独り言
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2005年04月30日(土) 『acidrain』 #7/悪

海水を濾過した後に電気分解し極めて純粋な水を抽出
その水に高い圧力をかけ積乱雲の素を作り出し空に放つ

その一連の工程を通称『レイン・ソース』と呼ぶ

この一大プロジェクトは当初の数多い批判や懸念を大方裏切り
年間平均気温28%減という目覚ましい結果を産み出した

しかし悪の根である大気中の二酸化炭素量は以前として増え続ける一方で
見たくないものは見ない
便器に蓋をしてその上で食事をする様な考え方は
今も昔も変わらないのだ

世界はもはや失敗から学べない程に
際どい生命線にしがみ付いている

悪に悪を重ねて


2005年04月27日(水) 『acidrain』 #6/レイン・ソース

僕は…蚊とまではいかないがアヒル程度の扱いしか受けられない人生に選ばれた

そんなアヒルは世界に雨を降らせて餌を得る

第49セクター
職務は『レイン・ソースの管理・運営』である

21世紀初頭から地球の温暖化は加速の一途を辿り
人類のみならずあらゆる生命の存続の危機を予感させる程の驚異となった
深刻視した国連は『世界温暖化対策評議会』なるものを設立し
頭脳を集め対策案をひねり出し
研究に研究を重ねた結果
一つの結論を導きだした

それは
人為的に雨を降らせて温度調節するというひどくシンプルで馬鹿げたものだった


2005年04月23日(土) 『acidrain』 #5/第49セクター

朝のこんな他愛も無い時間も僕にはとても大切なものなんだ


第49セクター

それが僕の職場であり病巣である

2045年
この国の抱える負債は誤魔化しの利かない位置まで積みあがり
実質的に資本主義は崩壊した

国土は細分化され
それぞれの自治体が独立国家の様に独自の経済政策を立ち上げ
この国の延命に努める事となった


中でもこの東京は異様を呈しており
かつての資本主義の名残を引きずったまま
あのカースト制度を連想させる程に
貧富の差の激しい構造となっている

王の子は王であり
蚊の子は蚊である以外ないのである


2005年04月21日(木) 『acidrain』 #4/煙草

熱く尖ったコーヒーを一口含み
そしてゆっくり胃へと流し込む
食道を伝って流れてゆく液体は
その強すぎる熱さとは裏腹に
何故かいつも僕をやさしく溶かす

そして深く息をつき
今度は煙草の煙を深く吸い込む
肺の毛細血管が眩暈を起こし
僕は立ちくらみにも似た浮遊感を知る

そしてまたコーヒーを口に含み
同じ一連の動作を繰り返し繰り返す

何の知性も感じさせないその反復運動に
一つの疑問も感じない自分を変に誇らしく思ったりして
僕は驚く程安物の幸福にいつだって陶酔しきってしまうのである


時間はAM7:03

朝が煙る


2005年04月20日(水) 『acidrain』 #3/coffee

蛇口をひねりポットに水を注ぐ
その間にも体は少しづつ現実を捕らえはじめ
ふらついていた足元も
なんとか垂直を取り戻すことに成功した様だ

しかし変わらず部屋はしんから寒く
灯したガスコンロの炎だけがこの世界で唯一の温もりを感じさせていた

窓の外は相変わらずの薄暗がり
…もうどれくらい陽の光を目にしていないだろう?

沸点を越え乱雑なビートを刻むお湯をカップに注ぎ
僕は偽りのコーヒーを拵える


AM6:43

消さずにいたガスコンロに寄り添い
その炎の温もりから
僕の血液は純流を
そして僕は煙草の火を授かった


2005年04月19日(火) 『acidrain』 #2/目覚め

AM6:30

またいつもの様に目覚まし代わりのTVが僕を夢から引きずり堕ろす

昨日の出産から殺人までをまくしたてる様に告げるブラウン管を空で眺めながら
僕は冷えきった部屋の中
今日も夢と現実の温度差に悩まされる事になる



沖縄では観光融資問題に端を発しある県議会議員が失脚したという


…だからどうしたってんだ

それでも地球は軽く回るし
僕の素晴らしく退屈な日常にも何の変化も無い


起き抜けに吐く悪態は嫌な味がして
僕は未だに重力を理解しえない肉体を引きずり
仕方なくキッチンへコーヒーを煎れに向かう


2005年04月18日(月) 不定期連載 『acidrain』 #1/混沌と混乱の最中

16時24分と酸性雨

36.5℃の僕と90°にも満たない鋭利な曲がり角

『無意識はあくび』と溺れる現実

女1の台詞:「たった一度きりの人生、楽しまなきゃ損じゃない?」

好奇心はエナジーと断崖絶壁にロープ

電気信号

……ッ…ツーツツッ……

シナプスがちぎれて張り付いた4月の花粉症と16時43分

待ち人は来やしない

擦れ違う36.5℃と36.8℃


頭の中はいつだってこんな具合に
ある断片とある断片が勝手気ままに浮かんでは消える

僕は始まりの季節に立って
寝呆けを正当化しようと目論む


2005年04月10日(日) 童話/原案38-B

彼女は四月の風に吹かれて
草木の囁きにうつつをぬかす

太陽の誘惑にあらがえずに
彼女は彼女自身を裏切り
堕落してしまうんだ

いつだって彼女を見下ろす彼女がいて
言葉にはせずにこう呟く

「自堕落なハニー

君を愛している
だから君を許すことにするよ
眠りの中で聞いておくれ
伝えたいことがあるんだ

自堕落なハニー

大切なものが一つあればいい
それだけで
日曜の夕暮れだって
好きになれるから

自堕落なハニー
君を愛している」



そして彼女は夕暮れの中で目覚め
染まる部屋の中
笑顔とさよならを探した


2005年04月03日(日) 何処へ

東京MXテレビで今日から毎週日曜日に『西遊記』がO.A.される。


…なんで?

と思いつつひとりニヤつきながら見てしまった。

エンディング曲は世代を越えて歌い継がれていくべき名曲だと…思うよ。



金曜日にはパールジャムのMTVアンプラグドライブをO.A.…

…何がお前をそうさせるんだい東京MXテレビよ?

何処へ向かう?


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