今年も白磁の君は、感情を土砂降りのように容赦なくぶちまけるだろう
あれが好きだ あの人が嫌いだ
これが気に入った 欲しい
この人が格好いい 格好悪い
優しくして ぎゅっと抱きしめて
ドキドキもいいな 穏やかさもいいな
職場のあの人には密かに腹が立っている
土砂降りが降り注ぐ金魚鉢の中で、爆発のようなゴー音、視界をふさぐ透明の幾重もの膜に視界をふさがれた金魚のよう
好きといっては、嫌いといっては、むかつくといっては、お腹がすいたといっては、直ぐにぷーっと感情を発して真っ赤になる金魚のよう
京茄子のような透明の金魚鉢から外の世界は一切見ずに、ただただ、感情をぶちまけて金魚鉢の中でパクパクと口を開いては閉じて、開いては閉じる
なぜ、パクパクと意味の無いお喋りを止めないのだろう
なぜ、わざわざ感情をぶちまけて狭い世界をさらにごちゃごちゃにするのだろう
なぜ、金魚鉢の外に立っている人が居るのを認識しないのだろう
なぜ、出目金やランチュウと比較して己を恥じるのだろう
確かにお喋りは本能で植えつけられている、けれども同じ諸欲はコントロールできるじゃないか
確かに狭い世界でゴチャゴチャすれば敵も出来るけれど味方も出来る、けれどもわざわざ身近な敵をつくらなくてもいいじゃないか
確かに「へーすごいね」と自己防衛して意識の外に排除することはできる、けれどもそうした世界が実は君の人生を大きく変えていくのだ
確かに永遠に18歳で居られない北欧美人には叶わない、けれどもあなたはあなたでしかないのだ、つまらない世辞で誤魔化されているのを言葉の上では知っているのに
パクパクと口を開閉する金魚
人間の手による交配によって産まれた異形の魚
歴史と伝統によって交配され重工業化、情報化という世界で育てられてきた新種の魚
アフリカ大陸やユーラシア大陸南西部の魚たちと比べれば、なんとひ弱な、なんと精神的に幼く、直ぐに感情をぶちまける金魚という魚
机の上に両肘をついて、あごの下に両手を合わせて、少しタラコ唇にしながら、その騒がしいことこの上ない金魚鉢を、ぼーっと眺めるよ
飽きたら時々餌をやって、飽きたら料理でもして、飽きたら仕事にいって、帰ってきてまたボーっとひ弱だから感情をぶちまけないとやってられない金魚を、どうでもいい視線で眺めるよ
多分、それが世間で言う男性的な愛なんだ
多分、それがイザナキがイザナミに殺されそうになった時の気持ちなんだ
多分、それが最も上手くいく、そんな気がしてならないんだ、だから白磁の君を心から愛している
ああ、また「冷たい人」とか「意味わかんない」とか「偉そう」とか、そんな感情でしかこの言葉たちを読まないだろうからね
金魚鉢の外から眺めるしかないんだろうな、一緒に手を取り合って歩いていきたいのに
肉体的に手をつなぐことなんて、死んだら出来ないじゃないか、そんなの意味ないんだよ
パクパクという口、本当にセクシーさ その口を今年も眺められると想うと何物にも換えられないお年玉のような気がしてならないんだ