酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年09月25日(月) 『空白の叫び』上 貫井徳郎

 久藤美也(よしや)は名前が女の子のようだと小学時代に苛められていたが、中学になり力で周囲をねじ伏せるようになった。己の中に渦巻く瘴気に悶々とした日々を送る久藤の前に邪魔な女が現れた。葛城拓馬は頭脳明晰容姿端麗しかも裕福な家庭に生まれついたが、美意識と自制心で奢ることなくクールにそつなく毎日をやり過ごしていた。ただひとつの問題は自分の心を乱す不愉快で愚鈍な幼馴染の存在だった。神原尚彦は母に見捨てられ、祖母と叔母に育てられた。神原に優しい叔母だったが、神原の母である姉には激しい嫉妬と怨みを持っていた。3人の14歳の少年はそれぞれの毎日の中でトンデモナイ事件を起こし、少年院という地獄で出会ったのだった・・・

 うーん、恐ろしい。こういう内容を情け容赦なく差し出す貫井徳郎さんの精神力がとてつもなく恐ろしいと感じました。すごい作家さんだなぁ。素晴らしい。14歳という年齢は儚くて揺れ動いていて、間違えば3人が陥ったような地獄へ落ちていく・・・。まだ幼い彼らは人生をやり直す事ができるのだろうか。一度大きな間違いを起こした人間に世間は情け容赦ないから。どうしても色眼鏡をはずせない。また何かしでかすのではないかと言う恐怖を持って接してしまう。間違いを起こした少年達の心が丁寧に克明に綴られた上巻。下巻で彼らに救いはあるのかしら。

 なぜなら、言葉のやり取りとは心と心の接触だからだ。言葉が通じない相手と接すると、心が傷つく。痛みに悲鳴を上げる。それは皮膚を直接鑢で擦る痛みと、なんら変わりがない。

『空白の叫び』上 2006.9.20. 貫井徳郎 小学館



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