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■ 砂漠を渡る電鉄
ピンポンパンポン。 操舵の斜め上辺りにぶら下がっていた、ボロのスピーカーが吠えた。 「なんだ?こんな時に」 「『あーあー、ただ今マイクのテスト中。本日は晴天なり』」 涼しげな声だった。微妙に棒読みの。 「誰だ!」 「『こちらは、最後尾車両のマイクで通信中』」 「最後尾?人が乗ってたのか?」 「『あんたは、この仕事を引き受けた配達人の三鞍だね?』」 「そ、そうだけど」 「『私はマウリーツィオ・カシオ。配達人だよ。今日は特別にあんたを助ける』」 ピーピーピーという音がして、そこで声は途切れた。 ガタガタからゴゴゴゴゴという音に変わりつつある車輪の音が響く中、確かに自分はスピーカーから聞こえてくる声と会話した。 果たして、人間か。 荷物以外のものを載せた覚えは全くない。荷のリストの中に、人体という単語は見当たらなかったはず。 「今のは……幻聴か?」 切羽詰りすぎて素敵な夢が垣間見えたのかも知れない。もうそうなったらおしまいだ。冷静に対処とかそんなレベルではなくなっている。それとも、もうすでに素敵な夢の一部に足が浸かっているのか。それは別名棺桶とも言う。 「棺を用意されるには、少し早いなぁ」 マイクのスイッチはONの方に傾けたまんまだった。 「『その通り。君はまだ若い。先は長いぞ、諦めるな』」 「つーか、アンタは誰だ。本当に人間か?」 ボロい見かけによらず、このマイクは小さな小さなつぶやきすらも拾っていたらしい。 「『だから名前はさっき言っただろ。信用してよ』」 「いきなり人が乗ってないはずの列車のスピーカーから話しかけられて、信用できる奴がいるならお目にかかりたいね」 「『それがねぇ、信用するしかない状況ってあるでしょ。こっちだって命は大事にしたいもん。顔も見たことがない君と力を合わせて、明日の太陽拝みたい』」 隣の車両から男の話し声が聞こえた気がする。 「わかったよ」
2004年02月23日(月)
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