管理人の想いの付くままに
瑳絵



 恋愛温度

「貴方の想いは熱すぎる」

彼女が静かに言う。

「そう、まるでこの紅茶みたい。熱すぎて、私は触れることもできない」

白い、湯気を昇らせる紅茶のカップをゆっくり持ち上げる。
そっと口付けられた紅茶は、すぐにテーブルの上に戻される。

「だから、もう少し冷めなければ、貴方の想いにも触れれない」
「でも、君が触れれるような温度は、もう、恋じゃない」
「私は、火傷するような恋なんて要らない」

隣で、睨みつけるように見上げる彼女に、腕を伸ばす。
スプリングの利いた革張りのソファが、僅かに沈み、音を立てる。
いきなりのことに、彼女の手がテーブルに当たり、その振動で紅茶は波を立てて数滴零れ、テーブルに小さく広がる。

閉じ込めた腕の中、胸に頬を預けて、彼女は静に瞳を閉じた。

「やっぱり・・熱すぎる」

火傷しそうだわ、と静かな声に、更に腕に力を込めた。


この温度が心地良いと感じるまで
冷めることのない温度に、君が慣れるまで




2004年02月06日(金)
初日 最新 目次 MAIL HOME


My追加