ものかき部

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「 満月と遊泳 」
2005年05月28日(土)




 向かい在った2人は、豪雪地帯の雪のように上部が所々白くなっていた。
互いに一歩半の距離にありながら、短髪白髪でライラック色の短めトレンチコートを着た左側の男は左ひざを右足の前で軽く曲げ、白帽子と乳房を隠す長さの白髪との境界が無くなっている女は右のブーツを垂直に立てていた。
日本家屋風の網竹で出来た大きな窓の左右に縛られるように見つめあいながら、女の一歩後ろの入り口からは燦々とした輝きが、あたかも2人の世界を、2人がまとわされたような白色を犯し尽くすかのようだった。
強すぎる眩みゆえに生まれた冥さが、時折、女のハーフコートに青みを加えて白以外へ散り去り、一層に全体の薄紫調を味わい深くしていた。
不都合な程に煌々と照り出すかのような男の白ズボンが腰下までのコートを無機質なものへと変え、喜怒哀楽をつかさどる表皮や表面を単純化し、ピーコックグリーンへと何段階も経ながら潰れていた。
照り出しで一部染められた女の大腿部と、帽子や長髪以外の部分は、薄くぼやけながらモスグリーンから孔雀色へとパーツごとにグラデーションしていた。
さらり、とした頬と決して低くない鼻の全てがコバルトブルーの単色に塗り込められ、感情を現しているようだった。
渇いていくような男の表情の後ろ側には、何倍かになった影をすっぽりと隠すようにオーキッド色が点描を打っていた。
男は窓の左端に左肩を寄りかかせているように体の向きを少し広げて、女は窓の右端に右肩をつけているだけのように左手を引いて平行になっている。

 しっかりとコートに入れられた男の右手、ポケットから今にも出しそうな女の左手。
 彼岸の静寂に交媾の名残惜しさが鏗鏗と鳴り渡ったのだった。



 注記 「ライラック色::ライラックはモクセイ科の落葉低木。落ち着いた薄紫色」 「眩(くら)む:�ゞ�すぎる光で視界がなくなる。�△△詈�事に心を奪われてしまう。�,鉢△琉嫐�を架けて使用。」 「冥(くら)い:原義は死者に掛けた布の意を強く取って使用」 「オーキッド:洋蘭の意。ライラック色よりも少し赤み掛かった薄紫色」 「交媾(こうこう):男女、または雌雄がまじわることの意。性交。交合。」 「鏗鏗(こうこう):鏗は「金石を打ち合う音」の意で、鐘の音が響き渡る様。」
 「RAMJA」の「月と遊泳」を聞きながら思いつきました。

執筆者:藤崎 道雪

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