電車にぽこっと乗ってきたこの巨体の女性が私だったら、どういう事になるのだろうか。
体重はゆうに70キロを超えウエストも1m、バストも1m、身長はサンダル5センチを入れて165センチオーバー。
ひざ上の3センチ間隔の折り目のついたスカートから見えている太ももを下っていくと、木目のサンダルが目に入ってきた。
木目のサンダルと少しばかり薄い茶色の肌との間に、象の皮膚のようにカサカサに白くすれた肉がサンダルからはみ出していた。
現在の私の考え方と変わるのだろうか。
彼女と心だけが入れ替わったとして。服装や嗜好や目標は変わるのだろうか。
単純にいってダイエットはするのだろうか、成功するのだろうか。
私が現在のような肉体を手に入れたのは、私自身の個性ではなく、いや個性と言われるそのものが、実は内在的な衝動の構成によるものではないのだろうか、と巨体の女性を見て、ふっと感じた。
巨体が一駅で電車を降りていった。
私も一駅ならば、少々空いた席に座らない。
替わりに乗ってきた女性は、みんなの視線を集めた。
白く品の良いテーラードスーツに真珠のネックレスをつけた女性は、衣装の白さがさらにその女性の肌の美しさを際立たせているからなのだろう。
目の前に座り、目じりの小じわに、ふっと腐りかけた甘い匂いを出す食虫植物を連想した。近づかないと判らない狂気と奥行きの深さに。
食虫植物の女性なら、どういう事になるのだろうか。
与えられた肉体に男が寄り添い栄養を与えてきただけのことなのだから。
彼女なら、彼女らなら、私自身なら。
追伸:原題は「巨体と食虫植物」です