池ポエム
ハンス



 待つ家へ

 タバコ屋の角を曲がって、茶色い毛長の犬がいる家の前を通って。
 小さなわが家。二階建ての鉄筋アパート。その二階の端。
 205号室。
 鍵を差さなくてももちろん開いていた。


 『先生の彼女』


2004年01月23日(金)



 依り

 空には無数の星。明日の天気は晴れ。
 医者は一人立ち上がり、素晴らしい空に酒瓶をかざす。白衣が暗闇にはためいている。
 「……」
 過ぎていった日々と、過ぎていった人。
 目をつぶると自然に映し出される。酒の力はどんな劇場よりも恐ろしい。
 「ドクター。泣いているのか」
 背後から無駄にでかい仲間が近づいてきた。
 「バカ言うな。お前、わしが泣いてるとこ、見たことあるか」
 「ないな」
 背が高ければ、手も大きい。体も大きい。
 全身に包み込まれる。
 「泣いてるな」
 乾いた声をしていた。


2004年01月09日(金)



 雨と泪

 「清磁が泣いてるの、久しぶりに見た」
 彼女は最近大人になった。久しぶりに見せた泣き顔でそんなことを思った。昔は珍しいもんじゃなかったから。普段は無表情なのに千明の前ではよく泣いた。彼女が意外に泣き虫だと知るのは千明と他数名しかいない。
 「泣かなくなるってのは、大人になるってことなんだね」
 俯いて膝を抱えている彼女の髪を撫ぜる。だから正確には泣き“顔”じゃないけど。顔は本当に一二回しか見たことないけど。
 「……千明」
 「ん」
 枯れた声で呼ばれる。
 「どうして、いつも」
 しっかり膝を固定している両腕から、頭が少しだけ浮上する。くしゃくしゃになっていた前髪が余計乱れる。
 「さぁね、なんでかね」
 たまには、見たいと思った。今まで忘れていたのに。優越感じゃなく、嗜虐心からでもないと思う。
 雨降りの日は空気が湿るように。
 この人が泣かないと乾きすぎるのだ。色々と。


2004年01月02日(金)
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