今はここに肉体があって、
目があって色んなものが見えて
筋肉があって動いて
指があって色んな物に触れて
髪の毛があって美容院に行って
顔があって化粧をして
心臓があって動いて
気持ちが動いたりして・・・
感覚がある。
でも、いつかはなくなる。
きっと全部なくなる。
この、指も皮膚も目も耳も髪も心臓も感覚も・・・きっと全部。
もしかしたら気持ちや思いも無くなってしまうのかもしれない。
今日、とたんに恐くなった。
今日、彼の家の近所で問題があった。
今日、1人の命がなくなった・・・
彼は家に居た。「誰か助けて!」と言う女性の悲鳴を聞き
彼は一目散に駆け付けた。
何かが燃えていた。
彼は父親と消火器を持ってその燃えているものの火を消し始めた。
最初に見えたのは”手”だった。
彼は火を消すに連れてその物体が何か分かっていながらも信じられなかった。
だから”きっとマネキンで誰かのいたずらだと思ってた。”
しかし、火を消し終わった瞬間、
”ジュー”という肉の焼ける音で確信に変わった。
その”燃えていたもの”は女性だった。
火達磨になってマンションの2階から落ちてきたらしい。
しかし、消火活動をしたのは彼と彼のお父さん、そして近所のおじさん
3人だけだった。
彼の家も、近所のおじさんの家もそのマンションから5軒以上は離れている。
そして驚いたのは女性と同じマンションに住む人は
ベランダからただ眺めているだけだった。
何も出来なかったのかもしれない・・・
でも、彼は”なんとかしなくちゃ”と思って一生懸命に動いた。
きっと冷静に考える時間なんてなかったんだろう・・・。
あたしはその女性を自分の目で見たわけではないけど
何故かリアルに想像できてしまう。
すると、彼はどんなに恐かっただろう・・・と思う。
今日のこの今。彼は眠りにつけているだろうか?
女性が自殺なのか事故なのか殺人なのかまだわかってはいない。
でも、もし、このあたしの体や皮膚や臓器とかが火にのまれたら
どんな感覚が襲ってくるのだろう?
考えたり想像するだけで恐ろしい。
しかし、もし、自殺だとしたら・・・?
そんな事が出来てしまうのか?
火達磨だけじゃない。
理由は何にしてもあたしにとって死は恐怖以外の何ものでもないと確信した。
未体験だから?
そうじゃない。
その恐怖が50年後60年後もっとおおきくなっていくから・・・
|