管理人の想いの付くままに
瑳絵



 半身

 探して 探して 探して
 やっと見つけたんだ。
 だから、引き寄せて抱きしめて、その温もりを噛みしめたのに。なのに、腕の中の愛しい存在は、激しく暴れて――拒絶した。
 抜け出した腕の中の温もりに、ただ呆然としていると、愛しい存在は遠ざかった。
 背を向けて、離れていく存在を、弾かれたように追い駆けて走り出した。
 走って 走って 走って
 少しずつ縮まる距離に、不安と安堵と歓喜、そして疲れに心臓はバクバクと大きな音を立てて早鐘を打つ。
 伸ばした指先が触れた刹那、その存在は更に遠ざかった。
 愛しい愛しい存在は、自分とは別の腕の中。しがみつくように自分以外の背に回された腕。守るように自分以外に抱き込まれた顔は、見ることは叶わず、ただ、震えた細い肩だけがまるで終わりを告げているかのようだった。
「ごめん……なさい―――」
(ああ、そうか)
 肩よりも細く震えた声に、心の中に諦めと、込み上げる熱い水。
「ごめんなさぃ……」
 繰り返される言葉に、想いに亀裂が入る。
(捨てられたんだ)
 割れて散らばってしまった想い。理解した瞬間に、涙腺まで壊れてしまったようで、止め止めなく、想いの欠片で傷ついた心が、透明な血を流した。
「さようなら」
 今度は自分から背を向けた。
 逃げて 逃げて 逃げて
 何の温もりも待たなくなった存在から、ひたすらに逃げ出した。

 そして、再び探し始めた。想いを組み立ててくれる温かい存在を。
 探して 探して 探して
 もし見つけることができたなら、その時は
 
 お願いだから抱きしめて、温めて欲しい―――

2004年10月31日(日)
初日 最新 目次 MAIL HOME


My追加