酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2007年09月20日(木) 『コールドゲーム』 荻原浩

 高3の夏休み、光也は進む道が見つからない。甲子園の夢破れ、野球部を引退。母には進学を勧められているが決められない。久しぶりに幼馴染・亮太に呼び出された光也は厭な話を聞く。中学生の時の同級生が次々と襲われている。亮太が言うにはトロ吉の復讐ではないかと。トロ吉は亮太を筆頭にいじめに壮絶な遭っていた少年だった。亮太と共にトロ吉を探しはじめる光也が辿り着く真実とは・・・。

 なんともぎちぎちと心に痛い物語。おそらく読む人は主人公の光也にかなり感情移入出来るのではなかろうか。光也は亮太のようにいじめをしてはいなかった。だがいじめを止める事も出来なかったのだから・・・。このことに対する作者の糾弾は的を射ていると思う。またいじめられた少年に対する作者の批判(意見)もソノ通りだと思う。誰だってスケープゴートの代わりにはなりたくない。その心根が問題なのだとは思う。思うケレドモ・・・壮絶ないじめの対象にはなりたくない。堂堂巡りだ。主人公の光也が最後に自分の罪を自覚して誓うシーンがあって、その言葉の強さには違和感が・・・。もう少し違うカタチにおさめられなかったのか、と。若さゆえのあの語気の強さなのか? 本当に痛みを感じたのであればもう少しもう少し柔らかな言葉になるのではないか、と思ったのだった。

 トンボの羽根をむしるのと人の命を奪うことの区別がつかない、頭の中味はガキで、体だけ鍛え上げられた完全武装の兵士。そんな人間を想像して光也の心臓はスピードを速めた。しかもそうしてしまったのは、自分たちなのだ。

『コールドゲーム』 荻原浩 新潮文庫



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