
胎蔵界曼荼羅 天鼓雷音如来
Shinchanには本当はお兄さんがいたのです、でも生まれてすぐ死んでしまいました。なのでお父さんもお母さんも心配で心配でしかたありませんでした、お母さんは大きなお寺や神社に何度も行って・・・神様、仏様、今度生まれてくる子も命が儚かったらウチを身代わりにして生かしてやって下さいませ・・・とお祈りしました。
お父さんは色々な本を買ってきて、お産について勉強しました、でも大きな病院が遠っかったので、知り合いの助産婦のお婆さんにお願いしました。

Shinchanは空を飛ぶ卵から見ました、それは大好きなお父さんとお母さんが裸かんぼーになって一緒に寝ているのです、・・・はやくお家に帰えろー・・・急に細いトンネルにおっこちました、スーと落ちていきました。
お星様がたくさん輝いています、お母さんは子供の時阿蘇山に遊びに行きました、今にも落ちてきそうなお星様を手を伸ばして取ろうとしました、すると金色の光の玉が現れて、目が眩みました。
・・・あー今度の子が来た・・・
お母さんは夢を見ていたのです。

「まー玉のような男の子」「んまーこげな可愛いかことー」
お父さんは赤ちゃんの泣き声を聞いて涙がポロポロ出ました。
Shinchanはその時、雷さんの音を聞いていました・・・そして・・・「Shinどん・・・Shinどん・・・」という懐かしい声がしました。
| 2002年10月14日(月) |
INTERMEZZO.No2 |
Shinchanは大おじいちゃんに手を繋がれて歩いたことは覚えてました、・・・Shinどん・・・Shinどん・・・と言って大おじいちゃんは光に包まれたお船に乗って帰っていったような気がします・・・すると白いもやもやした綿菓子のような階段が見えてきました、そこには大勢のShinchanのようなちっちゃい子が並んでいます、女の子もいます、Shinchanがとぼとぼ歩いていくと、白い柔らかそうな服を着た綺麗なお姉さんが手招きしています。
そしてちっちゃい子の列に着きました、Shinchanは女の子の次ぎでした、よく見ると違う列には、色の黒い子やお城のような金色の髪の毛をした子もいます、前にいる女の子は黒いおかっぱの子です・・・皆何も喋りません。

Gaia and Uranus
前にいるおかっぱの女の子は振りかえってShinchanを見てニコっとしました、Shinchanもニッコリしました。 大きな卵が沢山並んでいます、そしてちっちゃな子達は又違うお姉さんに卵の蓋を開けてもらって順番に乗っています。
おかっぱの女の子が手でバイバイして乗りましたShinchanもその後に乗りました。Shinchanはその女の子と一緒に乗りたかったのです。
なんだか凄い早さで、お花畑や河、山、海が過ぎていきました。
そしたら沢山のお家が見えてきました、Shinchanのお家も見えました、鳥さんのように空を飛んでるみたいです。
するとShinchanのお母さんとお父さんが一緒に寝ている様子が見えました、Shinchanは声をだそうとしますが出ません・・・。
Shinchanは又水の中でブクブクしているような気がしました。
| 2002年10月12日(土) |
INTERMEZZO.No1 |
Shinどん・・Shinどん・・・
「・・・ん?ブクブクしてたのに・・・ここ何所?・・・髭のおじいちゃん?」
そこは大きな大きな河のそばでした、Shinchanが目を覚ますと、立派なお髭で優しい目をしたおじいさんがShinchanを抱えていました。
「Shinどん、目が覚めたかのー」
「・・・・・・」
Shinchanが好きな白髪先生が描く絵のような色々な色の雲が浮かび、金色の光の帯びが空から何本もさしていました。そして回りにはお花畑があり、いい臭いがしてちょうちょが飛んでいました。
「お母ちゃんは・・・」
「んーもうじき会えもうそ」
「おじいちゃんだれ?」
「Shinどんのおじいちゃんのおじいちゃんでごわんど・・・」
「・・・・・」
「台風は?・・・どうしてShinchan、ここにいるの?」
Shinchanは何故か言葉がスムーズに出ました。
「そいはな、Shinどんがここに来るんにゃ、まだ早いんでのー、こうしてこん爺が母どんの元に送っていく事になったのじゃよ、Shinどんは未だ言葉が喋れんのが都合よかったのじゃなー、こげん稚児には早すぎる、母どんがどけん悲しむこつかー」
「向こうに見える大きなお城があるじゃろ、あそこに行くとShinどんはもう母どんの元には戻れんのじゃ、じゃどん戻るんには順番があってのーShinどんはまだなんじゃ、そいでんこの爺様がShinどんに話ばーするとよ」
おじいちゃんは山高帽に黒いコートを着ていて、凄く立派に見えます。
「Shinchanのおじいちゃんはヴァイオリン弾くよ、でおじいちゃんは?」
「あれはのーオイの孫じゃ、Shinどんはまたその孫ということじゃ、まー解からんでよかよ」
するとワンちゃんを連れた太ったおじさんがノッシノッシとやって来ました。
「おーShinどんね、こん子ね、かわゆか稚児でごわすなー、こんりゃはよー帰さんとな、Shinどんな!こん新太郎爺様の話をよく聞きやんせ、オイと爺様とは夢ん中で、いつんでも会えるでごはんど、そんち又会いもうそナー、可愛いかね、はよー帰りゃんせ」
と言って太ったおじさんはニコニコ笑いながら、ワンちゃんと一緒に小さなお船に乗ってバイバイしました。
「あん人はせごドンちゅうてのう、オイを仏蘭西国ちゅう国に留学させたせんせ、なんじゃ、こん話はShinどんの爺様も知らんとよ」
「じゃ大爺ちゃんもヴァイオリン弾いくの?」
「大爺ちゃん!よかよかそいでよか、そんちShinどんも行く仏蘭西国にのー、軍楽隊の勉強に行ったのじゃよ、指揮もドラムも勉強したとよ、オイはな、Shinどんのような頃から鹿児馬で太鼓ば叩いていたんじゃ、そんでニセさーが皆戦争に行っている時にさっきのせごドンに言われて留学ばしたと」
「ふーん、太鼓叩いたの?」
「Shinどんもな太鼓叩くようになるとよ、そん前に音楽の勉強をせんにゃな」
すると遠くのお城の方から音楽が聞こえてきました、お母さんが弾く筝の音と沢山の人達の歌とヴァイオリンやラッパ、太鼓の音でした。そして音楽と色々な光がShinchanを包み、眠たくなりました。
・・・・Shinどん・・・Shinどん・・・元気でのー・・・また・・・会いもうそ・・・


昨日から雨が降りつづけています、Shinchanはお外に出られないので、お絵描きをして遊んでいました。
「台風15号は大型で・・・」
とラジオが喋ってました。「Shinchan鉄砲水が来たらどうしよ、Shinchanが生まれる前、芦屋では鉄砲水が出て沢山のお家が流されたんよ、そして死んだ人もいはったんや、なーShinchanどうしよ、お父さん未だ学校やし・・・」
「・・・・?」
「9月26日14時発表 紀伊水道の南200kmに迫る近畿地方、東海地方の海岸20m/sec以上の強い東風・・・」
とラジオが喋っています。
「・・・ペシュ?・・・」
「そうねーそろそろお家に上げてあげよか、買い物もせなあかんしねーどうしよーShinchan」
突然お父さんが自転車で帰ってきました。
「あかん、この台風めちゃくちゃ大きいは、県の教育委員会から早めに避難するよう電話があってん、母さんもShin坊もすぐ学校へ行くんや、大事な物だけ持って、んーもー後は置いとこ」
「・・・ペシュ?・・・」
「ペスはなーたばこ屋のおじさんに預かってもらお」
「・・・イヤヤ・・・」
「あほなこと言うたらあかん、鉄砲水が出たら皆死んでまうねで、お父ちゃんがあんじょう言うたるから」
「17:00 暴風雨警報発令、早めの避難を勧告します・・・」
「Shin坊、立ちなさい」
「・・・・」
「あんた、ペスは用務員さんとこの子やから、一緒に行ってもええんやないの?」
「あのな、沢山の人が避難してくるねぞ、そんな我侭許されへんのや、さーShin坊行くで・・・・そうか体育道具の倉庫にでもほりこんどこか、Shin坊合羽着てな、ペスは籠に入れてな」
「・・ピ・・ヤノ?」
「もしなー水に浸かってもかわりのピアノ学校から持って来たるからShin坊は心配せんでええのや」
それでレオポン君とキリンさんをお母さんのリュックサックに入れました。
「Shin坊とお前紐で繋いで行けよ、後は俺がやっとくさかい」
風と雨が強くてShinchanは歩けませんでした、木がお化けのように踊っています、ピュ―ピュー音がします、ペスはクンクン泣いています。お父さんは家の玄関や窓を板で打ちつけるので、お母さんとShinchanとペスだけで歩いています。お母さんはShinchanをワンちゃんのように身体に紐を巻いて自分と繋いでます。
「Shinchan絶対この紐はずしたらあかんでー、頑張りや」
でも風が強くてなかなか歩けません、道も川のように水が流れています、他にもリヤカーで荷物やら子供を載せて運んでいる人達がいました。
ペスがいきなり籠から飛び降りました、Shinchanは追っかけて行こうとして、小さな溝に落ちました。「Shinchan!」お母さんは紐をたぐりよせてShinchanを引っ張りました、ペスがどんどん離れていくのでShinchanも追っかけます、でも水が首のあたりまで来たので、ブクブクして、わけが解らなくなりました。


| 2002年10月10日(木) |
おじいちゃんのヴァイオリン |

Shinchanの事を一番心配していたのは、お父さんのお父さん、おじいちゃんでした。「お前が仕事ばかりにかまけるからShin坊の口が遅れてるんや」とお父さんを叱っていました。
Shinchanはおじいちゃんのお家に行くのが大好きです、それは阪神電車という電車に乗れるからです。
阪神電車はかっこよかったのです、一番前が流線型でおもちゃの飛行機のようでした。お父さんを引っ張って、もちろんShinchanは一番前に乗ります、そして梅田駅で降りて、地下鉄に乗りかえるのも好きでした。
「Shin坊よう来たなー、そうかヴァイオリンか、よしよし弾くからな」と言っておじいちゃんは演奏をはじめます、
「・・・・」
「未だShin坊にはこれ大きすぎるんや、この曲はなドボルジャークの新世界ちゅうんや・・・」
元満州映画会社、現在は毛沢東の像が立つ長春電影宮
「おじいちゃんはなー、満州というところで映画を作る仕事してたんや、オーケストラちゅうてたくさんのヴァイオリンやラッパや太鼓でな、大勢の人で楽器弾いて、映画に音楽をくっつけるんや、Shin坊は映画見たことあるか?」
「・・・・・?」
「そうか、今度一緒に行こか、それでな、おじいちゃんはその時、仲間の国やったドイツのベルリンという所へ音楽家を呼びに行った事も何回かあったんやで、あんな素晴らしい音楽を作った国やのになあ、日本と一緒に戦争負けたんや、戦争はあかん」
「満州はひろーい国でな、おっきな真っ赤な太陽が建物も何にもないひろーい畑の向こうにしずんでいくんや、寂しゅうて寂しゅうてな、こうやって、新世界の曲を、よーヴァイオリンで弾いてたんや」