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海老日記
管理人(紅鴉)
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2007年03月28日(水)
伯爵と25のシチュエーション


「あれ? 引っ越したんじゃないの?」
「まだ二三日いるよ?」
「……僕らつい昨日感動の別れをしたところなのにそりゃないですよ……」





2007年03月22日(木)
伯爵と25のシチュエーション


 スーツ姿の男が、花束を持って待ち構えている。
 次にこんなシチュエーションに出会えるのは、プロポーズされる時くらいだろう。しかし、それも一体何十年後の話だろう。
「T先輩、卒業おめでとうございます」
 スーツ姿の男は自分にその花束を差し出した。

「ありがと」
 受け取る。
 受け取って、喋ってみた。
「似合わないね花束」
「いえ、とてもお似合いです」
「君に似合わないね」
「……そうですね」
 この男は何を言っても笑うなあ。
 なんて思って、彼女は続けた。
「でも、こんな日くらいなら、誰でにでも花が似合うね」
 
 スーツ姿で、花束を持って待ち構えていた男は、そこで泣いた。

「ちょっと、そこは私が泣くとこなんだけれど……」
 花束を肩に担ぎ、彼女は空を仰ぎ見た。


 桜前線は、遅刻している。

 



2007年03月15日(木)
伯爵と25のシチュエーション


「Sくん、まだいたんだね」
「ああ、伯爵か」

「Sくん、結局どうするんだい?続けるの? やめるの?」
「なんでそんなにしつこい」

「気になるじゃない、友達として」
「そっか……」



「続けることにしたよ」




「へえ。なんで?」
「さあなあ。今日T先輩と話しててな、まだ、俺にも後輩に伝えられること残ってるんじゃないか、と思って。そうしたら、少しやる気が出た」

「忙しいよ? できるのかい?」
「できなくはない。ただ」


「ただ?」
「不安だ」




「大丈夫さ、君はこのカンテラ伯爵の友達だ。きっとうまくいく」
「その言葉のどこに説得力があるんだ?」

「でも、少し安心したでしょう?」
「……うん、って言ったほうがいいのか?」



 



2007年03月13日(火)
伯爵と25のシチュエーション


 カンテラ伯爵は憤慨した。
「僕の家は駆け込み寺じゃないのだよ、わかってるかねR」
「わかってる……けれど」
「けれどじゃないのだよ。僕は晩御飯の最中だったというのに、食事の時間まで邪魔されては、仏のカンテラとてご立腹だよ」
「……ごめん」

 カンテラ伯爵はため息をついた。
「まあ、そんな君に『それでもいい』なんて言ってあげられるのは、僕くらいなものか」

 



2007年03月12日(月)
伯爵と25のシチュエーション

 男の部屋。ソファに仰向けに寝そべる女は、キッチンに立つ男に訊いた。
「ねえ、Qさん」
「なんだい」
 男は背中で答えた。女も、天井を見上げたまま、言った。
「どうか笑わないで聞いて。ねえ、Qさんは、私を好き?」
 男は動じない。
「脈絡がないな」
「ねえ、答えてくださいな」
「好きですよ、それが何か?」
 女は続けた。
「Qさんは、私のことを許してくださる?」
「大概のことはね」
 そこで、身体を起こして、女は男を正面に、訊く。
「あなたのこと愛してもよろしいの?」
 男は動じない。
「どうぞ」
 そこで、料理ができあがった。
「さあ、食べよう」

 男が、居間に入る。
 女は、なおも訊く。
「私達、恋人になってどれくらい経つのかしら」
「さあ、二年目突入ってところだろう」
 二人はテーブルに向かいあい、腰を下ろす。
「ところで、どうしてそんなこと訊くんだい?」

 女は窓の外をちらりと見た。
「ええ、昨日は私の誕生日だったけど、いつ気づいてくれるかなあと思って」

 男は動揺した。

 



2007年03月10日(土)
伯爵と25のシチュエーション





「昔、おばあちゃんが言ってた。理想の男性っていうのは、一緒にいてほっとできる人のことなんだって」
「そうかい、で?」
「わからないかなあ、こんなことカミングアウトしてるんだから……」
「一緒にいてほっとする?」
「……、言わせるなら最後まで言わせてよ」







「なー伯爵。人前であんな問答をするあいつら見てるとなんかいらいらしてこないか?」
「P君にとっては、理想のカップルではないのでしょうね」