Juliet's Diary HOMEDiary INDEXpastwillsellection


2005年08月14日(日) 遅すぎた帰還〜小野田少尉〜

60年というせいか、多くの局で戦争に関する番組が放送されている。
いくつか拝見したが、このドラマもその中のひとつ。
まぁ、堺雅人が出ているから、見たんだけれどもね。

小野田少尉については、正直、あまり同情できないでいたが、
ドラマを見ても、やっぱり同情はできなかった。

なぜ彼は、わかっていたのに帰ろうとしなかったのだろう?
軍事教育のせいかもしれないが、他の兵士も、
そして、他の多くの諜報部員達も、帰国していたと思う。

なぜ、彼だけなのだろう? 彼の気質によるものだろうか?
小野田さんの後にも帰ってきた人もいらっしゃるし、
それに、見つからなかっただけで、あの地で亡くなった方もいらっしゃるだろう。

でも、小野田さんは、戦争が終わっていたことを、知っていた。
ラジオ放送から、東京オリオンピックもサザエさんのことも、知っていた。

それでも米軍に攻撃をしかけるなら、それは単に私怨であり、テロ行為だ。

どーしても、わからない。
だから、このドラマを見ても、小野田少尉には、なんら感想が出ないのだ。
よって、堺雅人に的をしぼって、書かせてもらう。
勿論、獅童さんの演技は、すばらしかったとは、思いましたよ。


ゴーゴーを踊る堺雅人。びっくらたまげた。
しかしまぁ、山南さんとは、猛烈に違うな(笑)
堺さんは、どっちの演技が、得意なんだろう? 好きなんだろう?
個人的には、山南さんは好みの男だが、堺さん演じるバカ男もおもしろい。

妙にカツゼツのいい一般人(笑) おまけに声がでかい。
舞台俳優は声がでかい、というのは、友人を通して知っていたが、
テレビで見ても、やっぱりでかいし、はっきりしすぎ(笑)
あんな一般人おらんぜよ、と思うと、おかしくてしかたがなかった。

ニャロメ、ニャロメ、と、魚を追う堺さん。
アレ、どこで撮影したのでしょう?
やっぱフィリピン? それとも埼玉の名栗川とか、東京の奥多摩とか?
残念ながら、上半身ハダカには、あんまり興奮せず。
色は白いし、おぉっ!っていう程でもないし(笑)


ものすごいバカ男に思えた。
能天気でおもしろいことだけに気持ちが行っている。
インテリぶって発言してみるが、世の中に影響を与えられる存在でもない。
どこにでも転がっていそうな、あの当時の一部の若者。
ノンポリよりは、まだマシか?という程度の若者。

それでも彼は、まったく違う世界に属する人の心を開くことに成功した。
実の父親も兄も、母の手紙も通じなかった人の心を開けることに成功した。

戦時中の諜報員教育を受け、ジャングルで孤独に30年戦い続けた男と。
戦後の経済成長の中、青春を謳歌している、まだ若い男と。
このふたりに、共通項は、ほとんどない。
あるとしたら、日本人である、ということくらいだ。

なぜ彼が、小野田少尉の心に触れることが出来たのか?
「人寂しかったのかもしれない」と劇中では、堺さんが言っているし、
鈴木さんが一人で現地に向かったことも、大きな原因かもしれない。


でも自分は、あの堺雅人演じる鈴木紀夫氏からは、別のことを感じた。

堺さんが、ジャングルの中、地べたに横たわる。
その細く白い首と、邪気のない笑顔。

獅童さん演じる少尉からすれば、堺雅人演じる鈴木氏は、あまりに弱い。
万一、今ここで攻撃を受ければ、まず間違いなく、鈴木氏は死ぬ。
常に危険と隣り合わせに生きて生きた人には、あまりに弱い存在。
もし攻撃を受けたなら。
おそらく、あの小野田さんは、あの鈴木さんを見捨てはしないだろう。

あまりにひ弱で、あまりに能天気で。
ハラただしさも感じつつ、守りたくも思う。
常に自分を守るためだけに生きてきた彼に、守るべき存在がやってきた。

堺さん演じる鈴木氏が、あまりに能天気で、あまりにひ弱で。
それでいて、カメラを構える彼の目には、喜びがあふれていた。
どうやら単なるバカではないようだ。


堺さんのインタビューを読んだ。
堺氏は、鈴木紀夫氏には、あまり共感できなかったようだ。
自分もそうだ。

堺氏も言っていたが、無鉄砲で無計画。
そのくせ、自分は何か大きなものになれるという、根拠のない自信。

当時の鈴木氏は25歳。そして堺さんとわたしは、既に30を超えた。
堺さんが25歳の時、無計画だったかは知らないが、でも、彼だって、
根拠のない自信だけで、自らの存在を確立していた時期があっただろう。
わたしだって、程度の差はあれ、そうだ。

だからかもしれないが、堺さん演じる鈴木氏には、
吐き気を感じるほどにイヤな気もするし、そして哀しみも感じる。
多分それは、自分が歳をとった、ということなのかもしれない。


堺さん演じる人物に愛着がわかないことに、軽い驚きの気持ちを隠せない。
すまや、つよしくん演じる人物に、愛情をもてないことはほとんどない。

それでも堺さんの演技は、すばらしかったと思う。
どうしようもなく能天気で。この場合の能天気は自己中心的な部分も含む。
どこにでもいそうな、吐いて捨てるほどいる下らない若者で。
それでも夢だけは大きく、自分を信じて行動している。
いつか大物になることを信じ、飛び回っている。
そんないつの時代にもいそうな、ある若者を見事に再現していた。

単なる、つまらない若者じゃなかった。
堺さんはそこに、能天気な若者の持つ、ある強みも演じていたように思う。
恐れることを知らない、無邪気な目も、演じていたように思う。


ちょっとうらやましいな、と、思う。
山南さんとは、あまりに違う、役柄。
さまざまな人物を演じてくれる。そして、ソレを見ることが出来る。

ちょっとだけ、役者堺雅人に、ひとりのつよしFANは、嫉妬してしまう。
つよしくんだって、できるよね、と、確認したくなる。
さすがに演技に関しては、積み重ねが違いすぎるし、見たことがないので、
100%の自信を持って、できる!とは、言いにくい(笑)

でもいつか。必ず、つよしくんでも、見て見たい。
堺さんが自在に変化する姿を見て、強く、そう思います。


←エンピツ投票ボタン  My追加
また読みたいなぁ、と、思ってくださったら、お願いします
Juliet |HOMEDiary INDEXpast|will