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■ 耳鳴り
部屋の中は静まり返っていた。外からセミの声が止むことなく続く。永遠に鳴き止みそうにないそれが、焼けたコンクリートの壁に反響する。 気づいたら部長がすぐ後ろに立っていた。 「なに」 じわじわと頭の中に音が染み込んでいく。知らぬ間に、深いところに埋められて、いつも終わらない音となって奥で響く。 「そっちこそ。さっきから呼んでるのに」 わざと頬を膨らませて拗ねた素振り。もう子供は半分ぐらい卒業しているのに、いつまでも彼女は子供のようにしている。それがなんなのか、知っていてもとても言えない。 永久に在り続けるようで、実は似たような違うものが生まれ続けている。 「じーんない」 シャツの袖を引かれた。 「だから、用があるならそこで言えば。聞いてるから」 「本当に聞いてるの」 空を支配する音に混じって、かすかな雑音のように感じた。空気の隙間をわざわざ一定量で、吹き抜けていく。陣内はもう彼女の方に向き直っていた。 頭の中がうるさかった。 部長の瞳が鈍く光る。 「ねぇ」 彼女の頭をそっと撫でた。お互い、遠慮がちに手を伸ばしていた。 夏の教室で。セミの声を聞いて。部長の顔の隅々まで、ピンセットで蝶の標本に触れるみたいに。
2005年07月22日(金)
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