白日の独白
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2005年10月21日(金) 隔たりを暴いたのは。

本当は薄汚い世界を知らなくて、だから僕は暗闇を好んだ。
黒よりも暗い世界に脅かされていないから、寧ろ安住できた。
真実も現実からも眼を逸らして、僕はただ言葉遊びに終始していた。
多分彼女はそうじゃない。
彼女は僕よりもずっとずっとこの世界の仕組みを理解している。
暗闇を排除して、あえて白夜のような世界を選び取っているんだ。
やっぱり僕は甘えていたのだろう。
彼女に会うのが 少し 怖い。


2005年10月20日(木) ひとたび身を離れたら。

階下へ垂れ下がる髪。部屋中をのたくり回る髪。天井から自生しているような髪。

「ラプンツェル」を前にして背筋がひやりとして皮膚が粟立つ感覚。
それは理由なしの生理的嫌悪感。
だけど何も髪だけじゃないと想う。
例えば僕は左手の親指を眺める。
指に張り付いている間は君は僕の一部だけれど剥れたら廃棄物だ。
僕はおもむろに、現時点では僕の一部である爪を噛む。


2005年10月19日(水) 1つの箱には1つの役割。

片手で済まない創作箱を目の前にずらり並べてみて想う。

これらは 記録 だろうか。
それとも 表現 だろうか。
やっぱり 逃避 だろうね。

今日も今日とて僕は、今日の独白を記録して、そんな僕の今日を表現する。
当然の結果として僕は、今日という現実から眼を背ける。
豊田商事の死んだ人は、分単位で行動記録をつけていたというのは事実だっけ。


2005年10月18日(火) 水銀でも飲め。

寒い。
頭が痛いなぁ。
寒い。寒い。
眼が回るなぁ。
寒い。寒い。寒い。
今日も君に電話ができなかったよ。


2005年10月17日(月) 鬼が来る。

これまでだったら気にも留めないような何気なさ。
行為が、言葉が、花浅葱色に変えられてゆく。
ひたひたと聞こえないように浸水してくる。
知らない内に僕は乗っ取られている。
水風船のようにパチンと弾けて初めて気付く。
嫌だ。
僕はお母さんじゃない。
もう二度とあんな目に合いたくない。


2005年10月16日(日) アナタハダレ。

お願いです。
どうか僕の杞憂であって下さい。
また同じことが繰り返されたら、きっとどちらかの血が流れる。
僕は母には死んで欲しくないのです。
どうかお願いです。
僕の杞憂であって下さい。


2005年10月10日(月) 待望の夢。

トイレが詰まって水が溢れる。
どうにかする間もなく水が溢れ便器の外に流れ出す。
どうにもできないままにトイレから飛び出して部屋に逃げる。
扉を閉めたはずなのだが部屋も気付けば水浸しになっている。


中々素敵で頭痛がした。
現実とはどうやら悲劇的な喜劇の模様。
それとも喜劇的悲劇が現実か。
いずれにせよこれは夢の世界の出来事。


2005年10月05日(水) からっぽ。

ついさっき、ある決断を迫られました。
暗闇の未来は見えないのなら薄明の現在を見ようとした。
けれど未来も現在も過去がなければ拓けない。
過去は透明でそして過去には戻れない。
答えを出せない僕は可能性を言い訳にしばしの猶予を手に入れました。
それは『可能性』でも『猶予』でもないのはわかっているのに。
それは『何にもならない』でただ『逃げ出した』のを知っているのに。
何も見えないならば眼を閉じて何も見なければいい。
震える手を握り締めて「きっと寒いからだ」と言い聞かせる。


2005年10月03日(月) 眠り後で目覚め前。

夢が見たい。
夢からはじめたい。
夢に勝ちたい。
だけどもう何ヶ月になるのだろうか。
夢が僕から逃げて行った。
僕が夢から逃げたのだろうか。


2005年10月01日(土) 第三惑星。

結局、僕達の間には解決すべき問題なんてなかったのだ。
一方的に・完全に・決定的に・総じて悪いのは僕。
僕の身体の内部を巣食う蟲の存在。
君の欠点をあえて挙げるならば、多分君は僕を棄てられないこと。
君は割と孤独で、そして孤独を好ましいと想っていないから。
珈琲派の君が珍しくアールグレーを飲んでいたから気付けたよ。


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