。ワザとやってると思うけど』
神『はぁ。なんかすげー疲れた』
祈『どうする?ケーキ』
神『……それは食う』
祈『会長の指跡付きだったら?』
神『……ぶん殴る』



◇体温が気持ち悪い座り方
神「おら、じっとしてろ」
宮「はい……」
神「こんなもん、うまくやりゃあ一瞬で済むんだ」
宮「はい……」
神「動くなよ」
宮「はい……」
神「動くなよ……」
宮「……っかどさん!!」
神「な、なんだよ、動くなっての」
宮「なら早くやってくださいっ!!」
神「わーってるよ。こういうのは、心の準備がな……」
祈「もー、しょうがないわねー、優柔不断なんだから」
神「おっ、ちょうどいいところに来たな。紗枝」
祈「ん?」
神「ちょっと宮本押さえといてくれ」
祈「いいけど、玲こそグズグズしてないでズバッとやっちゃいなさいよ」
神「任せとけって」
宮「え?ええ??ちょっと、祈さん??」
祈「ってことで、ごめんねー静久」
神「よっしゃ。手出せ」
宮「あの、そんな後ろから羽交い締めにしなくたって逃げませんよ」
祈「あらそう?」
神「うそつけ。お前さっきからいつでも逃げられるような体勢してんだろ」
宮「に、逃げるなんて、そんな、武士の風上にも置けないマネは……」
神「ならなんで中腰なんだよ。紗枝、宮本捕まえたまま座ってくれるか?」
祈「はいはい。さ、どうぞ」
宮「は?」
祈「ど・う・ぞ」
宮「あの、祈さん目が怖いんですけど」
祈「遠慮しなくっていいから」
宮「……どうしてこの年で人の膝の上に座って抱きかかえられなきゃならないんですか」
神「一発で抜けなくてトゲが深く入りこんじまったり、皮膚がめくれてもいいのか?」
宮「……それはイヤです」
神「紗枝は全然気にしてねーから、お前も気にすんな」
宮「祈さんが気にしてなくても私は気にしますって」
祈「水くさいわね、静久ったら。私たちの仲じゃない」
宮「どんな仲ですかっ!!」

指にトゲが刺さっちゃって困ってる静久と、親切にも抜いてあげようとする玲と紗枝。
と、見てる人その1その2。

星「静久……」
月「紅愛〜、玲たち、仲よさそーだな」
星「……仲いいっていうかよすぎて気持ち悪い絵面になってるわね」
月「いいなー、静久」
星「?みのりも紗枝の膝に座りたいの?」
月「うーうん。あたしは座りたい方じゃねー」
星「え?」
月「座らせたい」
星「静久を?それはちょっとムリじゃないの。みのりの方が軽いんだから」
月「……」
星「?」
月「紅愛って」
星「??」
月「にぶいな〜」
星「え、なになに、どうしてため息つくのよ?」

2006年10月22日(日)
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