ソレイユストーリー
▽▲▽▲▽ ソレイユストーリー ▽▲▽▲▽

2003年07月08日(火) 10話 『リアラと子供達』


----ある晴れた日の入り江にて


今日も8人の子供達と母親代わりのリアラは、
一緒になってせっせと働いていた。
浅瀬の養殖槽でわいわいと1枚貝を収穫している。

1人の子供が、ふざけて岩の割れ目に身を隠して、
皆が驚くかどうか、様子を伺っていた。
彼の背後で何かが蠢く。
そこはオオガニの巣だった。
オオガニはおとなしい生き物で、普段人間を襲う事はまず無い。
しかしこの日に限っては違った。
いま、産卵期に近づいてメスは気が立っていたのだ。
ズカズカと、テリトリーに踏みこまれて本能的に反応した。
男の子は足首を強く挟まれた。

「ぎゃぁ〜〜〜〜っ!」

皆が振り向く。
男の子が這う様に岩穴から出て来る。
その後ろから、卵を抱えたメスガニが付いて来る。
細い足首にギザギザがめり込んでいた。
いまにも引き千切られそうだ。

「・・・・・・!」

リアラは声も出ない。
年長の少年が、とっさに電撃ロッドを構えながら突進していく。

「水っ!」

リアラは叫んだ。

「水があるわ!」

そう。磯の水溜りでこれを使用しては危険なのだ。
感電してしまう。
一瞬ハサミが緩んだ隙に、男の子は這いつくばって逃げた。
年長の少年は、岩場を伝いよじ登ると、カニの真上から電撃を食らわした。

バチバチっ!

カニは痙攣して動かなくなった。
少年は、わぁわぁ泣いている。かなりの出血だ。
ほっと胸をなでおろす隙も無く、こんどはつがいのオスガニが襲ってきた。
男の子を抱き抱えて走る少年。
皆を高台に誘導するリアラ。

オスガニは触覚を振るわせながら追ってくる。
ここは足場が悪すぎる。
たちまち追いつかれた。

リアラは肩ほどの高さにある岩の割れ目に子供達を押し込む。
最後に自分が入った。水が脛の位置まで溜まっている。
波が打ち寄せては雨のように飛沫がかかる。
カニは大きなハサミを振りまわす。
岩の割れ目は、奥に行くにしたがって広く高くなっていた。
カニは岩場ニよじ登って隙間にハサミをねじ込んでくる。
・・・電撃は使えない。
カニが諦めて帰るのを待つしかない。
少年はバンダナで男の子の足首を止血した。

「お母さんっ。どっどうなるの?」

「大丈夫ですよ。私がついています。」

声が震えていた。
その時長い髪の女の子が叫んだ。

「見て見てっ、でっかい卵があるぅ〜!」

「ほんとうだー!」

子供達は突き当たりの暗がりに、一抱えもありそうな卵(?)を見つけた。

「ねえお母さん、なんの卵?」

解からない。
こんなもの生れてはじめて見る。
暗くてよく見えないが、確かに卵のようだ。
リアラは恐々触ってみた。
引っ掻いてみた。叩いてみた。
ゴーンと共鳴した。
これは・・・卵ではない。金属だ。
そんなことをしているうちに、カニは諦めて何処かへ行ってしまったようだ。
長い髪の女の子が、「卵型」の下部に深く凹んだ部分を見つけた。
そこに一枚貝を剥がす時使う棒をねじ込んでみた。
子供らしい好奇心だが・・・


ブーーーーーン


物体が鳴った。
皆固まる。


ブーーーーンブーーーン


ガァ〜〜!


卵が割れた。
いや正確には観音開きに開いた。
中に何かがある。
白い人形がしゃがんでいた。
なんだこれは。

「お母さんお母さん! ここ出ようよぉ!」

そうしたほうが良さそうだ。
怪我の手当てもしなければならない。
ぞろぞろと出口に向う一行。
おもむろに,
彼らをを呼び止めるかのように、人形が喋り出す。

『このたびはクリヒバウム航空をご利用戴き誠にありがとうご・・・』

 


                     つづく




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