池ポエム
ハンス



 犬の生性、猫の霊性

 犬は生き物に近くて、猫は幽霊に近い。ような気がする。猫、不気味なモチーフにされることも多い。犬はそうでもない。化け猫ってあるじゃん。でも化け犬はないよな。
 あるところに、霊感の強い一族がいて、昔は巫女やったり神官やったりしてた家系なんだけど、今では廃れちゃって普通のサラリーマン。
 小芝睦希はその家の長女にして、一人暮らしの大学二年。しかし小芝家の人間としては溢れ余る霊感を自在に操るのが必須の掟。一人暮らしでも修行できるようにと、実家から送りこまれたのが“ネコ”のヤジさん。
 睦希は猫好きというわけでも、かといって嫌いというわけでもない普通程度の動物好きなので、別に霊感トレーニングマシーンがネコの形態をしていることには不満はなかった。普通の猫よりずっと知性もあるからしつけの必要ないし。もっといえば人間と会話できる、このネコ。
 ヤジさんは睦希を見て語る。“こいつぁ手がかかりそうだ”
 睦希は怖がりだった。エクソシストはCMが映ると目をつぶり、バイオハザードはやってみようとして最初の廊下の角が曲がれずに電源を切った。霊感があるからそこかしこに霊の気配を感じるので、暗い廊下は一人で歩けない。ぶっちゃけ夜トイレに行くのも怖い。けど一人暮らしだから目つぶってダッシュしてる。下の家に迷惑だ。いや、睦希は平屋暮らしなんだけど。
 ネコを抱いて、心を通いあわせること。それが霊感を操るコツだと、二つ下の弟は言った。こいつは一足先に修行を終えている。
 ヤジさん。
 呼ばれると霊ネコは立ち上がり、遠慮がちに手を差し出している主人(もしくは生徒)の懐に飛び込んだ。手荒ではないが、どこか頼りない手つきでネコを抱える。そっと、少し優しすぎるくらい背を撫ぜる。
 あったかいなぁ。
 “いい加減半袖はやめとけ”
 衣替えってめんどうですよね。


2004年10月16日(土)
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