| 2005年10月05日(水) |
キンモクセイハカオリ、 |
ながくながく続く 海のその上の、 白い光の空が、 内包された世界を 照らす朝なのです。 鬱々として抑圧された やみの中を走る、 大きな生き物のように、 その光は、 気付かないほど ゆっくりとした速さで、 この世界を、 驚くほど変え続けて。 いつもの景色の中に見る 違和感ほど、 不思議な感触のものは ありませんが、 殊に、空の下のたった一つの 情景といえど、 この光とやみとの対照が 心の中に拡がるさまは、 日常を逸して、 はっと息を呑んでしまうのです。
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川向ひの空家に 金木犀は香り、 やはり姿は見へず、 一体それは星の欠けた 粒のやうな小さな花か、 けなげに寄り添ひて咲き、 とほくの窓まで とどくといふ。 夢見るように 浪漫ちっくな容姿、 愛しい人を 探すかの如く 野をかき分け、 見つければ、 唯はぢらうているやうで、 梶井基次郎の檸檬の世界、 透明色があたまの中を駆け巡り、 時を止め、 逆流し、 いつまでも目を 醒ませずにいる。 いっそこのまま 置き去りにして、 飛んでいってしまおうか。 金木犀が、 香っているのであります。
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