ぼくたちは世界から忘れ去られているんだ

Mail   Home   Bbs

Back   Index   Next

2002年11月16日(土) 愛知ってる?
 永遠に続くかのような薄暗がり。多分ここは路地裏。

 わたしは敗北者のように地べたに座っていた。というより、座るしかなかった。ハルのせいだ。
 ハルはすごくうれしそうな、どうしようもなく綺麗な笑顔を浮かべて、わたしを殴る。蹴る。ティーシャツのすそをハサミで切る。
「おかしいね。本当に、おかしい」
ハルがそう云って、笑う、子供みたく。
 やめて、とわたしは小声で云ってみる。小さな小さな声で。
「煩い、黙れ」
 ハルがわたしの頬を平手打ちする。パン、とカタカナでいい音がする。
「パン、っていったね。すごくきれいだ」
 ハルがわたしの鞄の中をあさる。ピンク色のポーチの中から、口紅を取り出し、わたしの頬の上を滑らせる。何か字を書いているようだ。そして、これまたポーチの中から鏡をとりだし、わたしの醜い顔を映す。パン、と書いてある。
「あんまりいい音、したもんだから」
と、云って、ハルはわたしの唇に、口紅をそわせ、そしてまた鏡。いびつに縁取られた唇は、子供がハンバーガーを食べた後のようだ。
「やめて、やめて、やめて」
ハルが突然泣き出す。わたしは何もしてないのに。
「助けて」
そう云って、ハルは逃げ出した。路地裏の向こう、光の世界へ。
 その後姿は本当にきれいだったよ。


My追加


Design by shie*Delicate Erotic
thanks for HTML→HP WAZA !
thanks for photo→K/K