あいつはお婆さんになっても全く勝手なやつだった。
付き合う時も自分から決して言わないようにして、言うように仕向けた。
「私のことどう思ってるの?」と何度もしつこく質問もした。
結婚の時だってそうだ。
結婚式なんて身内だけで良いのに、それじゃあ世間体が、なんて自分の意見じゃないようにした。
家でブクブク太って、洗濯掃除の家事をしていれば良いと安閑(あんかん)としていた。
俺の好きな漬物の1つも作れないし、俺の好きは味なんて聞きもしないし、新しい料理の研究をしたのも最初の10年だけだ。
そのくせ「美味しいィ?」なんてわざわざ聞いてきやがる、自分の都合だけで。
今まで出したことがある料理じゃないか。
太って女としての魅力もないし、女性としての品もないし、人間としての気位もない。
それを申し訳なさそうに言うけれど一向に改めない。
全く勝手で最低だった。
ああ全く、全く血迷ったよ。
その内、高血圧だから、なんて言いやがってまずい料理は作るし、病気になったから、なんて言いやがって、
見舞に来てうるさくするし、他の人がいるのに大泣きして涙をたれ流すし。
恥ずかしいったらしょうがねーだろう。
死ぬもんはしょうがねーだろうが、最後まで見守ってるからね、なんて言いやがるし。
俺の落ち込んだ気持ちも考えろってんだ、全く。
だから、にぎやかに死んで逝けるわな。
3人も子供を産んでくれたしよ。
全くもって、勝手なやつだったぜ。
じゃあな、あばよ。
待ってるぜ。
執筆者:藤崎 道雪 (校正H16.6.21)