互いの人生を他者に頼らず生きてきたから、決して後戻りできない堅牢さが観えてしまった
それはまるで、一般的ではあるが特殊な性質を持つ水と、溶け込む化学物質のような関係
2人の気持ちという温度上昇で溶解度が甚大になる硼酸(ほうさん)、気持ちでも殆ど変化しない食塩
私たちが溶媒と溶質という絶対的な差異があるのなら、せめて互いに理解しあえる硼酸のような関係でありたい
清明の風が無理なく見せ付け、さらには最も美しいとさえ洗脳する白い人工的な花弁と煮出したどす黒い幹のグロテスクさ
瀬戸内の白い砂浜に打ち寄せる穏やかな波のような可憐な微笑み
軍艦島の廃墟のように合理的な目的のためだけに構築されて廃墟になってしまったプライド
奄美大島の年中暖かくてそれで居て自愛に満ちた天候のような、時折の台風が逆に感謝へと繋がる母性
濃霧で視界を塞(ふさ)ぎ、激風で青函連絡船さえ沈めた厳冬の吹き荒(すさ)む大間海峡のような誠実
幕張ではなく極端に収縮した少女趣味には補修や羞恥(しゅうち)が詰まっている女性性
千光寺の三大桜で垂れ流されている生得的な開放性の煮出した匂いと、後天的なプライドの繊細な声の相反
客体化できない私の同じものども
互いにぶつかり合い、求め合い、後ろを向き合い、先に希望を願望さえ込めていく
けれども、女性性の媒質と男性性の溶質という決して融和しえない本性ゆえに、日本全国を造りあったイザナキとイザナミが最後には憎しみ合い殺し合おうした
だから、本性でもプライドでも経歴でも現象でも表象でも共有空間でも悠久の流れであったとしても、ただ見つめるのを止めないでおこう
ただ、あなたへと溶けていきたいから硼酸でありたいし、せめて再結晶、そして析出硬化でありたいと願う
注記:
「再結晶」結晶を溶かし、その溶液を再び結晶させること。結晶中の不純物が除かれるので物質の精製に利用される
「析出硬化」鋼の中にTi(チタン),Nb(ニオブ),V(バナジウム)などの炭窒化物を細かく析出させて転位の移動を妨害することにより強化する手法。