ソレイユストーリー
▽▲▽▲▽ ソレイユストーリー ▽▲▽▲▽

2002年03月15日(金) マーズウォーカー




砂丘に続く彼の足跡は

蟻の行列にも似てどこまでも果てしない。。。

天界の観察者は、絶望の眼差しを向ける。

地平線の墓標は、かつての高層ビル郡。

傾(かし)いだその姿は、哲学者の風格を漂わす。


六本足の彼が、歩みを止めたのは

何も発見できなかったから・・・

この世界に、命あるものは残っていなかった。

観察者の予測どおりとはいえ

虚しいものがあった。

彼は、全ての足を切り捨て、ブースターに点火した。

天界へと上昇しながら見下ろす。



嘗(かつ)ての蒼い惑星、

火星と呼ばれる赤い球体が、小さくなってゆく。

全ては、彼の歪んだ瞳に映って美しかった。

     





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野生化した偵察グライダーが、コンドルの様に旋回する赤い空・・・

扇状地の景色は、スケール感のないパノラマ。

プラチナの輝きを放つ球状都市郡は、

ココアケーキにまぶしたアラザンを思わせる 。

六本足と五つのカメラアイを持つ彼・・・残された者

この赤い惑星に生命を発見したことは、天空の観察者へは知らせなかった。



あれは偶然だった。

彼のソナーは足元の巨大な空洞をたどった。

球状都市は、地底を移動しながら軌跡に壮大な迷路を残していく。

。。。果たして扇状地に半身を浮上させた生命球のコロニー。



〈あの中の住人がどのような者であれ、そっとしておくべきだ〉

彼の人工知能は判断した。

そして・・・ここを旅立つ日の遠くないことも

知っていた。

上空を舞う仲間たちが、虚無の天空にむけて、

最期の記念写真を送信した。

          
                  
 〜END〜


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